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レンブラントの夜警

レンブラントの夜警(2007 カナダ・ポーランド・オランダ・イギリス・フランス・ドイツ)

「レンブラントの夜警」公式サイトにリンク原題   NIGHTWATCHING   
監督   ピーター・グリーナウェイ   
脚本   ピーター・グリーナウェイ      
撮影   レイニア・ファン・ブルメーレン                  
音楽   ジョヴァンニ・ソリーマ ヴウォテック・パヴリク            
出演   マーティン・フリーマン エミリー・ホームズ
      マイケル・テイゲン エヴァ・バーシッスル
      ジョディ・メイ トビー・ジョーンズ ナタリー・プレス

17世紀を代表するオランダの巨匠画家レンブラント・ハルメンス・ファン・レインにとって、1642年はまさに運命の分かれ道と呼べる年でした。代表作『夜警』の制作、子供の誕生、そして妻サスキアの死...。当時36歳であったレンブラントの姿をミステリー色を交えて描いた映画が『レンブラントの夜警』です。映画は「人工的な光の操作」であると定義するピーター・グリーナウェイ監督が"光のマジシャン"レンブラントの世界に挑んだ意欲作です。

 『夜警』はレンブラントを転落させた?

夜警

夜警』というタイトルは18世紀以降このように呼ばれるようになったもの。そもそも、この絵は昼を描いたものであることが近年の修復作業によって判明しています。ニスが変色したため、背後の画面が黒くなってしまったようです。本来は『フランス・バニング・コック隊長とウィレム・ファン・ラウテンブルフ副隊長の市民隊』(De compagnie van kapitein Frans Banning Cocq en luitenant Willem van Ruytenburgh)とでも称すべき作品。集団肖像画はどの人物も均等に描かれるのが慣わしだったにもかかわらず、いわゆる"レンブラントライト"と呼ばれる斜め上方からの光によって隊長と副隊長、そしてなぜか少女がフィーチャーされている。そして今までは直立不動で描かれていた集団肖像画に動きを加え、物語性をとりいれたことでも有名です。この『夜警』の特徴にインスパイアされて映画は展開していきます。


目をえぐられるサムソンレンブラントが、目をつぶされる夢から覚めるところから物語は始まります。代表作のひとつ『目をえぐられるサムソン』を想像させる場面です。そして、実際に目をつぶされる場面で映画は終わります。明らかに創作と思われる場面ですが、これは一体何を意味するのでしょうか?




サスキアサスキアと暮らした日々がレンブラントにとって最も恵まれた時期であったことは確かなようです。2人は1633年6月5日に婚約しました。サスキアの父親は既に亡くなっていましたが高裁判事なども勤めていたエリートで、多額の持参金をもってレンブラントと結婚しました。レンブラントは富よりも名声を望むタイプの人だったようですが、彼女との結婚で上客からの注文もくるようになり、富と名声の両方を一気に手に入れた。映画の中でレンブラントが"しょせん粉屋の息子"と揶揄される場面が出てきますが、もう典型的な逆玉ですね。サスキア一家の財力がレンブラントを支えていたのは事実のようです。

『夜警』制作に当たって各隊員は同じ金額を支払っているのに平等に描かなかった。まして全然関係ない少女を目立たせた。これが不評でレンブラントへの注文が激減。『夜警』によって人生の転落が始まったという説が根強いようですが、実際は『夜警』がレンブラントの名声に傷をつけたわけではないようです。ただ、レンブラントは全く金銭感覚のない人だったらしく、金に糸目をつけず絵画のコレクションなどにいそしんだため破産状態になった。財産をきちんと管理できる人=サスキアの死がその後の数々のトラブルの原因と考えたほうがよさそうです。転落とはあくまで経済的な側面のことであり、画家としてはどんどん成熟している。映画で描かれているように、レンブラントが現実の何かを告発する意図で『夜警』を描いたのが事実なのかどうかは知りません。ただ、この作品が受注主に不評だったことは確か。目をつぶされるラストは、レンブラントがいろんな意味で現実を見る眼を失ったことを象徴しているのかもしれません。ただし、芸術を生み出す眼は失っていない。


 お久しぶりのグリーナウェイ映画!

