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キム・ギドク:激情の美のシネアスト

キム・ギドク:激情の美のシネアスト (2007 フランス・韓国)

「キム・ギドク:激情の美のシネアスト」写真原題   Kim Ki-duk, cinéaste de la beauté convulsive   
監督   アントワーヌ・コッポラ

キム・ギドク:激情の美のシネアスト』は韓国の鬼才、キム・ギドク監督が自分の映画について語った60分のドキュメンタリー・フィルムです。フランスのTV番組用に製作されたものらしいのですがほとんど陽の目をみていない。
日本では2007年、2008年と福岡アジア映画祭で上映されたのみです。ところで、キム・ギドクといえば雄弁な人というイメージがあります。ちょっとネットで検索すれば彼のインタビュー記事はたくさん出てくるし、DVDの特典映像でもよくしゃべっている。ところがこれはあくまで日本だから、のようです。母国韓国ではその強烈な作風ゆえ酷評も多く、ほとんどゴ○ブリのような扱いを受けているせいか、メディアの取材はほとんど拒否しているらしいです。したがってメディア嫌い?のギドクが1時間も取材に応じたこの作品は貴重な映像ということになります。

ソウルからかなり離れた場所にあるヘイソ芸術村にギドクが作ったエコ・ハウスで取材は行われています。聞き手はフランスの映画学者で、フランシス・フォード・コッポラ監督の甥でもあるアントワーヌ・コッポラ参考

まず目を引くのは庭?に置かれている赤いバス!『受取人不明』(2001)で使われたあの忌々しいバスでございます。ギドクは映画の撮影に使った小道具をとっておくタイプの人らしく、『コースト・ガード』(2001)でチャン・ドンゴンが乗ったバイクも出てきますし、部屋の中には『』(2005)で船の中に置かれていた中国製の家具もありました。

自分でつくったというテーブルの話をして、「テンションを高めるためにわざと不便につくった。快適なものは好きではない」とギドクらしい言葉が出てきます。子供部屋(あまり知られていないようですがギドクは結婚して子供もいる)のベッドの墨にミニ・テーブルのようなものがあり、ノートパソコンが置かれている。ここで脚本を書くんだそうです。こんな場所であんな邪悪な(以下省略)。驚いたのはギドクが「本はほとんど読まない。影響されたくないから」と語ったこと。ギドク映画はかなり純文学のテイストが入っていると思っているのでこれはちょっと意外でした。うーん、ギドクは邪悪なイマジネーションの塊のような人なんですね〜。

1995年に『無断横断』という脚本で韓国の映画振興公社脚本公募大賞を受賞したことがキム・ギドクの映画界デビューのきっかけになりました。ところが第1作はその脚本ではなく、新たに書き下ろした『鰐(ワニ)』(1996)になりました。自分の作品が他人の手で映像化されることが耐えられないため、自分で『鰐(ワニ)』を監督したと聞いたことがあります。脚本については脚本作家協会教育院で勉強したようですが、その他については他の監督の撮影現場に忍び込んで盗み見をし、こっそり勉強していたようです。その辺りのことを詳しく聞きたかったのですが...。アントワーヌ・コッポラ、突っ込みが甘いゾ!

ギドクは脚本さえしっかりしていれば俳優の演技はそれほど重要ではない、とも思っているようです。ギドクの早撮りは有名で、ある出演俳優が、"考える暇もなく次の場面の撮影にうつってしまう"と不満をこぼしている記事を読んだことがあります。"俳優に考える暇を与えない撮影方法"はあのウディ・アレンも同様。うーん、俳優に解釈なんかさせないほうが結果的にいい演技になるということでしょうか?(笑)アレンはすぐ俳優の首を切ることで有名ですが、ギドクは「俳優との信頼関係は重要だ。一度決めたキャスティングは絶対に変えない。俳優の演技がうまくいかなければ脚本を変える」と語っています。これはアジア人の義理堅さでしょうかね? ギドクとアレンの共通点、そして相違点が興味深かったです。このドキュメンタリーでアレンの話は全く出てきませんが、2人とも母国よりヨーロッパで評価が高いという共通点もあるし、ヨーロッパ受けする映画を作るためには俳優の演技に頼る必要がないくらいしっかりした脚本を練り上げることが大事なのかもしれません。

ギドクは「韓国では私は有名だが、私の作品は有名ではない。絶対の愛』(2006)がおそらく最後の韓国封切映画になるだろう。韓国で認められたいとは思わない」「有名な俳優は使わない」と発言していますが、おそらくこれは本音ではないでしょう。実際、新作の『息/ブレス』(2007)ではチャン・チェン、つづく『悲夢(ビモン)』(2008)では日本のオダギリ・ジョーを主演に迎えています。韓国以外のアジアスター俳優を起用することによって世界市場で勝負ということなのでしょう。ギドク作品は台詞のない役が多いので出演俳優が韓国人である必要はあまりないですしね。

アントワーヌ・コッポラは"キム・ギドクが変わりつつあること"をラストで暗示しています。『息/ブレス』は今までのような暴力的な場面がない作品のようです。もしかするとこのフィルムはキム・ギドク第1期の集大成記録なのかもしれない、とふと思ったりしました。
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2008.05.24 Saturday | 21:45 | キム・ギドク | comments(0) | trackbacks(0) |

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2017.03.12 Sunday | 21:45 | - | - | - |

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