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フィクサー

フィクサー(2007 アメリカ)

「フィクサー」公式サイトにリンク原題   MICHAEL CLAYTON   
監督   トニー・ギルロイ   
脚本   トニー・ギルロイ      
撮影   ロバート・エルスウィット                  
音楽   ジェームズ・ニュートン・ハワード               
出演   ジョージ・クルーニー トム・ウィルキンソン
      ティルダ・スウィントン
      シドニー・ポラック マイケル・オキーフ

第80回(2007年)アカデミー賞 助演女優賞受賞(ティルダ・スウィントン)。作品、監督、主演男優(ジョージ・クルーニー)、助演男優(トム・ウィルキンソン)、脚本、作曲賞ノミネート。

ひとつの仕事を長年続けていると、いつか自らの限界を感じることがある。限界に気づいたときにはすでに手遅れで、もう後戻りできない状況に追い込まれていることが少なくない。『フィクサー』は薬害訴訟の対応に追われる法律事務所を舞台に、精神的限界に追い込まれた3人の人間模様を描いた映画である。監督は『ボーン・アイデンティティ』(2002)などで知られる脚本家トニー・ギルロイ。彼がニューヨークの大手法律事務所を訪れた際、来訪者の目に触れることはない広い部屋が奥にあり、そこで“裏稼業”が行われていることを知ってしまった。それがこの作品をつくるきっかけになったという。
   

マイケル・クライトン(ジョージ・クルーニー)の仕事は、NYの大手弁護士事務所に勤めながらも弁護士ではなく”フィクサー(もみ消し屋)”。公にできない事件を裏で穏便にすませることが彼の仕事である。マイケルは自分の仕事に嫌気がさし、弁護士に戻りたがるが「それは誰でもできる。もみ消しの仕事はお前にしかできない」と諭され、しぶしぶもみ消し稼業を続けている。

こういうことはどこの組織にも見られることである。
誰もがやりたがらないクレーム処理などの汚れ作業。「お前にしかできない」などといわれるものの決してそれが出世につながるわけではない。人の目につきやすい華やかな業務を行うものばかりが出世し、汚れ稼業を押し付けられたものは単なる便利屋としか看做されない、というのが世の常だ。

そのマイケルのアイデンティティを脅かしたのが同僚であり、実力No.1の弁護士アーサー(トム・ウィルキンソン)だというのは皮肉な話である。

農薬会社U・ノースの集団訴訟を担当していたアーサーは良心の呵責に苦しみ、ストレスのあまり原告との協議中に突然服を脱ぎだすという奇行に走る。そしてU・ノースに不利な情報を見つけ出しクライアントを裏切る行動に出る。ニューヨークの巨大弁護士事務所のトップ弁護士。本来、人の100倍くらい冷静で知的な判断ができるはずの彼がなぜ?
アーサーはマイケルに言い放つ。
ストレスと不安ばかりだ。これが自分の望んだ人生なのか?
この言葉を他人事として聞き流すことができる人は少ないだろう。

クライアントであるU・ノースの法務部本部長カレン(ティルダ・スウィントン)もプレッシャーまみれの日々だ。この手の女性にありがちな人を見下すような横柄さはなく、常に不安にさいなまれているように見える。この集団訴訟を何とか丸くおさめることしか考えていない。企業の利益のため、そして自分の保身のため。そしてアーサーがU・ノースにとって決定的に不利な情報を握っていると知ると、非情な選択をする。大企業にとって役職であろうとも首の挿げ替えなど自由自在。しょせん歯車のひとつにすぎないことを彼女はどこまで自覚していたのだろか?プレッシャーに押しつぶされ、全体像が見えなくなり、結果として大きな間違いを犯す。都合の悪い事実を隠そうとしたあげくのなれのはてとして、あまりにもよく聞く話である。

逆境に立たされたとき、その人の本質がわかるとよく言う。
だが、大半の人たちは己の弱さに引きづられてしまいがちである。
マイケルは「今さら善人ぶるな」とアーサーの留守電に吹き込む。
そして自分の子供に対して「人生の不運を嘆くような弱い大人になるな」と諭す。
だが、これらは自身への戒めの言葉となってしまっている。

この作品は2007年度の映画賞をにぎわし、アカデミー賞でも作品賞等7部門ノミネートを受けた。
だが映画の完成度が評価されたというよりはむしろ「法律事務所によってもみ消される悪」という作品テーマが好まれた結果のような気がする。ジョージ・クルーニートム・ウィルキンソンティルダ・スウィントンも演技力というよりは役柄に恵まれてノミネートの感あり。テンポは決して悪くないのだが、ほとんど台詞による説明でストーリーが進んでいくため、サスペンス性があまり感じられない。脚本家出身の監督らしい演出といえばそれまでだが、もう少し台詞を削り、映像で見せてほしかった気がする。ラスト近く、マイケルが馬の美しさに気を奪われたおかげで結果的に命拾いをし、失いつつあった人間的な感情を取り戻し...。妙に『クイーン』(2006)のパクリっぽい。ラストは、この作品がハリウッド映画であることを再確認させてくれた。ジョージ・クルーニーの微妙な表情もどっかで見たようなシチュエーションだし(笑)。しかし、物語進行最優先の展開であっても、もやもやした感情が蔓延するような余韻を残すところは見事である。厳しいビジネスの世界に身を置く人であれば、マイケル、アーサー、カレンの誰か1人には感情移入できるだろう。

