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Sweet Rain 死神の精度

Sweet Rain 死神の精度(2007 日本)

「Sweet Rain 死神の精度」公式サイトにリンク監督   筧昌也   
原作   伊坂幸太郎 『死神の精度』   
脚色   筧昌也  小林弘利      
撮影   柴主高秀                  
音楽   ゲイリー芦屋
主題歌  藤木一恵 『Sunny Day』               
出演   金城武 小西真奈美 富司純子 
      石田卓也 光石研 村上淳
      奥田恵梨華 吹越満   

不慮の死を迎える運命にある人には、死亡予定日の1週間まえから死神がまとわりついて、その運命=死が正しいかどうか判定をくだす…。『Sweet Rain 死神の精度』はこんな風変わりなシチュエーションを軸に展開していく映画です。6年ぶりの日本映画出演となった金城武はコミカルな持ち味を十分に発揮し、小西真奈美富司純子石田卓也らがしっかりと脇を固めている。キャスティングの確かさが印象的な作品です。

伊坂幸太郎の小説はこれまで読んだことがなかったのですが、『陽気なギャングが地球を回す』、『アヒルと鴨のコインロッカー』など次々と作品が映画化されていることもあり遅まきながらはじめてこの人気作家の作品を読みました。
原作『死神の精度』は全部で6編からなる短編集。以下のようなシチュエーションのもとで、それぞれの物語が展開していきます。

・主人公は「千葉」という名の死神。病気や自殺以外の、いわゆる”不慮の死”を迎える運命になる人にその死亡予定日の1週間前から接触。その運命が「可」かどうかの判定を下す。(映画では”実行”となっている)
・容姿は、接触対象の人物に受け入れられやすいように毎回変化する。
・常に手袋をしている。死神に素手で触られると生身の人間は気絶する。
・「千葉」は死神ゆえ感情も味覚もなく、”下界”の言葉の意味も完全には理解していない。
・「千葉」が出現するときはいつも雨が降っている。<死神かつ雨男というわけですね。
・「千葉」は無類のミュージック好きで、ジャンルはとわず。仕事の空き時間には”ミュージック・ショップ”でCDを試聴している。

原作をひととおり読み終えて素朴な疑問を感じました。

なぜこの小説を映画にしたいなんて思ったんだろう?

イメージの拡がりが感じられる作品群ではなかったからです。かろうじて映像が思い浮かぶのは、一番最後に収録されている「死神対老女」くらい。でもこの一篇だけで映画をつくるのはちときつい。毎回変わる設定の面白さは連続テレビドラマにしたほうが活きるのではないか?とても映画向きの作品とは思えず、最近は設定が面白ければ何でも映画にしようと安直に考えるのかな、と不満をおぼえながらも、せっかく原作を読んだのだから、とあまり期待せずに映画も観ることにしました。

この映画を支えているのは前述のとおりキャスティングです。
主演の金城武は「映画化を承諾したのは、金城武が演じる死神を観たかったから」と原作者にいわしめただけあって、彼のキャリアの中でも一番のはまり役となっています。
日本語、広東語、北京語、英語を話すことができる金城武は、どこの国の人でもないような、いわば異邦人、strangerのイメージがある。かなりのゲーム好きらしいところからくる?どこかおタクっぽい雰囲気もある。正統派2枚目スターとして十分に通用するルックスを持ち合わせながらも、今にも泣き出しそうな子犬のような表情、低めの声、やや濃い目のひげのあと...金城武だけがもつ独特のアンバランスさが死神という役に見事に活かされています。大作出演が続いていてコメディへの出演を熱望していた金城は役柄をコメディっぽくしようと暴走することもあったようで筧昌也監督は最初「金城武は手に負えない」と思ったそうです。ミュージックを聞く場面では実に楽しそうに”変なヤツ”していましたね(笑)
本人もこの役柄が気に入ったのか、「原作は(この映画で使っていない作品が)まだ何部かあるので続編ができるかな」と語っているようです。この映画の中で使われている作品は「死神の精度」、「死神と藤田」、「死神対老女」の3編です。うーん残りの「吹雪に死神」、「恋愛で死神」、「旅路を死神」でひとつの映画にするのはかなり難しいと思いますが...。

原作を読み終えて、エピソードにつながりのある「死神の精度」と「死神対老女」は絶対につなげてくると予想していて、それは見事にあたりました。「死神と藤田」とのつながりもそれほど不自然ではなかった。1985年、2007年、2028年と3つの時代を舞台に展開するというやや強引な脚色のなせる業ですな。ちなみに原作では竹子は未来の家庭用ロボットじゃありません(爆)説明的な部分を(原作にはでてこない)黒い犬との対話でカバーしているところはうまいですね。

