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ペルセポリス

ペルセポリス(2007 フランス)

「ペルセポリス」公式サイトにリンク原題   PERSEPOLIS    
監督   マルジャン・サトラピ ヴァンサン・パロノー   
原作   マルジャン・サトラピ 『ペルセポリス』   
脚色   マルジャン・サトラピ ヴァンサン・パロノー           
音楽   オリヴィエ・ベルネ               
出演   (声)キアラ・マストロヤンニ カトリーヌ・ドヌーヴ
      ダニエル・ダリュー サイモン・アブカリアン
      ガブリエル・ロペス フランソワ・ジェローム

第80回(2007年)アカデミー賞 長編アニメ賞ノミネート

マルジャン・サトラピは、イラン出身でパリを拠点に活動するイラストレーター。2000年11月、自身の半生を綴った全4巻のグラフィック・ノベルを出版するとたちまち世界的ベストセラーとなりました。映画『ペルセポリス』は、そのベストセラーをマルジャン本人がフランス人イラストレーター、ヴァンサン・パロノーと組んでアニメ化したもの。イスラム革命、イラン・イラク戦争など激動の時代を背景に、ひとりの少女の成長を描いた作品は絶賛をあび、第60回(2007年)カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞。以後、アニメ映画の枠にとらわれず世界の映画賞を賑わし続けている話題作です。

〜物語〜  ( )名は声優名
1978年のテヘラン。9歳の少女マルジ(ガブリエル・ロペス/キアラ・マストロヤンニ)はブルース・リーの大ファンで、何でも知りたがる女の子。父エビ(サイモン・アブカリアン)と母タージ(カトリーヌ・ドヌーヴ),おばあちゃん(ダニエル・ダリュー)と幸せに暮らしていた。だが、翌年イスラム革命がおきると生活環境は一変。風紀を厳しく取り締まる警察や空襲におびえて暮らすはめになる。一方、旧政権により反政府主義者として投獄されていたアヌーシュおじさん(フランソワ・ジェローム)は解放され、マルジは彼からいろんなことを教わる。しかし1年後、新政府によりアヌーシュおじさんは新政府に逮捕されてしまう。そんな状況であってもマルジはアイアン・メイデンのテープを聴きまくり"PUNK IS NOT DED(パンクは死なず)"の文字入りジャケットを着て街を闊歩したり、校長先生に反抗したりと全く恐れを知らない。自由に発言できない社会において、娘の将来を心配した両親はマルジをウイーンに留学させることにするが...。



原作のグラフィック・ノベルは出版されるとすぐに映画化オファーが殺到。
ハリウッドからは母にジェニファー・ロペス、父にブラット・ピットでどうだ、なんて話もあったそうです。
マルジャンは”実写で撮ってしまったら、自分たちと顔つきが違うどこか遠い国のお話だと受け取られかねない世界の誰にでも起こりうる物語に感じてもらえるようにしたい。”との思いを込め、自分自身でアニメ化することを選択。原作を忠実に再現するため、原画をフエルトペンでなぞる「トレーシング」方式を採用するなど、あくまで紙と鉛筆で描く手法を映画制作においても貫きました。人間の目には(はっきりしすぎて)10分くらいしか耐えられない白黒画面を、1時間半の映画に持ちこたえるようにするため、グレーのトーンを加えるなど試行錯誤を重ねて、イラストがスクリーンでどう見えるかというリサーチに3年もの月日を費やしたそうです。手作りの絵は映画全体に、ほのかな温かみを漂わせていますね。レトロな雰囲気の映像は個人的にかなりツボです!

参照 <第60回カンヌ国際映画祭>注目作品『ペルセポリス』に迫る - フランス(動画)

どんな状況下でもパンク精神を失わない少女マルジを主人公にして物語は展開していきますが、
この映画のメッセージ部分は、ほとんど”おばあちゃん”によって表現されているといっていいでしょう。
特に印象的なのは、マルジが無実の男に罪をなすりつけて警察尋問から逃げ出したことに対して、マルジを激しく罵倒する場面。
常に公正明大であれ
これがおばあちゃんの口癖です。
マルジがウイーンに留学するとき、「これからはたくさんの馬鹿に出会うだろう」と警告する場面は笑いましたね。このおばあちゃんのモデルはマルジャンの実際の祖母なのですが、ご本人、映画のキャラクター以上に好き嫌いがはっきりした人だったとか!

