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ジェシー・ジェームズの暗殺

ジェシー・ジェームズの暗殺(2007 アメリカ)

「ジェシー・ジェームズの暗殺」公式サイトにリンク原題   THE ASSASSINATION OF JESSE JAMES BY THE COWARD ROBERT FORD 
監督   アンドリュー・ドミニク   
原作   ロン・ハンセン   
脚色   アンドリュー・ドミニク      
撮影   ロジャー・ディーキンス                  
音楽   ニック・ケイヴ ウォーレン・エリス
ナレーション ヒュー・ロス               
出演   ブラッド・ピット ケイシー・アフレック
      サム・シェパード メアリー=ルイーズ・パーカー
      ジェレミー・レナー ポール・シュナイダー
      ズーイー・デシャネル サム・ロックウェル

第80回(2007年)アカデミー賞 助演男優賞(ケイシー・アフレック)、撮影賞ノミネート

南北戦争後、強盗や殺人を次々と重ねたにもかかわらず、”南部の抵抗の象徴”として英雄視され、今もなおアメリカで最も有名な無法者であるジェシー・ジェームズ。伝説的英雄ゆえ、ジェシー・ジェームズを描いた小説や映画はたくさんありますが、あえて”彼を背中から銃殺した卑怯者”ロバート・フォードに焦点を当てて描いた映画が『ジェシー・ジェームズの暗殺』です。ベストセラーとなったロン・ハンセンの原作を元に、ジェシー・ジェームズの知られざる姿、そして暗殺されるまでに実際に起こった事が丹念に描き出されており、実に見ごたえのある心理ドラマに仕上がっています。



ジェシー・ジェームズは、アメリカでは知らぬ人がいないほど有名であるようですが、日本での知名度はそれほどでもないんじゃないかと思います。えっ、サンドラ・ブロックの旦那じゃないの?そんなアナタは海外芸能ゴシップの読みすぎ(笑)。ワタクシは当然知っておりました。でも、何故知っていたかというと,別にアメリカ史に並々ならぬ興味を持っていたからではなく、あの、あの、あの、アカデミー賞・グラミー賞両方受賞の稀有なエンターティナーにも拘らずキワモノの象徴として人気があるシェールのヒット曲『JUST LIKE JESSE JAMES』という曲を聴いたことがあったからです。うーん、あんまり威張れる理由じゃないですねぇ。

強盗だの殺人だのケシカラン行為を重ねた野郎が何でそんなにも人気があるのか?
うーん、それはやっぱり南北戦争で南部側が負けたことが大きいようですね。
ジェシーと映画にも登場する兄のフランクが暮らしていたミズーリ州は、南北戦争の激戦地。ジェシーとフランクも南軍のゲリラ部隊に編入されてしまった。ところが南軍は敗北。それをきっかけに犯罪者街道を突っ走った模様です。ジェシー一味は銀行強盗、列車強盗を重ねます。ここで「御婦人と労働者からは盗らず、金持ちの紳士からのみ奪う」と発言したといわれ、殺すのは元北軍兵士のみで、元南軍兵士からは何も盗まなかったなどの伝説が積み重なり、南部の"抵抗の象徴”として英雄化されていったようです。映画では、その部分は描かれていないので何故無法者の彼がそんなにも人気があるのか、日本人にはちとピンとこないところです。ケイシー・アフレック演じるロバート・フォードはそんな”ジェシー・ジェームズ伝説”に酔いしれ、ついにジェシーの元に弟子入り志願?することになります。

念願のジェシー一味に加わってからのロバートは、ほとんどストーカー!風呂までのぞいています。
ジェシーのほうも最初はロバートを好ましく思っていたようですが...。
毎日が生きるか死ぬかのならず者社会、仲間とはいえいつ裏切るかわかったものじゃありません。
天下のジェシー様ですら突然手下たちのところに”偵察”にやってきて、何気ない質問から疑惑の種を引き出そうとする。食事の場面は空虚な笑いが鳴り響き、誰もが仲間ですら信用していない。
前半は、お互いの腹の探り合いのような心理描写がじっくりねっとりと続きます。

ロバートら部下たちは"いつかジェシーに殺される”と脅える日々。
無類のならず者であるジェシー逮捕には1万ドルの懸賞金がかかっています。
ジェシー崇拝者ロバートですら"殺されるくらいなら今のうちに通報して懸賞金をせしめたほうがよいのでは?"と考え始める。そんな矢先、"内通者”の協力が不可欠である警察が彼に接触してきて...。