設定はSFチックであり、調査対象者に死の運命を「実行」するかどうか決めるところなどはミステリー、そして原作は純文学っぽい部分もある。このようにいろんなジャンルがミックスしている要素が伊坂作品の魅力らしいのですが、それゆえある種のまとまりのなさを感じます。映画もまったく同様で、どうもすっきりしない。原作を読んでいなくても十分楽しめるつくりにはなっているのですが、この作品独特の世界になじむのには時間がかかる。ようやくなじみかけた頃に映画が終わってしまった...なんてことになりかねません。原作ものの映画は、原作を先に読まないほうがよいのはもはや常識となっていますが、この映画『Sweet Rain 死神の精度』に関していえば、原作を先に読んだほうが楽しめるかもしれません。前述のとおり金城武はその個性を最大限に活かしているし、小西真奈美石田卓也といった実力派若手俳優は原作上の役柄のイメージをより膨らますことに成功している。物語の核となる老女を演じた富司純子はやや原作のイメージとは違うのですが、彼女ほどの女優となると役柄を自分のイメージに塗り替えることができるんですね。ちなみに原作を読んでイメージしていたのは、『愛を乞うひと』(1998)で原田美枝子が演じたようなこわ〜いおばさんだったので、富司純子演じる老女はちょっとまろやかすぎるな〜と思わなくもなかったのですが<これがかつての任侠映画のヒロインにいう言葉か(笑)、映画ならではの脚色と考えればこれはこれでよかったのではないでしょうか?金城、小西、石田、富司らの演技を観ているだけで楽しめるので、はっきりいって映画のほうが原作より面白いです。これはうれしい誤算でした。

その人が生きているうちに何かをやり遂げたかどうか − 死神が調査対象者の”死の運命”を可とするかどうかの判断基準のようです。テーマを突き詰めて考えたい人もそうでない人もそれなりに楽しめる娯楽作です。
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Sweet Rain 死神の精度@映画生活

2008.03.23 Sunday | 03:11 | 映画 | comments(6) | trackbacks(22) |

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2020.08.03 Monday | 03:11 | - | - | - |

コメント

こんにちは!
金城さんがなかなかハマっていましたね♪
コメディチックで可愛かったです。
彼自身が千葉役を気に入ったのですか?
続編を希望しているなんて・・・ちょっと意外でした。

私も原作を読みましたのでそちらもTBさせて頂きました。
で・・・私も原作を読んでいた方が映画の雰囲気を楽しめるだろうなぁ〜と思いました。
それに、映画は原作の良さを上手く活かしていたように思いました。『チーム・バチスタ〜』とは大違いです(笑)
ただ、元々風変りな物語なので、どう〜もパンチに欠ける作品だなぁ〜とは感じました。
犬とロボットの登場も微妙でしたし(笑)
2008/03/24 8:52 AM by 由香
由香さん、こんばんわ

続編の話は、初日の舞台挨拶でしたみたいですね。
原作ファンの観客へのリップサービスかもしれません。
何せ傘や白手袋持参のヒトがいたらしいし(笑)。
金城武、楽しそうに演じてましたね。
彼にはこういう役がよく似合うと思います。

1985年、2007年、2028年という時代設定とか
竹子がロボットだったなんて映画を見終わったあとで知りました。
3つの話をつなげるために、そうやって辻褄を合わせようとしていたのですね。強引だな〜(笑)

原作は独特の雰囲気をもっているので
まっさらでこの映画を見るとちょっと戸惑うかもしれませんね。
第2話のヤクザの場面で、千葉が4人の"同僚"と遭遇する場面の意味
(それぞれが死んだばかりの4人の、担当死神だった)
など、原作を読んでいないとすぐにはピンとこないであろうシーンもありました。

原作の雰囲気をよくつかんでいる映画だと思います。
傘や白手袋持参の方も大満足でしょう。(笑)
2008/03/24 9:39 PM by moviepad
こんにちは!
私もこれは連続ドラマがいいのでは…と思いましたね。
その時は主役は竹之内豊で(獏)
原作はオススメですか?
今度読んでみようかな〜
2008/03/25 12:28 PM by ノルウェーまだ〜む
ノルウェーまだ〜む さん、こんばんわ
巷では金城武と竹野内豊の区別がつかない方が
少なからずいるよふですが(爆)


竹野内豊ではこの役の天然な感じがでないような...。
「明日への遺言」のナレーションも棒読みだったし(笑)

原作は微妙ですね...。
正直いうと個人的好みではないのですが、
映画見たらまた読みたくなってきました。
2008/03/25 8:59 PM by moviepad
はじめまして
「虎猫の気まぐれシネマ日記」のななといいます。
とても丁寧で読みやすいレビューを楽しませていただきました。
私も,これを観るまえに大急ぎで原作を読んだのですが
先に読んでいたらかえって映画への理解が深まる作品のような気もしました。
金城さんはほんとうによかったです。
原作の千葉にほどよいコミカルさと可愛さをプラスして魅力的なキャラになっていましたね。
確かに,かれの「無国籍」な雰囲気が,この役にはぴったりだったと思います。
2008/03/26 9:03 AM by なな
ななさん、はじめまして!

この映画に関していえば、原作を先に読んだほうが
ゆったりとした気分で鑑賞できると思います。


金城武はよかったですね!
彼の出演作は未見のほうが多いのですが
自分のみた範囲では、「この役は別に金城武じゃなくても...」
と思うことが多かった。
でもこの死神役は金城武以上のキャスティングは思いつかない。
ファンは大満足じゃないでしょうか?
2008/03/26 8:12 PM by moviepad

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