映画のメモ帳+α

音楽映画、アカデミー賞関連の記事に力を入れています。
ゾンビ、スタートレック、ヒッチコック監督作、ドキュメンタリー映画のカテゴリーもあり。
映画300字レビュー、はじめました。
※TB、コメントともに承認制とさせていただいております

<< アイ・アム・レジェンド | TOP | その名にちなんで >>

チャプター27

チャプター27(2007 カナダ・アメリカ )

「チャプター27」公式サイトにリンク原題   CHAPTER 27   
監督   J・P・シェファー   
原案   ジャック・ジョーンズ 『ジョン・レノンを殺した男』   
脚本   J・P・シェファー     
撮影   トム・リッチモンド                     
音楽   アンソニー・マリネリ               
出演   ジャレッド・レトー リンジー・ローハン
      ジュダ・フリードランダー アーシュラ・アボット
      
12月8日と聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?
もしこういう質問を一斉にしてみたとします。
一番多い回答は何でしょうか?

“真珠湾攻撃によって、太平洋戦争が勃発した日”だ、他に何がある!
そう思う方も多いかもしれません。
でもひょっとするとこれを上回ってしまうかもしれない回答があります。
それは「ジョン・レノンが射殺された日

このニュースが報道された時の大騒ぎは自分もおぼろげながら覚えています。
当時はジョン・レノンのことは元ビートルズのメンバーであり、最近ソロアルバムを出した程度しか
知らなかったのですが...。ただ、小さいながらもこのニュースのイメージは強烈でした。
最近『PEACE BED アメリカVSジョン・レノン』を観たばかりであり、絶対にこの映画に共感することはないだろうな、と思いつつも観にいってしまったのが、本日ご紹介する映画『チャプター27』。ジョン・レノンの熱烈なファンで、かつサリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』を愛読していたマーク・チャップマンが、ニューヨークに来てジョンを射殺してしまうまでの3日間の軌跡を辿った作品です。

『ライ麦畑でつかまえて』に魅せられて...

ジョン・レノンを殺めてしまったマーク・チャップマンという人物について事前に知っていたことは

・彼が熱心なジョン・レノンファンで、殺害実行直前にジョンからサインをもらっていた その時の写真はここ
・殺害後、逃げることもなく、『ライ麦畑でつかまえて』を手に持っていた。

の2点のみ。興味もなかったし、はっきり言うと彼について知りたいとも思わなかった。
タイトルの『チャプター27』...勘のいい人なら気づくかもしれません。
『ライ麦畑〜』は全26章で構成されています。ということは、ヤツにとって、これがあの小説の続きだというんかい?やめてくれよ!というのが正直な感想であります。『ライ麦畑でつかまえて』はもはや古典となった感もある名作小説。かのマドンナ様も「何度読み返したかわからないわ」とのたまっておられます。ただし、文中にf××kの文字があるため発禁処分を受けたり、このチャップマン事件の4ヵ月後、ロナルド・レーガンを狙撃したジョン・ヒンクリーも愛読していたことから有害図書扱いされたり...。色々と物騒な本であります。そもそも人畜無害な内容では文学作品って成り立たないものなんですけどね。



映画では、『ライ麦〜』の「僕がどこで生まれたかとか、チャチな幼年時代はどんなだったとか...くだんないことから聞きたがるのかもしれないけどさ、実は僕はそんなことはしゃべりたくないんだな」という序文をほうふつさせる台詞からはじまります。チャップマンは『ライ麦〜』の主人公ホールデン・コールフィールドと自分との間には200の偶然の一致(Synchronicity)があると語っているようです。この映画は、『ライ麦〜』がチャップマンに与えた心理的影響に焦点を絞って描いた作品である、と聞いていたのですが実際はそれほどでもありませんでした。
この映画で示されている中では3日ニューヨークで過ごしたこと、クリスマス前の月曜日、セントラル・パークでのアヒルの話(タクシーの中でのセリフです)、娼婦が着ていた緑色のドレス、偽者(phony)などの点みたいです。「映画なんか嫌いだ」というセリフもそうですけどね。実際のチャップマンは、この映画のセリフにも出てくるとおり『オズの魔法使い』が好きだったり、『80日間世界一周 』にインスパイアされて世界旅行に出かけたりしているんですけどね...。東京にも来たみたいですよ。いずれにしても映画を観ただけでは、よほど『ライ麦〜』を読み込んだ人じゃないとほとんど気づかないでしょう。もう少し演出で明確に示してほしかった気がします。類似しているから結局それが何なんだ、という考察もほしいところです。ちなみに『ライ麦〜』を読んだことのある方なら周知のことだと思いますが、この本のタイトルの由来はスコットランド民謡の『Comin Thro' The Rye(ライ麦畑で出逢ったら)』。この歌の歌詞をホールデンが間違って覚えてしまっていたことからこのタイトルがつきました。日本ではドリフターズの『誰かさんと誰かさん』の元歌としてのほうが有名かもしれませんね。その『ライ麦畑で出逢ったら』のイメージ映像がこの映画の中でも何度か挿入されています。あまり効果的な演出とは思えませんでしたが。参考