ロバートがなぜジェシーを殺めてしまったのかは、この映画からは明確に読み取れません。一般的には賞金目当てと思われているようです。もちろん、それも一理あるでしょう。また"伝説的英雄"が自分たちと同じただの人であることに失望したことも原因のひとつでしょう。この頃のジェシーは長い逃亡生活に疲れ果ていらたちが増してきており、子供に暴力をふるって敵の居場所をはかせようとしたり、仲間を背後から射殺したり...英雄らしからぬ行動が目立つようになってきていた。それでもロバートの中でジェシー崇拝心が完全に消えていたわけではないようです。何しろ暗殺直前、彼のベッドにもぐりこみ布団の匂いをかいだりしているんですから。

この伝説の英雄役、やっぱり大スターが演じないと説得力がない!ということでキャスティングされたのがブラッド・ピット。正直言ってここが一番不安でした。『レジェント・オブ・フォール』や『トロイ』みたいな薄っぺらい俺様演技されたらかなわんな〜と...。でも、さすがブラピも年齢を重ねた分、抑制された演技の中にカリスマ性を醸し出すことに見事成功していました。キャリア最高の演技といってもよいのではないでしょうか?だてにアンジーの子守はしていません。ただ、この作品の実質的主役はロバートを演じたケイシー・アフレックです。そもそもこの映画の原題は『THE ASSASSINATION OF JESSE JAMES BY THE COWARD ROBERT FORD(卑怯者ロバート・フォードによるジェシー・ジェームズの暗殺)』ロバートは題名からして主役なのです!無法者を暗殺し、賞賛されるはずだったのが卑怯者と嘲られ続け、"The Ballad Of Jesse James"という歌の中で"ロバート・フォードなんて小僧がこっそり彼を撃った。汚ねえ卑怯者が彼を撃った"なんて言われてしまうハメに。



ネタばれになるのでここには記載しませんが、ジェシー暗殺後のロバートがたどった道のりにはかなり驚きました。ここからは"真の主演男優"ケイシー・アフレックの独断場でしたね。ケイシーはアカデミー賞助演男優賞ノミネートが確実視されています。繊細な演技と映画全体を支える存在感!十分受賞に値すると思います。

映画『ジェシー・ジェームズの暗殺』は160分の長尺。しかも、目立った事件はジェシーの暗殺場面くらいで、その他は映像による無法者の男たちの心理描写がじっくりと続きます。音楽も最小限に抑えられ徹底的に抑制された演出。観客が自ら行間をたくさん読まなければいけないので見終わった後、まるで長編小説を読み終えたような感触があります。ブラッド・ピット主演ということで派手なハリウッド映画を想像しがちですが、本来ならミニ・シアターで上映したほうがよいと思えるほど地味で丁寧なつくり。しかも完全に男性向けの作品です。厳しいビジネスの世界で生きている人にとっては、この映画の"腹の探りあい"場面など、どこか共感できる部分があるのではないでしょうか?
でもその年代の人は最も映画を見ないといわれている人たちなんだな...。

ジェシー・ジェームズだって背後から手下を銃殺した...。
それなのにジェシーは英雄と崇められ続け、ロバートは卑怯者と呼ばれ続ける。
まるで人は生まれながらにしてそういうことが運命として決まっているのでは?という、ある種の無常さも感じます。人は誰だって臆病者。でもそれを隠し続けなければ厳しい社会を生き抜くことはできない。

映像も美しく重量感あふれる心理ドラマです。
お世辞にも万人に薦められる映画とは言えませんが、個人的には傑作だと思います。
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ジェシー・ジェームズの暗殺@映画生活

2008.01.15 Tuesday | 02:52 | 映画 | comments(8) | trackbacks(10) |

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2018.05.21 Monday | 02:52 | - | - | - |

コメント

はじめまして。
ケイシー主演同感です。
ブラッドファンとして観なければ、もっと点が高い(笑)でしょうか??
まあ、おっしゃるように、トロイをはじめブラッドって人は、ほんとうの意味での主演映画がほとんどないですね。カリスマスターの性かな?

