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ダージリン急行

ダージリン急行(2007 アメリカ)

「ダージリン急行」公式サイトにリンク原題   THE DARJEELING LIMITED   
監督   ウェス・アンダーソン   
脚色   ウェス・アンダーソン ロマン・コッポラ
ジェイソン・シュワルツマン 
撮影   ロバート・イェーマン                  
音楽   ランドール・ポスター               
出演   オーウェン・ウィルソン エイドリアン・ブロディ
      ジェイソン・シュワルツマン アマラ・カラン
      アンジェリカ・ヒューストン ビル・マーレイ
      カミーラ・ラザフォード イルファン・カーン
      ウォレス・ウォロダースキー

可愛い子には旅をさせよ、といいますが若くてまだ可能性が無限に開かれている時期であれば"人生を変える旅"をすることもで可能でしょう。ただ、ある程度の年齢になるとちょっと異郷の地を訪ねたくらいで心のあり方、まして人生が変わったりすることがあるのでしょうか?ウェス・アンダーソン監督の新作『ダージリン急行』は、父親の死をきっかけに疎遠になった3兄弟が"人生を変える旅"をするためインドを訪れる姿を描いた映画です。

この映画が出品されていたヴェネチア映画祭の直前、主演のオーウェン・ウィルソンが手首を切るという事件が起きてしまいました。幸い命に別状はなかったものの、その後の精神状態が心配されていたオーウェン。第80回(2007年度)アカデミー賞授賞式で短編映画賞(実写)のプレゼンターとして登場し、元気?な姿を見せたことでファンを安心させてくれました。そのオーウェンが登場するとき”オスカー・ノミニー(oscar nominee)と紹介されたことを覚えているでしょうか?「えっ、オーウェンなんてアカデミー賞に全く縁のなさそうなコメディばかりに出ているじゃないの?」といぶかしく思う人もいるかもしれません。ところがどっこい、オーウェンは2001年、『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』で監督のウェス・アンダーソンとともに脚本賞にノミネートされた実績をもつ正真正銘のoscar nomineeなのであります。まあ、ウェス・アンダーソン、オーウェンファンならこんなことは百も承知でしょうが...。

ウェス・アンダーソンとオーウェンは学生時代からの古い友達でテキサス大学オースティン校の戯曲クラスで知り合っています。ウェス・アンダーソンとウィルソン3兄弟は一緒に暮らすほど仲がよかったといいます。やがてウェスとオーウェンは俳優志望だったルーク・ウィルソンを主演に『BOTTLE ROCKET』という短編映画を製作、低予算の自主映画ゆえ演技経験のないオーウェンも役者として出演せざるをえませんでした。この短編映画がジェイムス・L・ブルックス監督に認められ『アンソニーのハッピー・モーテル』として長編映画になり、それをきっかけにオーウェンは心ならずも?俳優の道に進むことになりました。オーウェンは前述の『ザ・ロイヤル〜』までのウェス・アンダーソン作品全てに脚本及び製作に関わっています。『ザ・ロイヤル〜』のころはもうオーウェンは俳優として多忙を極めていたため、実のところ脚本はウェス・アンダーソンひとりで書いたようですが、”彼と一緒にアイデアをつくりあげた”から、オーウェンをクレジットからはずさなかった。そのためウェスだけでなくオーウェンも晴れてoscar nomineeの仲間入りをしたわけです。何とも美しい話でございます。このことについてウェスは「オーウェンが隣のお兄ちゃんみたいなキャラで人気を博しているなんて全然知らなかった。シリアスな俳優だと思っていたので」と語っています。ブロンドの髪をなびかせ、愛嬌のある童顔、変な鼻のかたち…まるでコメディを演じるために生まれてきたようにも思えるオーウェンも身近な人から見ると違うイメージに見えるのですね。

さて、映画の内容に入ります。<前置きが長すぎる!(笑)