 チャップマンの映画をつくる意味

観客が知りたいことは言うまでもなく「彼はなぜジョン・レノンを殺してしまったのか?」ということです。
この映画からは

チャップマンは『ライ麦畑でつかまえて』に心酔
インチキ(phony)を嫌う。偽善者は殺せというフレーズに共感
ジョン・レノンは『イマジン』で”想像してごらん。財産などない世界を”と歌っておりながら自分は大資産家である
ジョン・レノンは偽善者だ
殺さねばならない

という図式しか読み取れません。
もちろんこんな単純な理由であるはずはないのですが...。
マーク・チャップマン本人に200時間以上のインタビューを行ったジャーナリスト、ジャック・ジョーンズの『ジョン・レノンを殺した男』を原案としてはいるようですが、彼にアドバイザーとして協力をもとめた形跡もない。監督のJ・P・シェファーはこの映画を撮った理由を
「自分と同じようにジョン・レノンやサリンジャーを愛した人間が殺意を抱くなんてとうてい理解できない。だからその男を追いかける」と語っています。愛と憎しみは表裏一体のものであると考えたことはなかったのでしょうか(^^: また、普段は温厚な自分の友人が「チャップマンが仮釈放されたら、射殺しにいく」と真顔で語ったことにショックを受け、そこまで人の気持ちをゆり動かすジョン・レノン殺害事件に興味をもったことが製作のきっかけだといいます。

もっとも監督は「この映画を撮っても彼がなぜジョン・レノンを殺したかはわからなかった」と語る一方で
「チャップマンは世界に怒りを覚えていた。...ジョン・レノンを殺せば世界中の人たちが悲しむ。よって世界に復讐できる。無意識であるが強いていればそうなるだろう」(公式サイト・監督インタビュー参照)と解釈しているようです。しかし残念ながら映画からはそこまでは読み取れない。この映画は時折『ライ麦畑〜』との相関性を示すアプローチのほのめかしはあるものの、全般的に事実を描くことに終始してしまっている。犯人の得体の知れなさ、薄気味悪さだけが浮かび上がっており、それ以上の要素を映像から読み取るのはかなり困難です。
物議を醸すこと必須のこのテーマ、事実をたどることにはあまり意味がない。そもそも、大多数のジョン・レノンファンは文字通り「コイツのことなど知りたくもない」のです。かのキース・リチャーズさえ「ジョンを殺した人間に対しては憎しみが増すばかり」「オレが必ず撃ち殺す」と発言。チャップマンは刑務所でも”周りが暴動を起こすことを恐れて”ずっと独房だといいます。世界中の憎悪を一身に集めるチャップマン。彼の行動を描くことで、ある程度人々の関心を集めるためには

・『ライ麦畑でつかまえて』という本がいかにチャップマンの心に影響を与えたか?
・あまりにその対象を愛するばかり、同じくらいの(嫉妬交じりの)憎しみがうまれる複雑なファン心理

