映画のメモ帳+α

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ラスト、コーション

ラスト、コーション(2007 中国・アメリカ)

「ラスト、コーション」原題   色・戒 /LUST, CAUTION(英題)   
監督   アン・リー  
原作   アイリーン・チャン 『ラスト、コーション 色・戒』
脚色   ワン・フイリン ジェームズ・シェイマス
撮影   ロドリゴ・プリエト                  
音楽   アレクサンドル・デスプラ               
出演   トニー・レオン タン・ウェイ
      ワン・リーホン ジョアン・チェン
      
2007年ヴェネチア国際映画祭金獅子賞(グランプリ)受賞


映画のタイトルとなっている『ラスト、コーション』。
Lustは”欲情”、Cautionは”戒め”を表すため、「自分の欲を戒めなさい」という意味になる。
また、中国語では”戒”は”誓い”の意味もあり、指輪は”指戒”と表記するという。
「ふたつの言葉にコンマを挟むことで、ふたつの言葉がひとつの意味を成すのと同時に、ふたつの別の意味をも表す」監督のアン・リーは語る。欲情と戒めはひとまとまりにくくられるべきものなのか、それとも別の事象として存在するのか?また、欲情と誓いはどうなのか。
そんな漠然とした想いを抱えつつ物語を追ってゆくことにする。

"Lust, Caution" Trailer



1942年、日本軍占領下の上海。
汪精衛が日本の支援により、南京に中華民国国民政府を作る。
当初の国民政府は重慶に遷都していたため、この政府は中国人からは「偽国民政府」と呼ばれており、現代の中国史から無視されている存在だ。
そんな傀儡政府の特務機関のリーダー、イー(トニー・レオン)。
常に恐怖と不安と猜疑心にさいなまれ、他の誰をも信用してない。
普通の女子大生だったワン(タン・ウェイ)は熱心に抗日運動をするクァン(ワン・リーホン)にほのかな恋心をいだいていたため、彼に誘われるままに抗日運動をテーマにした芝居に参加する。
観客から大喝采を受けたことにより、彼女の心の中に"演じることの悦楽”が芽生えてゆく。
ワンは演技力を買われて、日本の傀儡政府に協力するイーに近づき暗殺を遂行する令を受ける。
マイ夫人と身分を偽ることでイー夫人に接触することで、イーを誘惑する機会をうかがうワン。
企みは成功し、イーと逢瀬を重ね、厳しい現実から逃れるように激しくお互いを求め合う。

2人はお互いを何も知らない。
イーは職務のことなど話すわけにはいかない。
ワンは身分すら偽っている。
二人が身にまとった虚構を脱ぎ捨てることができるのは、体を重ね合わせる瞬間だけだ。
単なる色欲だけではない。
この瞬間だけ二人は"対等に会話している"のである。

ワンがイーのために『天涯歌女』を歌う場面が印象的だ。

♪わたしたちはほどかれることのない糸のよう

ワンはしっとり歌いながら、イーに近づいていく。
2人が体を重ね合わせることなしに、心を通わせた唯一の場面かもしれない。
イーはワンに高価な指輪をプレゼントするが、ワンの任務執行のときが迫る...。

久しぶりにあったクァンは、ワンが任務を遂行する直前、初めて彼女にキスをする。
そのときワンは「3年前にしてくれたら...」と冷たく言い放つ。
ワンは、クァンが当初の純心さを失っていることを見抜いている。
そしていよいよ任務執行のとき、ワンが下した決断は...。
男はもろく、女は強い。
ただし、心に残る傷は同じ。

己をさらけだすことが許されない状況の中で、感情をどうやって通い合わせるのか?
それはどんな代償を払うのか?
欲情と戒めは心の中で同時に沸き起こる。
そして戒めをはらいのけた欲情のなれの果てには、現実という"戒め"が横たわる。
映画『ラスト、コーション』はそんな愛の厳しさを美しい映像で綴ったもろくもはかない叙情詩。
まごうことなき傑作である。
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ラスト、コーション@映画生活


2008.02.03 Sunday | 03:13 | 映画 | comments(6) | trackbacks(25) |

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2019.05.21 Tuesday | 03:13 | - | - | - |

コメント

こんにちは!
残念ながら、久しぶりに意見が違ってしまいました〜(笑)
私にはこの映画の良さが分かりませんでした。
お子ちゃまってことでしょうか(汗)

主役の女性に魅力を感じませんでしたし、トニーも・・・
そもそも「殺さなければならない男を愛した女と女の企みを薄々分かっていながら愛する男」みたいな直接的なメロドラマ展開を期待していたのがイケナイようです(笑)
トニーがいきなりベルトを振り回したシーンで、ドドーっと引いてしまいました。
2008/02/06 8:42 AM by 由香
由香さん、こんばんわ!

えー、この名作を!
ケシカラン(爆)

とはいえ、好みは分かれそうな映画ですけどね。
話題のアノ場面を抜きに考えても。
由香さんのようにストーリーにこだわる方は
合点がいかない部分があると思います。

>トニーがいきなりベルトを振り回したシーンで、ドドーっと引いてしまいました。

ははは、あれはひくでしょうね。

この2人は立場上、まともな会話をするわけにはいかない、というところがみそ。
台詞のない部分が想像を掻き立てる作品だと思います。
2008/02/06 7:48 PM by moviepad
こんばんは☆

先日観てきました〜。
この映画、性描写ばかりが話題先行みたいですけど
わたしは映画としてすごく楽しめました☆
とにかく見せ方もうまいし、引き込まれてぜんぜん時間の長さ感じなかったです。
いつもならこんなに長すぎる〜っ
とか言っちゃうのに。(笑)

物悲しいラストも切なくてずしんときました。
2008/02/07 12:33 AM by mig
migさん、こんばんわ。

いや〜、この映画本当に見せ方が抜群にうまいですね!
最初の麻雀場面にはやや戸惑いましたが、
その後は上映時間の長さを全く感じませんでした。
これほど映像で語っている作品も最近ないんじゃないでしょうか?
本当、これは傑作です!
2008/02/07 1:07 AM by moviepad
>まごうことなき傑作である。
おお〜moviepadさんベタほめですね〜。
わたしもこの作品はすごいと思いました。
原作部分の書かれていないところを過不足なく補っていますね。
時代の背景を学生たちの部分をふくらませることによって詳しく映像で見せてくれていましたし・・・・
原作とちがってイーが少し優しい、人間臭い部分を多く持っているように感じました。やはりトニー・レオンが演じたからそんな風に感じるのでしょうかね。
美しい歌に涙する部分なんかがそうですね。
ラストシーンでもイーの胸中にあの歌がこだましていたのかなあなんて想像ふくらんでしまいました。
2008/02/11 11:48 AM by しゅぺる&こぼる
しゅぺる&こぼる さん、こんにちわ

僕は原作は読んでいないどころか、
映画館でアイリーン・チャンの名前を見たとき、
"The Rape of Nanking"のヒト?ゲー!!!
なんて馬鹿なことを考えていました。
向こうはアイリス・チャン!
全くの別人だとわかったのは映画を見終えた後です、とほほ。

歌の場面はよかったですね。
緊迫感の隙間に、中国語のやわらかい響きとメロディがそっとしみこんでいく。
短い場面ですが、小さなディテールも含めてこの映画は本当にすごい!
絶品でございます。
2008/02/11 5:28 PM by moviepad

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