映画のメモ帳+α

音楽映画、アカデミー賞関連の記事に力を入れています。
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雨に唄えば

雨に唄えば(1952 アメリカ)

雨に唄えば © 1952 Loew's Incorporated. All Rights Reserved原題   SINGIN' IN THE RAIN    
監督   ジーン・ケリー スタンリー・ドーネン     
脚本   アドルフ・グリーン ベティ・コムデン      
撮影   ハロルド・ロッソン
作詞   アーサー・フリード
作曲   ナシオ・ハーブ・ブラウン                   
音楽   レニー・ヘイトン             
出演   ジーン・ケリー デビー・レイノルズ
      ドナルド・オコナー シド・チャリシー
      ジーン・ヘイゲン ミラード・ミッチェル
      ダグラス・フォーリー リタ・モレノ


第25回(1952年)アカデミー賞助演女優(ジーン・ヘイゲン)、ミュージカル映画音楽賞ノミネート。

これまで数多く製作されてきたミュージカル映画の中で、ベスト1はどの作品?と尋ねられたとします。少し考えますが、歌、ダンス、ストーリー...ミュージカルの楽しさが全部詰まっているこの作品にやっぱりたどりつく。映画がサイレントからトーキーに移り変わる過程をコミカルに描き、ジーン・ケリーが雨の中を歌い踊る場面があまりにも有名な『雨に唄えば』です。実際そう思うのは僕だけではないようで、AFI(アメリカ映画協会)の「最高のミュージカル映画」というアンケートにおいて、500人以上の映画監督、作曲家らの投票により見事ベスト1に選ばれています。

〜物語〜
ドン・ロックウッド(ジーン・ケリー)とコスモ・ブラウン(ドナルド・オコナー)の2人は仲の良い友達だった。1920年代に、2人はハリウッドにやってきた。ドンはスタント・マンの仕事をきっかけに俳優になり、サイレント映画のスターとして名を轟かせるようになった。リナ(ジーン・ヘイゲン)と10作以上コンビを組み、マスコミは2人の結婚が間近であると書きたてるようになった。リナはドンを恋人だと決めてかかっていたが、ドンのほうは高慢なリナに好意を抱いていなかった。押し寄せるファンから逃げた際、コーラス・ガールのキャシー(デビー・レイノルズ)と出会い恋仲に。そのころ、『ジャズ・シンガー』のヒットで映画はサイレントからトーキーへの移行を余儀なくされる。時代の流れに合わせるため無理矢理トーキーにして製作されたドン&リナ、コンビ最新作の試写が酷評を浴びてしまった。リナはマスコミの前でも極力しゃべらせないようにしていたほどの悪声。作品をミュージカルに作りなおし、リナの声をキャシーが吹きかえることで再起をはかろうとするが…。



ミュージカル映画好きな人なら、「あなたはアステア派?それともケリー派?」なんて話題で盛り上がったことがあるかもしれません。フレッド・アステアのダンスは伝統的で洗練された名人芸であるのに対して、ジーン・ケリーは無骨で泥臭いとよく言われていました。ケリーいわく「フレッド・アステアがダンス界のケーリー・グラントだとしたら、私はマーロン・ブランドだ」、そうですが。しかし、この映画で見せたダイナミックなダンスには誰もが魅了されました。数多くのミュージカル映画出演歴を誇るジーン・ケリーですが、まさに『雨に唄えば』は彼の代表作といっていいでしょう。1996年にケリーが亡くなったとき、アメリカのあるニュース番組はこの映画中の雨の中を唄い踊る場面をノーカットで放送したそうです。

ジーン・ケリーが無骨で泥臭い、といわれるのはその外見にあるのかもしれません。ダンサーらしからぬくどい顔とがっちりした体格、スレンダーなダンサーのイメージとはかけ離れたものです。映画の中でもドナルド・オコナーと並んで踊る場面が出てくるのですが、ケリーのほうが鈍く見えます。2人の体格の違いがそう見せてしまうんでしょうね。