このどちらかに焦点を絞って大胆な仮説をぶちかますくらいしないと、この"あまりにも歓迎されない"テーマをわざわざ取り上げる意味はないように思います。事実を追うだけのドラマを作るくらいならドキュメンタリーにして多角的な視点を入れたほうがはるかに効果的です。
映画『チャプター27』は「彼はなぜジョン・レノンを殺してしまったのか?」という疑問に明確な答えを示してくれません。事実を淡々と描くことに終始し、「この事件について考えるきっかけになれば」とお茶を濁すことは、この手の映画の常套手段ですが、いやがおうにも注目をひき、敵意を一身に集めるこのテーマでその姿勢は通用しない。単なる事実なんてもう誰も知りたくない。

この映画は、サンダンス映画祭でプレミア上映、その後ベルリン映画祭でも上映されましたが「何の洞察もない空虚な作品」と酷評の憂き目にあっているようです。imdbの情報によると一般劇場公開は世界中で日本がはじめて。アメリカでは2008年3月に公開が予定されているようですが、ジョン・レノンのファンが劇場公開に猛反対しており、ボイコットを呼びかけるサイトまであります。日本での劇場公開も激しく批判されているようです。興味のある方は早めに観ておいたほうがいいかもしれません。
人気blogランキングこの記事が参考になりましたら左のバナーにクリックお願いします!

チャプター27@映画生活


2007.12.17 Monday | 01:17 | 映画 | comments(4) | trackbacks(11) |

スポンサーサイト


2018.06.13 Wednesday | 01:17 | - | - | - |

コメント

こんばんは☆
TBコメントありがとうございますー

うーん、難しいですよね。
実際の殺人者の事を描く、しかもいまも多大なるファンのいるジョンレノンであり
チャプマン本人はまだ生きてるわけですしね。。。。

moveipadさんのいうように
本当のファンはコイツのことなんてどうでもいいと考えるでしょうね。
わたしは単純に、何も知らなかったので興味深かったのですけど、
マスコミ向けパンフを読んだし、
ただ普通に映画を観た、という感想よりは知識が入った上で書いてるかもしれませんね。

2007/12/17 2:00 AM by mig
migさん、こんばんわ

僕もチャップマンについてはほとんど知らなかった...というより知りたくもなかったのですが
この映画を観ても彼の心理状態に全然関心がもてなかったんですね。
なぜジョン・レノンを殺したか?なんて問いは
おそらくチャップマン自身も明確に回答できないのではないでしょうか?
正解のない疑問だとわかっていても、この題材をあえて描くのであれば、
仮説くらいはきちんと提示してほしかったな、と思いました。
2007/12/17 2:20 AM by moviepad
moviepadさん、こんばんは!
本当にこのタイトルからしてイライラさせられますよね。
私も、見たいというより、自分は見なくちゃいけないような気がして見たのですが、「だから何?」っていう映画でした。
ジャレッド・レトって、頑張っているようで、全然作品を選ぶセンスがありませんね。
自分の演技力を試したいだけなんでしょう。
この監督のコメントは、空虚で意味のないものにしか思えません。
人が嫌がることをするのがタブーというもの、それがイコール、センセーショナルと思うなんて良くない風潮ですね。
2007/12/18 12:09 AM by とらねこ
とらねこさん、こんばんわ。

はい、タイトルからしてふざけてますね。

監督は、4年かけて脚本を書いたそうですが
入念なリサーチをしたとは思えないし、
コメントを読む限り、叩けばいっぱい埃がでそうです。

事件当時1歳だったという若い監督だからという
わけではないのでしょうが、この題材をあまりにも軽く考えすぎている。
でなければ、こんな描き方でよし、とはしないはず。
それに、この事件って(いろんな意味で)まだ全然終わっていないんですよ。
チャップマンは現在も服役中だし、過去4度にわたって仮釈放が却下されている。
25年以上たった今もなお、大きな影響力をもっている事件だと看做されているからでしょう。
誰も忘れてはくれない。

ジャレッド・レトも製作にも関わり、30キロも増量する熱の入れようですが、
単なる役者の虚栄心以上のものは感じませんでしたね。
監督もジャレッド・レトも注目を浴びたかっただけ。
悲しくなるくらい空虚な映画でした。
2007/12/18 1:11 AM by moviepad