この作品はつまるところ"母国を離れて暮らさざるをえない人”の物語です。異国での生活は、どんなにとんがって生きていても自分は"よそ者"であるという感覚から逃れることはできない。マルジは結局イランに帰ってくるのですが、これも監督のマルジャンの実体験に基づくもので、原作には、"たとえ個人的、社会的自由がなくなったとしても故郷に帰りたくてしょうがなかった”と綴られているようです。またマルジャンは原作を執筆した動機について「イランを出てから、あまりにも間違ったイメージが現実に流布していることに気がついた。まるで国民全員が悪人のように見られてしまう。国民は独裁者の最初の犠牲者なのに。そのことを世界中の人に知ってほしかったの」と語っています。

映画『ペルセポリス』は、『潜水服は蝶の夢を見る』、『エディット・ピアフ 〜愛の讃歌〜』などの強力作を押しのけて第80回(2007年度)アカデミー賞外国語映画賞フランス代表作品にエントリーされており、早くも受賞最有力の呼び声があがっています。また長編アニメ映画賞のノミネートも確実視されており、全米批評家の96%の支持を集めた大本命『レミーのおいしいレストラン』を打ち負かす可能性を指摘する人もいます。母国を離れて仕事をしている人はハリウッドに多いでしょうから、この映画は心の琴線に触れるんでしょうね。

 1/16 追記
1/15 アカデミー協会は外国語映画賞一次選考通過9作品を発表。何とこの段階でノミネート漏れが決定。
当作品の他、カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作『4ヶ月、3週と2日』も落選という大波乱。
近年、外国語映画賞の選考に疑問の声が高まっていますが、いっそう批判が強まりそうな気配です。


 1/24 追記
第80回アカデミー賞アニメーション映画賞にはノミネートが決まりました!


モノクロ映像が醸し出す物語は、重い余韻を観客に残します。心が"生まれ育った場所”を見捨てることはありえない。例え、その場所が現在どんなひどい状況下にあろうとも。−そんなことをしみじみと感じさせてくれる大人向けの物語です。
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ペルセポリス@映画生活


2008.01.13 Sunday | 02:55 | 映画 | comments(8) | trackbacks(11) |

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2019.09.05 Thursday | 02:55 | - | - | - |

コメント

moviepadさん、こんにちは。
アカデミー賞外国語映画賞の代表にアニメというのはかなり珍しい気がしますが、それも納得してしまう素晴らしい映画でした。
同じフランスのモノクロアニメ「ルネッサンス」は黒がきつくて、あまり好きになれなかったんですが、こちらの手作り感は心地よかったです。
母にジェニファー・ロペス、父にブラット・ピットじゃなくて本当によかった!
2008/01/13 12:34 PM by かえる
かえるさん、こんばんわ

アカデミー賞作品賞ノミネートの噂もある
『潜水服は蝶の夢を見る』すら押しのけてアニメ映画が
エントリーというのはすごいですね。
そもそもアートの国、フランスでは
アニメは子供向きという認識があまりないのでは?
と思ったりします。
フランスアニメでは『ベルヴィル・ランデブー』が
映像も物語もシュールで好きです。
主題歌も粋な仕上がりでサントラもってます!
「ルネッサンス」は予告編はかっこいいな、と思ったのですが
多分長時間持たないだろうと思ってパスしました。
この手の映像は(アニメではありませんが)『シン・シティ』で
うんざりしてしまったので。
モノクロ画面は好きなのですが、やたら光を入れられると...。
黒白画面は10分が限界というのは実に正しい!と思います。
この映画の映像は実に快適でした。

>母にジェニファー・ロペス、父にブラット・ピットじゃなくて
本当によかった!