さて、話を鬼才ピーター・グリーナウェイ監督に移します。
特にファンというわけではないのですが、独自の映像世界には惹かれるものがあり今までの作品はほとんど見ています。でも、『ピーター・グリーナウェイの枕草子』(1996)の筆フェチぶりに辟易。グリーナウェイってインテリ芸術家気取りしているけど、もしかしたら単なる変態ではないか?という疑惑が沸き起こり、前作『8 1/2の女たち』(1999)はスルーしてしまいました。よって約11年ぶり!のグリーナウェイ作品鑑賞となります。久しぶりの再会は涙の感激ご対面とはいきませんでした。
今イチ冴えねえ...『〜の枕草子』でグリーナウェイとの別れを決意した自分の判断は正しかった。
音楽がマイケル・ナイマンじゃないのも痛い。

まあ、グリーナウェイは観客の知的レベルをまるで考慮しない人なので、台詞が難解なのは予め覚悟の上でした。でも、ミステリー部分を全部セリフで説明しているため、セリフの中に固有名詞が出てきても、それがどの面さげたどいつを指すのかがよくわからないのです。映像でわかりやすく説明してほしかった。ストーリーを見ても、サスキアの死、『夜警』のお披露目のあとは家政婦であるヘールチェやヘンドリッケとの恋愛も描かれているのですが、それゆえこの物語のテーマは一体何なのかがはっきりしない。レンブラントを題材にしているからそれなりに興味をもって見ることができましたが、これが全くのオリジナル物語だったら目もあてられないところです。グリーナウェイはイメージ至上主義の人なので、物語を伝えることなんぞ多分興味はないのでしょう。「自分の作品のテーマは死とセックスだけだ」と言い切ってるし。
最大の売り物である映像も、グリーナウェイにしてはちと鈍い。最初のほうこそレンブラントの絵を意識したような映像が見られましたが、全体的にはどうも薄味でございます。『コックと泥棒、その妻と愛人』(1989)や『ベイビーオブ・マコン』(1993)のような、強烈なエログロ映像の洪水もない。これなら、映像的にも情報的にもひたすら供給過剰だった『〜枕草子』のほうがはるかにいい。満腹で腹を膨らませて帰るつもりが、ポテトチップスしか出なかった...みたいな感じ。薄味のグリーナウェイ映画なんて存在意義ありませんわ(笑)

とはいうものの、『レンブラントの夜警』ではじめてグリーナウェイ作品に触れた人なら独特の映像美に魅了されるかもしれません。また、レンブラントファンなら『夜警』の登場人物がリアルで立ち並ぶ場面などは楽しめるでしょう。グリーナウェイ作品全部にいえることですが、”お好きな方はどうぞ”としかいいようがない映画です、はい。
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レンブラントの夜警@映画生活

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2008.02.11 Monday | 01:18 | 映画 | comments(2) | trackbacks(2) |

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2019.09.05 Thursday | 01:18 | - | - | - |

コメント

はじめまして。
今まで密かに読ませていただいていたのですが、ここにきて、「アメリカン・ギャングスター」「ラスト・コーション」そしてこの「レンブラントの夜警」と、立て続けに自分が観た映画と重なってきたので、黙っていられなくなりました(笑)

moviepadさんのレビュー、いつもとても参考になります。
これからも、いい映画をたくさん紹介してください!
2008/02/11 5:35 PM by urontei
uronteiさん、はじめまして!

>立て続けに自分が観た映画と重なってきたので、黙っていられなくなりました(笑)

ああ、びっくりした。
最近「ラスト、コーション」以外は辛口気味なので
お叱りのコメントかと思いました(爆)

改めましてコメントありがとうございます。
とても励みになります。
今後ともよろしくお願いします!
2008/02/11 6:40 PM by moviepad

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レンブラントの夜警
 加&波&和&英&仏&独  ドラマ&ミステリー&アート  監督:ピーター・グリーナウェイ  出演:マーティン・フリーマン      エミリー・ホームズ      マイケル・テイゲン      エヴァ・バーシッスル 【物語】 1642年、オランダ・アムステ
(江戸っ子風情♪の蹴球二日制に映画道楽 2008/02/11 2:45 PM)
レンブラントの夜警
評判は芳しくないようですが、個人的には良かった。題材 自体が興味のある対象だったからかな。 レンブラント は誰もが知らない人はない画家ですが、史実や学術的なことはともかく、一点の興味ある絵画に対して、鑑賞者ひとりひとりが、こういった見方や物語を空想し
(つくえのすみのどんぐりぼうや. 2008/02/17 8:01 PM)

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