コメントする









この記事のトラックバックURL

http://moviepad.jugem.jp/trackback/148

トラックバック

チャプター27/ CHAPTER 27
ジョン・レノンが他界して、今年で27年、、、、。 1980年12月8日、 彼は、マーク・デイヴィッド・チャップマンによって射殺された。 とくにビートルズファンってわけではないけど、 最初に洋楽を聴きだしたのはやっぱりビートルズとかビーチボーイズだったんじゃ
(我想一個人映画美的女人blog 2007/12/17 2:01 AM)
チャプター27
 『1980年12月8日ジョン・レノンはなぜ殺されたのか?』  コチラの「チャプター27」は、マーク・デイヴィッド・チャップマンがジョン・レノン殺害に至るまでの衝撃の3日間を描いた12/15公開となった作品なのですが、早速観て来ちゃいましたぁ〜♪  原案となって
(☆彡映画鑑賞日記☆彡 2007/12/17 9:42 PM)
チャプター27
チャプター27 192本目 上映時間 1時間25分 監督 J・P・シェファー 出演 ジャレッド・レト リンゼイ・ローハン ジュダ・フリードランダー 評価 5点(10点満点) 会場 シネクイント  本日は有給とって映画鑑賞。2本見ました。  やっぱ平日の映画館
(メルブロ 2007/12/18 12:00 AM)
#191.チャプター27
サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』が大好きな私にとっては、元々ショックな話だった。ジョン・レノンを暗殺したマーク・デイヴィッド・チャップマンが、レノン殺害時にポッケにこの本があった、この逸話は、その後もしばしばジョン・レノンの死と一緒によく語られ
(レザボアCATs 2007/12/18 12:13 AM)
『チャプター27』
(原題:Chapter 27) -----この映画ってジョン・レノン射殺犯の マーク・デイヴィッド・チャップマンを描いているんだよね。 それにしてもタイトルの意味がよく分からないけど…。 「このチャップマンという男は、 サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』に深い影響を
(ラムの大通り 2007/12/18 12:15 AM)
【2007-183】チャプター27(CHAPTER 27)
人気ブログランキングの順位は? 1980年12月8日ジョン・レノンはなぜ殺されたのか? マーク・デイヴィッド・チャップマンが ジョン・レノン殺害に至るまでの衝撃の3日間 その時、彼が手にしていたのは 「ライ麦畑でつかまえて」と 38口径のリボルバーだ
(ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!! 2007/12/23 6:58 PM)
「チャプター27」を観る
初めて聴いた洋楽は、クィーン?ベイシティローラーズ?エアロスミス? ・・・その多くの人が、もっとその前に聴いた、と思うミュージシャン「ビートルズ」。皆さんファンでなくても、一曲くらい好きな楽曲があるのでは?(わたしは「イエローサブマリン」が好きです)
(紫@試写会マニア 2007/12/23 7:59 PM)
渋谷のシネクイントで「チャプター27」を観た!
映画「チャプター27」チラシ 1980年12月8日、ニューヨーク、ダコタ・ハウス。 ジョン・レノンが5発の銃弾を浴びて殺害された。 犯人はなぜ、彼を殺したのか? 世界中が涙し、歴史に深く刻まれた、ジョン・レノン殺害事件。 偉大なるミュージシャンを世界か
(とんとん・にっき 2008/01/12 9:35 PM)
映画『チャプター27』を観て
105.チャプター27■原題:Chapter27■製作年・国:2007年、カナダ■上映時間:85分■日本語字幕:石田泰子■鑑賞日:12月22日、シネクイント(渋谷)■公式HP:ここをクリックしてください□監督・脚本:J.P.シェファー□原案:ジャック・ジョーンズ□製作
(KINTYRE’SDIARY 2008/01/25 11:27 PM)
チャプター27:ジョン・レノンを殺害した男はどんな人物だったのか?
   鑑賞して、随分時間が経過しました。2008年最初に観た作品です。1980年12月8日、ジョン・レノンは、ある男によって殺害されてしまいます。今でも、その一報がラジオから流れたのをしっかり憶えています。突然のレノンの死に世界中に衝撃が走ったことも
(銅版画制作の日々 2008/05/01 12:28 AM)
チャプター27
ジャレッドの苦労はイマジンできないほどだ! 【Story】 1980年12月6日、ニューヨークを訪れたマーク・デイヴィッド・チャップマン(ジャレッ...
(Memoirs_of_dai 2008/09/03 1:09 PM)

▲top