これじゃ、どこの国の、誰が主役の映画か
さっぱりわからなくなっちゃいますね。
この物語からどーやったらこのキャスティングが
思いつくのか教えてほしいものです。(笑)
2008/01/13 8:35 PM by moviepad
moviepadさん、こんにちは!
アニメに対してのマルジャン・サトラピ監督のこだわり部分、すごかったのですね!
こちらを読ませていただいて、さらにこの映画の芸術性について感慨深くなりました。

>この作品はつまるところ"母国を離れて暮らさざるをえない人”の物語です。異国での生活は、どんなにとんがって生きていても自分は"よそ者"であるという感覚から逃れることはできない

自分はよそ者である、というこのアイデンティティの問題は、近代の文学の一つの大きなテーマですもんね!
この物語が、世界に共感されるものであるということには、納得です。
2008/01/14 1:49 PM by とらねこ
とらねこさん、こんばんわ。

>自分はよそ者である、というこのアイデンティティの問題は、近代の文学の一つの大きなテーマですもんね!

最近見た『その名にちなんで』は、映画も原作もまさにこのテーマだし、
1927年の『ジャズ・シンガー』も元をたどればここに行き着く。
うーん、これはアート全般における永遠のテーマですね。
2008/01/14 6:34 PM by moviepad
先日は「スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー」と「ジャズシンガー」への無言TB失礼いたしました。重ねてTBのお返しも感謝いたします。
由香さんちでは何度かコメント拝見していました。

いろいろと渋い作品も観ておられるようで、とっても興味深く読ませていただいております。
「ペルセポリス」モノクロアニメの雰囲気のみで観にいきました。
地味な展開ながら面白かったです。
バーニングハートの歌にのって自分のからをやぶったマルジャン!
故郷を離れてホームシックになったことある人なら共感する場面ですね。
意外にも歌はへたなキアラ・マストロヤンニ!
こちらもなんか親近感わきました。(笑)
TBさせていただきますね。
2008/01/14 8:35 PM by しゅぺる&こぼる
しゅべる&こぼるさん、こんばんわ。
当ブログはTBオンリーOKですので、気になさらずに!
「ジャズ・シンガー」にTBいただけるとは思わなかったので嬉しかったです。

えっ、バーニングハートもありましたっけ?
"アイ・オブ・ザ・タイガー"なら覚えていますが。
まあ、どっちにしろサバイバーによるロッキーのテーマソングなんですけどね(笑)
あれは多分キアラの声じゃないんじゃないかな〜(調べてませんが)
今後ともよろしくお願いします。
2008/01/14 9:16 PM by moviepad
こんにちは。おくればせながら、映画を観ました。私がマルジャン・サトラピを知ったのは、本の「刺繍」が最初でした。それから「ペルセポリス」を読んだのですが、たいてい原作がある作品の映画化ってがっかりさせられるのであまり期待していなかったんです。でも、映画の良さを生かしていて、素晴らしかった! グレーの使い方が特に。
あと、おばあちゃんが原作よりも活躍していたように思えたのが嬉しかった。「刺繍」のテイストがちょっとちりばめられていて…。この本、まだ読んでいらっしゃらなかったらおススメです!
2008/02/12 10:22 PM by Peppermint Patty
Peppermint Pattyさん、はじめまして!

原作は本屋でパラパラと立ち読みしました。
映画そのまんまでしたね〜。
<順番が逆だって(笑)

やっぱり原作者自らが監督・脚色してますから
ぶれることがないんでしょうね。
グレーを少し混ぜるだけで白黒の画面が
こんなに見やすくなることがわかったのも発見でした。

「刺繍」ですか!ちょっと調べてみたら
"ダメ男たちにあきれながらも、ポジティブに生きる等身大の女性像を描く"作品だそうで...。
僕は読まないほうが精神衛生上いいかもです(爆)
2008/02/12 11:16 PM by moviepad

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『ペルセポリス』 PERSEPOLIS
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