映画のメモ帳+α

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チーム・バチスタの栄光

チーム・バチスタの栄光(2008 日本)

「チーム・バチスタの栄光」(2008)監督   中村義洋   
原作   海堂尊 『チーム・バチスタの栄光』
脚色   斉藤ひろし 蒔田光治
撮影   佐々木原保志
音楽   佐藤直紀
出演   竹内結子 阿部寛 吉川晃司
      池内博之 玉山鉄二 井川遥
      田口浩正 田中直樹 佐野史郎
      野際陽子 平泉成 國村隼

現役医師でもある海堂 尊(かいどう たける)の2006年第4回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作を映画化したのが『チーム・バチスタの栄光』。2006年2月に発売するや、映画会社・TV局各社25社より映像化件のオファーが殺到したそうです。この話題作のメガホンをとったのは『アヒルと鴨のコインロッカー』の中村義洋監督。キャスティングも豪華で、娯楽に徹したつくりになっています。

 ネタバレはしておりませんので安心してお読みください(笑)

〜物語〜
拡張型心筋症に対する"バチスタ手術"。成功率60%といわれる難易度の高いこの手術を26回連続成功させてきた東城大学病院の専門集団“チーム・バチスタ”。ところが、3件連続で術中死が発生。医療ミスか?それとも故意の殺人か?病院側は”グチ外来”と呼ばれる部署で患者の悩みを聞くのを仕事としていた田口(竹内結子)に内部調査を依頼する。素人探偵にできる仕事ではなく「単なる事故」で片付けようとしたところに厚生労働省の役人白鳥(阿部寛)が現れる。報告書を見て「これは殺人だ、犯人はチーム・バチスタの7人の中にいる!」と断定し、田口を引き連れて再調査に乗り出すが...。

 バチスタ手術とは?
バチスタ手術とは拡張型心筋症に対する手術術式のひとつで、正式名称は「左心室縮小形成術」。
考案者のランダス・J・V・バチスタ (Randas Jose Vilela Batista) 博士の名前をとって、一般的には「バチスタ手術」と呼ばれています。日本では1996年12月心臓外科医須磨久善氏により1はじめて実施されました。アメリカでは、その危険性などから、数年前から禁止術式とされています。
映画の中での執刀医、桐生の「俺は人を一度殺すんだ」という台詞にもあるとおり、"心臓を一度止める"手術ですからね〜。手術後再び呼吸音が聞こえてくるかどうか? これほど恐ろしい結果待ちはないかもしれません。なお、前述の須磨氏はこの映画の医療指導を行っているようです。

 参考
Suma Heart Consultation
見直される心臓縮小手術


 鑑賞前の楽しみ方
原作は"現役医師による医療ミステリー"という触れ込みです。ディテールで勝負!の社会派作品だろうと思い、今ひとつ興味が沸かなかったので原作は読んでいません。この映画も当然スルーの予定でしたが、なぜか応募した記憶がない試写状が届いた!見たかったのは他の作品だったのに...。
世の中タダより高いものはないと思いつつも、せっかくだから自分なりにこの映画の楽しみ方を考えてみました。それは犯人を鑑賞前に決めてしまうことです。これでとりあえず当たるか当たらないか、という観点では楽しめます。まずは本格派推理小説のパターンにそって考えてみました。

 もっともあやしくない人が犯人?
この映画では”ミスター・パーフェクト”と呼ばれるバチスタ執刀医、桐生恭一(吉川晃司)が該当します。自分の名前に傷がつくことをわざわざするとは思えない...?

 それなりの動機をもつ人が犯人?
これはある意味でストレートすぎて面白くないパターン。
一番わかりやすい動機をもつのは、外科医第一助手の垣谷雄次(佐野史郎)です。
次の助教授は自分だと思っていたところに、桐生がやってきたためチャンスを逃してしまっている...。
佐野史郎サンは「私はこういう作品に出るとだいたい“怪しい”と思われちゃうんですね」とコメント。そうでしょうね〜(笑)もう一人います。病理医の鳴海涼(池内博之)。桐生とともにアメリカで修行を積みましたが、手術中の事故で手に怪我をしたため病理医に。この"桐生とともに"ってところが曲者ですね。

あ、このヒトもそうかな?前任者の退職に伴って途中から看護師になった大友直美(井川遥)。
彼女に代わってから事故が続いた。嘘泣きの達人です。(笑)

 とりあえず動機はなさそうだが、あやしい雰囲気をまきちらしている人が犯人?
まずは、麻酔医の氷室真一郎(田中直樹)。常に手術を5つ、6つと掛け持ちさせられているので疲労気味。昼食はアイスキャンデーだけ。次は外科医第2助手の酒井利樹(玉山鉄二)。桐生に平伏、垣谷を軽視。密かに大友を愛している...。最後は臨床工学医師の羽場貴之(田口浩正)。一見温和そうな性格だが、夕食の献立が自分の希望と違うだけでキレる。ジキル&ハイド的要素をもっている?

