映画のメモ帳+α

音楽映画、アカデミー賞関連の記事に力を入れています。
ゾンビ、スタートレック、ヒッチコック監督作、ドキュメンタリー映画のカテゴリーもあり。
映画300字レビュー、はじめました。
※コメントは承認制とさせていただいております

<< アンカット・ダイヤモンド | TOP | 1917 命をかけた伝令 >>

第92回(2019年)アカデミー賞

第92回(2019年)アカデミー賞

第92回(2019年)アカデミー賞作品賞「パラサイト 半地下の家族」第92回アカデミー賞trivia
〜外国語映画に初の作品賞〜

第92回アカデミー賞は例年より約2週間早い2月9日に開催された。(2021、2022年は従来どおり2月下旬予定。何で早めたかはよくわかりません(^^;) 作品賞候補9作のうち5作は全米興行収入1憶ドル越え、演技賞候補者は有名スター揃い...にもかかわらず、視聴者数は2360万人。昨年の2956万人から20%の大幅ダウン。2018年の2654万人をもはるかに下回り史上最低記録を更新した。ネット視聴の影響で各授賞式中継の視聴者数は軒並み減少、グラミー賞は6%,ゴールデン・グローブ賞は4%、エミー賞は32%減だったとか。去年、司会者をたてなかったことがスムーズな進行につながり視聴者数アップにつながったため本年度も司会者なしで行われたが、今回はそれが裏目に出たという見方もある。

うーん、本年度に関しては"オンライン視聴の増加"以外に理由は見当たらないですね。"誰も観てない作品ばかりノミネート"、"候補者も知らない人ばかり"という言い訳は今回成り立たない。無理矢理他の理由を探し出すとすれば、本命といわれていた『1917 命をかけた伝令』はヒット作ではあるがスター不在の作品であったこと、作品、監督賞でのサプライズまで下馬評どおりの結果が続き感動が薄かったことか。これに凝りて来年以降、"やっぱり人気映画賞をもうけよう"とか、"外国語映画の受賞はNG”(『パラサイト 半地下の家族』は本命視されていなかったため、本作の受賞が視聴者数激減の理由とは考えにくい)とか 変な方向に走るのはやめてね。オンライン視聴によりTV視聴者数が減るのは時代の流れです。


 助演女優賞は、有力候補といわれていた『ハスラーズ』のジェニファー・ロペスがノミネート漏れしたことで、『マリッジ・ストーリー』で敏腕弁護士を演じたローラ・ダーンが絶対視されていた。ダーンは第64回(1991年)の『ランブリング・ローズ』で主演女優賞、第87回(2014年)『わたしに会うまでの1600キロ』で助演女優賞で候補経験があり、3度目のノミネート。プレゼンターのマハーシャラ・アリが読み上げたのは本命のローラ・ダーン。母ダイアン・ラッド、共演者アダム・ドライヴァーやスカーレット・ヨハンソンとハグをしたあと、ステージにあがった彼女は「最高の誕生日プレゼントになりました。(彼女は2月10日生まれ。アメリカでは授賞式2/9です)。もしヒーローがいるとすれば、私の両親です。両親にオスカーをささげたい」と語る。父(ブルース・ダーン、2度ノミネート)も母(ダイアン・ラッド、3度ノミネート)もなしえなかったオスカー受賞を娘がはたす。客席にいた母、ダイアン・ラッドは涙ぐんでいた。ローラ・ダーンはアカデミー会長に推薦されたことがあるほど(辞退している)業界内の信頼が厚い。『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』(2013)のキャスティングで父ブルース・ダーンが主役を得られるよう監督のアレクサンダー・ペインにしつこく電話をかけ続けたことも知られている。その結果、父は役を得て2度目のオスカーノミネートを受けている。



 助演男優賞、ノミネートの顔ぶれは以下のとおり。

トム・ハンクス 63歳 19年ぶり6回目(2度受賞)
アンソニー・ホプキンス 82歳 12年ぶり5回目(1度受賞)
アル・パチーノ 79歳 27年ぶり9回目(1度受賞)
ジョー・ペシ 76歳 29年ぶり3回目(1度受賞)
ブラッド・ピット 56歳 8年ぶり4回目(受賞なし)

お久しぶりの受賞済大ベテランがずらりと並ぶ。それゆえ唯一受賞歴のないブラッド・ピットが確実視されていた。(俳優としての受賞はなかったが、それでも夜は明ける」(2013)の作品賞プロデューサーとしてオスカーは既にもっている)。アンソニー・ホプキンスとジョー・ペシは授賞式を欠席。助演男優賞は全部門中トップ発表だったためいきなりの候補者2人不在は違和感を漂わせた。プレゼンターのレジーナ・キングが読み上げたのも本命のピット。彼はタランティーノ監督らに感謝し、最後6人に子供たちに愛をささげた。ちなみに、ブラッド・ピットは先日行われた英国アカデミー賞授賞式を欠席。その理由は「(離婚の原因と言われ、疎遠になっていた)息子マドックスと話し合いの機会をもたせてあげる」と言われたからだそう。ブラピを英国アカデミー賞授賞式に出席させたくないアンジェリーナ・ジョリーの陰謀と噂され、同情論が沸き起こっていた。英国アカデミー賞ではマーゴット・ロビーが代理で彼から預かったスピーチを読み上げたが、その内容は英国のEU離脱や王室離脱のハリー王子を自身の離婚にひっかけておちょくったものと解釈され不評。自分で読まなくてよかった?それにしてもスターになる人は運も強いんですね。もしライバルが受賞歴のある大ベテランだらけじゃなければ、あの演技でオスカー...?役はよかったけどね。