ファーストシーン、ビジネスマンらしきビル・マーレイがひたすら走ります。出発直前のダージリン急行に飛び乗るためです。奮闘むなしく間に合わず…息を切らしながら悔しそうに列車の後尾を見つめるビル・マーレイをよそにピーター(エイドリアン・ブロディ)はぎりぎりダージリン急行への乗り込みに成功します。人生とは走り出した列車に飛び乗ることができるものとできないものがいる。ほんの少しのタイミングの差にすぎないのだが…なんてことをふと思いました。ひょっとしてこれはかなり含蓄のある作品ではないか?と思わせてくれるオープニングでしたが...。

なんか(少し前までの)スコセッシ作品っぽいなー。
映画を見終えてまず感じたことです。スコセッシ映画とこの映画の類似点とは"いろいろと事件は起こるけれども結局、目の前の現実は何も変わらない。それでも登場人物は何らかのカタルシスを得る"物語である点です。個人的にはこういうタイプの物語もリアリティがあって面白いと思うのですが、映画にはっきりした起承転結を求める人は物足りなく感じるかもしれません。

3人一緒に祈りをささげる場面でも心は上の空、ベルトだのパスポートを返せだので大騒ぎしたり、おみやげ?に購入した毒ヘビが列車の中でいなくなったり,現地の家族との交流、失踪して尼になった母親パトリシア(アンジェリカ・ヒューストン)との再会...エピソードは重なりますが結局は何も変わらない。心の旅にも人生を変える旅にもならずじまい。人生そう簡単に予定通りには事が運ばない。長男のフランシス(オーウェン・ウィルソン)が旅行の予定表を破ろうとする場面が出てきませんが、硬くて破れませんでしたし。こんな些細なことですらうまくいかないものです(笑)。

スーツケースを捨てて3兄弟が列車に乗り込むところで映画は終わります。結局は何も変わらなかったけれど、心の荷物が少しだけ軽くなったことを象徴するようなエンディングです。”心の旅”というほど大げさなものではないが、思い出にはなった。そして乗客が窓から身を乗り出して前方をながめるようなアングルで線路の上を走る列車の姿を映し出しながら、ラストクレジットが流れ始めます。「人生を変えるような出来事などそうそう起こらない。それでも人生は続いていくんだよ」というメッセージがこめられているかのようです。ちなみにこの映画で3兄弟が持っているスーツケース。ウェス・アンダーソン監督の友人であるルイ・ヴィトンのマーク・ジェイコブスがこの映画のために特別にデザインしたものだそうです。駅のホームに置き去りにするなんてもったいないと思う人もいるかもしれませんね(笑)

インドで幸福の象徴とされるマリー・ゴールドの花も美しく、調和のとれた色合いも印象的。旅とは基本的に"小さなカタルシス=思い出"を得るためにある、ということをさりげなく教えてくれる作品です。
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ダージリン急行@映画生活


2008.03.16 Sunday | 21:55 | 映画 | comments(2) | trackbacks(9) |

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2019.09.05 Thursday | 21:55 | - | - | - |

コメント

こちらにもお邪魔します!

わたしはエイドリアン・ブロディが出てる作品は
なぜか観てしまうのですが,
この物語のほのぼのとした,ゆるゆるの雰囲気が
妙に心地よかったですね。
確かに人生なんて,そうそう好転するものではないし
人間はそんなに急に賢くなるものでもないけど
ささやかな事件を積み重ねながら,人生は続いていく・・・とそんな感想も持ちました。

2008/09/19 8:17 PM by なな
ななさん、こんばんわ

>わたしはエイドリアン・ブロディが出てる作品はなぜか観てしまうのですが,

えっ、ななさんってもしかして骸骨フェチ?(爆)
....m(_ _)m

ほのぼのゆるゆるすぎて、映画館で観るのはややつらい作品でした。
DVDでカウチポテトしながらゆったりと観た方が楽しめそうな映画ですね!
2008/09/19 10:15 PM by moviepad

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ダージリン急行
 アメリカ   ドラマ&コメディ  監督:ウェス・アンダーソン  出演:オーウェン・ウィルソン      エイドリアン・ブロディ      ジェイソン・シュワルツマン      アンジェリカ・ヒューストン 【物語】 長男フランシス、次男ピーター、三男
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