あっ、レジェンド〜はブラッドが・・と言うより、作品のツメがどこか甘い監督のせいなのでは?解釈では、かなりぶつかって喧嘩もしたようですし。 
2008/01/16 10:01 AM by mariyon
mariyonさん、こんばんわ

>まあ、おっしゃるように、トロイをはじめブラッドって人は、ほんとうの意味での主演映画がほとんどないですね。カリスマスターの性かな?

えっ、そんなこと書いてませんよ。
でもその通りですね(笑)
ピンの主演でのヒット作がないことが大きいかもです。
「セブン」は作品の力によるものだし、
微妙に主演とはいいがたい。
「トロイ」はオーランド・ブルーム共演であの程度のヒットでは
物足りないと思われているかも。

「レジェンド〜」はブラピのプロモーション・ビデオでしたからね。
あれ以来あの監督の名前を見ると即スルー!
「ラストサムライ」は見ましたけど。

この作品もそうですが、ブラピは最近、製作でいい仕事をしているので
そのうち自分でまた企画するんじゃないかと思います。
2008/01/16 7:24 PM by moviepad
地味で丁寧な作りでしたね。
ケイシー主演ですよね。
私、どうしてもケイシーも上手い!と思いつつ好きになれず、ボブの生き方が悲しすぎて、この映画は辛かったです。

ジェシーは義賊なんて言われてますけど、銀行や列車は北部資本だから、痛快に思った南部人のイメージ戦略だったんですね。
この映画はあまり好きになれなかったけど、相変わらずmoviepadさんの記事はよく書き込まれてスゴいと思います。なんで上位じゃないの!と、ポチしました。

2008/01/16 11:07 PM by あん
あんさんこんばんわ!

>ボブの生き方が悲しすぎて

その悲しさがよく出ていたところが僕は気にいったんですけど。
ダイレクトに受け止めるとかなりつらいかも、です。
強いて言えば前半を少し削ってでも、暗殺後をもっとじっくり描いてほしかった気がします。
それじゃ、完璧にケイシー主演になってしまうか(笑)

ジェシーに関しては列車強盗というところも人気の原因だったみたいですね。
鉄道建設によって土地を取り立てられたりしたため、
農民は鉄道に反感をもっていた。
それゆえ¥"列車強盗¥"にひそかに喝采を送っていた...
みたいな要素もあるようです。
非アメリカ人のために、なぜジェシー・ジェームズが英雄視されたかが
わかる描写がほしかったところですね!

ポチありがとうございます(泣)
2008/01/16 11:38 PM by moviepad
moviepad さん、こんばんは。
完全に男性向けなタイプかと思いきや、ドンパチ西部劇ではなくてアート系作品だったので、意外にも私好みでした。
ジェシー・ジェームズのことなんて全然知らなかったけど、作品にはハマってしまいました。
巷の評判はイマヒトツのようですが、素晴らしくクールな映画だったと思いますー。
演技も演出もエクセレントだったなぁと。
2008/01/23 1:14 AM by かえる
かえるさん、こんばんわ

この作品は完全にミニ・シアターモードですから、かえるさんなら大丈夫ですよ(笑)

ブラピ主演、上演時間2時間40分...
本来なら当然スルー!映画でした。
ただ、一部の映画賞で高い評価を受けていたし、またアカデミー賞ウォッチャーとして、
ケイシー・アフレックの演技をチェックする必要性を感じたため、
重い腰をあげて観に行きました。
大自然の映像も美しく素晴らしい作品!
偏見はいけませんね〜。(笑)
2008/01/23 2:03 AM by moviepad
こんばんは!
ブラピ主演ときいて楽しみに観ましたが
主演はケイシーでしたね。繊細で,見事な演技でした。
>まるで人は生まれながらにしてそういうことが運命として決まっているのでは?という、ある種の無常さも感じます。

ほんとにそうかもしれません。英雄の資質であるとか
その時の運不運であるとか・・・努力や意気込みではカバーできないなにものかを感じますね。
長尺でしたが,映像,雰囲気,テーマ,とても気に入った作品でした。
2008/07/16 9:02 PM by なな
ななさん、こんばんわ!

ブラピって純然たる主演作があまりないんですよね。
この映画、原題から考えても主役はケイシー演じるロバートですね。

ほとんど兄との共犯なのにジェシーだけが英雄扱いされているところが興味深いところです。
英雄とみなされるにはいろいろと条件があるんでしょうね〜。




2008/07/16 11:30 PM by moviepad

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