この作品では監督も兼ねたジーン・ケリー。撮影中は暴君だったようで、温厚そうなドナルド・オコナーすら「ジーン・ケリーとの仕事はやりづらかった」と告白しています。ちなみにこの年のゴールデン・グローブ賞で主演男優賞(ミュージカル/コメディ部門)に選ばれたのはドナルド・オコナー!ケリーはノミネートすらされていませんでした。ケリーはマスコミに嫌われていたのでしょうか?ただ、暴君ケリー(笑)の一番の被害者はキャシー役のデビー・レイノルズで、プロのダンサーではない彼女はダンスの猛特訓を強いられました。ケリーにののしられピアノの下で泣いていた姿を、たまたま同じスタジオにいたフレッド・アステアが見つけ、彼女にダンス・レッスンをつけてあげたというエピソードもあるようです。デビー・レイノルズは「(この映画の撮影は)私の人生の中でもっともつらい時期のひとつ」とコメントしています。レイノルズの娘はいわずと知れた"レイア姫" キャリー・フィッシャーですが、若い頃を比較するとママのほうが可愛いなあ。

映画の中でマイクにうまくセリフが乗らず、監督が「何でもいいからとにかくマイクに向かってセリフを言え!」と怒鳴りちらし何度も撮影をやり直す場面が出てきます。この場面を観ながら『ジャズ・シンガー』(1927)は技術的にうまくいった箇所だけとりあえずトーキーにしてみたのだろうか?とふと考えたりしました。『ジャズ・シンガー』は記念すべきトーキー第1作としてあまりにも有名ですが、全編トーキーではなくあくまで部分的適用。どういう意図でこの箇所だけトーキーにしたのかな?と疑問に思いながら観た記憶があったので。

無理矢理トーキーに作り変えた新作の試写会で、録音した台詞と画面がずれて男と女の台詞が入れ替わってしまうところは笑えます。リナは悪声のためキャシーが声を吹きかえるのですが、サイレント映画ではスターだったのにトーキーになったとたん、その声により転落していった例としてもっとも有名なのはジョン・ギルバートでしょうか?この映画でのドンとリナのカップルは往年のグレタ・ガルボとジョン・ギルバートをモデルにしているのかもしれません。ガルボは”ガラガラ声”の魅力で押し通し、トーキー時代を生き抜いたのですが。ギルバートは男性にしては甲高いキーキー声だった...。ただ、声だけでなく出演作の台詞の仰々しさが失笑を買ったという面もあるようです。ドンが何度も"アイラブユー”とささやきながらリナに何度もキスをする場面が出てきますが、これはギルバート主演作「His Glorious Night」(1929)のパロディみたいです。

トーキー演技に備えて俳優たちがボイス・トレーニングを受ける場面があります。ここでcan’t(キャント)をカントと発音させていたりする。ハリウッドはいまだにイギリス・コンプレックスがあると言われますが、イギリス英語の発音のほうが正統だと考えられていたんでしょうかね?ドンが早口言葉のレッスンを受ける場面からジーン・ケリーとドナルド・オコナーの2人が"Moses Supposes"を歌いながら踊りまくる場面につながっていきます。足の動きの早さ!軽やかさ!もう人間業じゃございませんわ(爆)

©MGM/Photofest/MediaVastJapanさて、今や説明不要なほど有名になった、雨の中を歌い踊る場面ですが、ここで歌われている"Singin' in the Rain"は、この作品のためのオリジナルではなく、「ハリウッド・レヴィユー」(1929)で既に使われていた曲。そもそも『雨に唄えば』で使われた曲の大半は既発表のもので、曲を決めた後それに合うように脚本が書かれたとのことです。この場面、まるでここだけ別の作品を観ていると錯覚しそうなオーラが漂っていますね。ケリーはこの場面の撮影の後、風邪をひいてしまったとか。そりゃそうでしょう(笑)
このほか、終盤のシド・チャリシーと共演する場面もミュージカルらしい華やかさにあふれていて楽しいですが、個人的に好きなのは、ドナルド・オコナーが"Make'Em Laugh"を歌い踊る場面。歌詞にも「バナナの皮ですべって笑わせろ」などとあるように、オコナーのベタベタ笑いに徹したダンスが楽しい。こんなにもコミカルで、かつシャープな踊りができる人って最近見かけないですね。