ラストのクライマックスまではひたすらイライラさせられる。娯楽性、社会性いずれも中途半端でシャープな印象はないが、最後にはそれなりのカタルシスが用意されている。もみ消された悪事というテーマに惹かれる人や仕事上壁にぶつかっている人なら、何かを感じることができる作品だ。
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フィクサー@映画生活


2008.04.14 Monday | 00:27 | 映画 | comments(6) | trackbacks(18) |

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2018.11.21 Wednesday | 00:27 | - | - | - |

コメント

こんにちは!
『精神的限界に追い込まれた3人の人間模様を描いた映画』だったんですね〜
何だか目からウロコです(笑)
私は、巨額の薬害訴訟に関してジョージ君が大活躍!!って感じの単純な映画を想定していたようで・・・どうも映画の良さが分かりませんでした。
観ている間は割とイライラもせずに、「きっと最後のどんでん返しに対する複線なのね〜上手いわ〜(最早何が上手いと思ったのかは不明ですが・笑)」と思っていたのですが、最終的に『娯楽性、社会性いずれも中途半端』だと思っちゃったなぁ〜
チラシや予告の宣伝文句に踊らされたのかも・・・そういう場合でも、面白い!!と感じることはありますが、今回は違ったようです。
2008/04/14 8:21 AM by 由香
由香さん、こんばんわ。

僕は、緻密に計算されたストーリーで勝負!の作品だと思っていましたので
ちょっと拍子抜けしました。
意外と整理整頓されてないな〜と。
ラストはご都合主義かつ『クイーン』のぱくりっぽいし。

迷える主人公が野生の動物に出会う場面を挿入すれば
アカデミー賞作品賞ノミネートがもれなくついてくるようでございます(爆)

それでも登場人物3者3様の選択とその末路については
思いをめぐらすものがあります。
かなり期待していた映画だったので、仕上がりには不満がありますが、
鑑賞後、余韻が今じわーと拡がりつつある。
ということは、僕はとってはこの作品は"いい映画"だったんだな〜と。
記事少し書き直そうかな。(笑)
2008/04/14 9:39 PM by moviepad
moveipadさん☆

こんばんは♪
コメントありがとうございますー。
ちょっとこの映画は過大評価な気がしました〜。
ソダーバーグとジョージのって、個人的にあまりウマがあわないんですよね、、、(泣)
なんというか悪くはないけどそんなに誉めるほど?って思ってしまいましたXXXX^^
2008/04/14 10:32 PM by mig
仰るとおり、追い詰められた人間の葛藤を描いた作品でした。
私はマイケルにかなり感情移入しましたが、他の二人にも十分な説得力がありました。
ティルダ・スウィントンが出番は少ないながらオスカーを受けたのは、あのキャラクターを他人事と思えない人が沢山いたという事かもしれませんね。
実際、徐々に壊れてゆく彼女の芝居の密度は素晴らしいものでした。
2008/04/15 12:31 AM by ノラネコ
migさん、こんばんわ!

ソダバーグ&ジョージ作品は僕はあまり見ていないんです。「オーシャンズ」シリーズも未見。
見た作品の中で好きなのは「グットナイト&グッドラック」くらいですね。

この作品、映画としての完成度はそれほど高くないので
オスカー・ノミネートはちょっと持ち上げすぎ?と僕も思いました。
個人的には結構好きな作品になりつつあるんですが...。
2008/04/15 3:10 AM by moviepad
ノラネコさん、こんばんわ。

僕がこの映画に(観ている最中)今ひとつ入り込めなかったのは
想像していたものとやや違っていたからなんです。
忠実に任務を実行するマイケル、反旗をひるがえすアーサー
凛としたビジネスウーマンのカレン...みたいなイメージだったんですが...。
3人とも最初から弱っているなんて思いもしませんでした。

ノラネコさんはマイケルですか?
僕はアーサーに感情移入しました。一番リアリティのないキャラクターですが。
正義のために戦うはずの弁護士が、結果として企業悪事に手を貸すことになってしまう。
精神に異常をきたすのはむしろ人間としてまともな証拠だと思います。
現実にアーサーみたいな人がいたとしても、それこそ闇に葬りさられるんでしょうね...。

多分ティルダ・スウィントンの役柄に感情移入する人が一番多いでしょう。
彼女の宇宙人みたいな顔(笑)が役柄に活かされていたと思います。
2008/04/15 3:16 AM by moviepad

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