犯人はこの7人のなかにいることになっています。
出来の悪い推理小説を読んでいると、物語も終盤に差し掛かったころに突然犯人役として新たな登場人物が出現してきて唖然とすることがありますが、この映画ではさすがにそんなことははありません。実は野際陽子が犯人だった!なんてこともありません。ちゃんとこの7人の中にいました。

さて、映画鑑賞前、僕が誰を犯人と予想したかというと...。面倒くさくなったので役柄などおかまいなし、俳優の名前だけを見て決めることにしました。犯人役を演じるなら、それなりの演技力が必要だろう。
かつ”絵になる俳優”のほうが望ましい...。ということで、華も演技力もある××××が演じた役が犯人であると決めつけました。当たったかって?それは言えねえな〜(笑)

 漠然と犯人あてを楽しむべき作品?

バチスタ手術だの、訳ありな登場人物だのいろいろ有るので、ちょっと予習しておいたほうがいいかな、と思いがちですが、その必要は全くありません。映画の中で全部教えてくれますので。
それゆえ、前半はやや説明的でかつカメラアングルも単調です。
医療ミステリーという触れ込みですが、社会派映画という感じもしない。とはいうものの、手術場面は見ごたえありましたし、各担当医の立ち位置などは興味深かったです。詳細はここ

また、出演者による演技合戦といった風味でもない。
それでも佐野史郎田口浩正らは手堅い演技でした。池内博之は目の大きさを生かした役どころで、文字通り目立ってました。存在感がひときわあふれていたのは吉川晃司。どこか少年ぽさを残した彼の表情とスター・オーラが役柄にぴったりマッチしていました。演技はお世辞にもうまいとはいいかねますが、スクリーン映えのする人ですね。全体を支えていたのは、やっぱり主演の竹内結子。頼まれたら断れない、お人よしの感じがよく出ていました。原作では41歳のさえない窓際医師の男という設定なので、原作ファンは戸惑っているようですが...。
一方、破天荒な厚生省役人の白鳥役、原作では小太りで油ぎったゴキブリのような男らしいのですが、その役を演じるのは元祖"ソース顔"の阿部寛!?顔の濃さが買われたのかな(笑)。阿部ちゃんもいつのまにか映画にドラマに大活躍の性格俳優になっています。ただ、あまり器用な役者じゃない。それが持ち味でもあるのですが。今回、出演時間がそれほど多くないので、"ただ変なだけ"の役で終わってしまった感があるのが残念。阿部ちゃんご本人は、性格のよさそうな人なんですけどね。

主演の2人に限らずすべてのキャラクターの描き方が表面的なので、登場人物の感情が今ひとつ伝わってこない。濃厚なドラマを期待していたら、見事に肩透かしをくらいます。物語展開が最優先の作品ですから、余計な要素は加えないほうがすっきりするのかもしれません。時折コミカルな味つけもされていますが、はっきりいってこれはサスペンス性をそぎ、全体的にゆる〜い印象を与えてしまっています。かつギャグはすべり気味。笑っているオバサンも結構いましたけどね。

全体的に見ると前半はちょっと退屈だったけど、犯人探しがクライマックスに達した後半はやっぱり面白かったですね。謎解きに関しては伏線らしきものはありますが、医療の知識がないとちときついかな。見栄を張らずに漠然と犯人を予想する程度に留めるのが正しい鑑賞法です。ただ、鑑賞後拍子抜けするくらい余韻が残らない。10分もすれば内容を全部忘れてしまいそうです。もっと重々しいものを期待していたんですけどね。この"結末のあっけなさ"が逆に現代社会を象徴しているといえるかもしれません。ちなみに、ラストに流れるEXILEの曲は映画の内容と全然マッチしてない。まともに聞いていたら映画の余韻なんか跡形もなく消え去ります。それがイヤな人は曲が流れてきたらすぐ席を立ちましょう(笑)。

上映終了後客席からざめめきが起こるなど話のネタにはなりそーな映画。
犯人探しのポップコーン・ムービーと割り切ってみれば楽しめる作品です。
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2008.02.01 Friday | 00:05 | 映画 | comments(2) | - |

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2024.03.19 Tuesday | 00:05 | - | - | - |

コメント

こんにちは!
ご忠告頂きましたが、観に行って参りました。
で・・・ご心配頂いた通りイマイチでしたぁ〜(笑)
原作のことは脇へ置いておいたつもりだったのですが、、、映画自体に面白みを感じませんでした(汗)
物語は原作の筋をチョンチョンと追っているだけで、、、インパクトに欠けた気がします。
もしかしたら連続ドラマの方が向いていたかもなぁ〜なんて思いました・
2008/02/09 5:11 PM by 由香
由香さん、こんにちわ!

>ご心配頂いた通りイマイチでしたぁ〜(笑)

そうでしょうね〜(笑)
この作品はっきり言って
映画としての魅力は乏しいので、
原作読んで事前に犯人知ってたら
楽しめる部分はあまりないでしょう。

>物語は原作の筋をチョンチョンと追っているだけで、、、インパクトに欠けた気がします。

ベストセラー・ミステリーの映画化って
そういう作りにせざるを得ないんでしょうね。
あの『ダ・ヴィンチ・コード』もそうでしたし...。
原作自体、ストーリーよりも"映画化されていない箇所"のほうが
面白かったりするのに、そこをカットされてしまうと
ちょっと厳しいですね。
2008/02/09 6:17 PM by moviepad

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