『雨に唄えば』はアメリカ公開当初興行的には大ヒットしたものの、アカデミー賞は2部門ノミネート(助演女優賞、ミュージカル映画音楽賞)にとどまるなど作品としてはそれほど高い評価は得られませんでした。その後、TV放送や映画『ザッツ・エンタテインメント』(1974)などの影響で評価が高まり、現在は最高のミュージカル映画とまでみなされるようになりました。日本でアンケートをとれば、『ウエスト・サイド物語』あたりが1位になるのでしょうが、個人的にはやっぱり『雨に唄えば』ですね。何度観ても飽きない不朽の名作です。
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参考 「ジャズ・シンガー」(1927)

雨に唄えば@映画生活

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2017.04.17 Monday | 00:05 | - | - | - |

コメント

皆様あけましておめでとうございます。

このブログを開設してから2度めの正月をむかえることができました。
これも遊びにきていただいた皆様のおかげです。

昨年はちょっと肩に力が入った記事が多かったので、
今年は気楽に読んでもらえるコンテンツを増やしたいな、と考えております。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。
2008/01/03 12:16 AM by moviepad
あけましておめでとうございます、&はじめまして!
正月一発目のトラバが大好きな昔の映画というのはとても嬉しかったです。
吹き替えのギャップというお話で、音多放送以前の日本語吹き替えのギャップのことに思いが行きました。その代表格がコロンボのピーター・フォーク!『グレートレース』をテレビでしか知らなかったので、『ブリンクス』を劇場で観たときのショックといったら!
これからもぜひよろしくお願いします。
2008/01/03 12:32 PM by よろ川長TOM
よろ川長TOM さん、あけましておめでとうございます。

TB張り逃げで失礼しました。

吹替の声はオリジナルとのギャップが激しいとショックですよね。「シンプソンズ」の日本語吹替版の声優キャスティングは、ファンから大ブーイングだったそうですね。

今年はミュージカル映画の名作を記事にしていくことを考えておりますので、たびたびお世話になりそうです。

こちらこそ今後ともよろしくお願いします。
2008/01/03 1:12 PM by moviepad
私も、『ウエスト・サイド物語』よりも断然 『雨に唄えば』が好きですよー。
myミュージカルベスト5にはもちろん入れます。
ジーン・ケリーは暴君だったとは知らなかったー
2008/01/09 1:05 AM by かえる
かえるさん、こちらにもコメントありがとうございます。

>、『ウエスト・サイド物語』よりも断然 『雨に唄えば』が好きですよー。

ですよね〜。『雨に唄えば』は歌よし、踊りよし、映像よし、
(ミュージカルにしては珍しく)ストーリーも面白い。
申し分のない映画です。
個人的に主役の2人よりドナルド・オコナーとジーン・ヘイゲンの演技が好きです。
脇役がいいと作品はグレードアップしますね!

>ジーン・ケリーは暴君だったとは知らなかったー

それぐらい厳しかったから、あれだけの芸を極めたんでしょうね。
名コンビといわれたフレッド・アステアとジンジャー・ロジャースも
撮影中は常に喧嘩腰だったらしいですよ!
ジーン・ケリーはやっぱり偉大なスターだと思います!
2008/01/09 1:40 AM by moviepad

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雨に唄えば
 コチラの「雨に唄えば」は、言わずと知れた名作ミュージカル映画なのですが、実を言うとこの「雨に唄えば」も初めての鑑賞なんです〜(^-^;  もちろんあのどしゃ降りの雨の中タイトル曲「雨に唄えば」をドン・ロックウッド(ジーン・ケリー)が歌い、傘をくるくる
(☆彡映画鑑賞日記☆彡 2008/01/03 10:43 AM)
『雨に唄えば』これを知らずにミュージカルを語るなかれ。
リズムと、ダンスと、恋と、歌!思わず一緒に踊りたくなるワクワクの超傑作ミュージカル!!観ないと一生、損しますよ〜〜!
(よろ川長TOMのオススメ座CINEMA 2008/01/03 12:13 PM)
「雨に唄えば」
またもや「午前十時の映画祭」での名画観賞。今回は、MGMミュージカルの傑作を。
(或る日の出来事 2010/03/14 7:25 PM)

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