 主演女優賞 コマ不足が嘆かれる中、前哨戦では『マリッジ・ストーリー』のスカーレット・ヨハンソンと『ジュディ 虹の彼方に』のレニー・ゼルウィガーの争いとなったが、ゴールデン・グローブ賞、全米俳優組合賞、英国アカデミー賞などの主要賞をゼルウェガーが制し、本命となった。プレゼンターのラミ・マレックが読み上げた名前も本命のゼルウェガー。

レネー・ゼルウィガーは『ザ・エージェント』(1996)でトム・クルーズの相手役に抜擢されて注目を浴び、『ブリジット・ジョーンズの日記』(2001)の激太りブリジット役でブレイク、2001〜2003年まで3年連続でアカデミー賞にノミネートされ、『コールド マウンテン』(2003)で助演女優賞を受賞。その後はキャリアは低迷しはじめ、2010年以降しばらくハリウッドから離れている。ここ10年彼女に関して言えば2014年ごろ別人のような変貌ぶりが話題となりお直し疑惑が乱れ飛んだくらい。
(ゼルウェガーは整形を否定。でもね...)

レニー・ゼルウィガー1 レニー・ゼルウィガー2

もともと美貌よりも親しみやすいルックスで人気を得ていた彼女だけに衝撃が大きかった。その彼女が新たなフェーズに臨んだのはれっきとしたお仕事。伝説のミュージカルスター、ジュディ・ガーランド役であった。『シカゴ』(2002)でミュージカルは経験済みだったが、ジュディ・ガーランドを演じるにあたって、1年間のボイストレーニング、4か月間のリハーサルを経て役にのぞみ、歌もすべて自分でこなした。そして見事受賞をはたす。ステージにたったレニーはジュディ・ガーランドの偉業をたたえるスピーチに終始。スピーチの内容よりも表情!皆が知っているあの、柔和な昔のレネー・ゼルウィガーにほぼ戻っていたことに安堵した人も多かっただろう。キャリアも顔もカムバック



 主演男優賞。前哨戦では『マリッジ・ストーリー』のアダム・ドライヴァーと『ジョーカー』のホアキン・フェニックスがほぼ互角の争いをしていた。ホアキン・フェニックスが全米俳優組合賞、英国アカデミー賞などを制し、本命に躍り出る。ホアキンは過去3度ノミネートされているが、『容疑者、ホアキン・フェニックス』(2010)という偽ドキュメンタリーをつくったり、「俳優なんてかんたん」「役作りのためにリサーチした、なんてインタビューでは答えたけど本当は何もしていない。リサーチしたと答えたほうがかっこいいからね」など俳優業を軽視するような発言を連発。「アカデミー賞なんてクソだ。」といったり(その後「今の自分があるのはアカデミー賞にノミネートされたおかげ」で訂正している)、俳優としての才能は誰しもが認めるが問題児としても知られていた。ゴールデングローブ賞ではFワード連発のスピーチをして物議を醸し、1月10日には気候変動に関するデモ活動に参加し、妨害、迷惑行為で逮捕された。お騒がせぶりは健在だった。だが、ゴールデン・グローブ賞のスピーチ内容は地球温暖化の危機を訴えるまじめなもので、かつ『ジョーカー』の監督トッド・フィリップスに対して「僕は本当にウザい奴だ。耐えてくれてありがとう」と語り、婚約者のルーニー・マーラに対し「ルーニー」と語っただけで言葉につまるかわいらしい面も見せた。
Joaquin Phoenix Drops F-Bombs in 'Joker' Speech at the Golden Globes
逮捕内容もジェーン・フォンダが定期的に開催している抗議活動「Fire Drill Fridays」(政治家が気候変動に対処するための行動をとることを要請する運動)に参加したもの。お騒がせぶりは相変わらずでも内容はまじめなものにシフトしていたため問題ない?プレゼンターのオリヴィア・コールマンが読み上げた名前は本命のホアキン。彼はステージにあがると「演技がなかったら、自分はどうなっていたか分からない。だけど、演技がもたらしてくれたののを声なきものたちへと使う機会だと思っている。愛と思いやりを感情あるすべてのものと環境にとって有益なものに変えていくシステムを創造、発展、実現させていきたい。自己中心的だった自分にセカンドチャンスを与えてくれたことに感謝します。僕が17歳のとき、兄(リバー・フェニックス)がこんな詩を書きました。愛をもって他人を救え。その先に平和がある。ありがとうございました。」リバーに触れたことで映画ファン感涙!?



そもそも「ジョーカー」は製作費7000万ドル。アメコミ映画としては低く抑えらえている。それでも配給元のワーナーは大コケをおそれて、製作費を他社にも負担させリスク分散をしていた。結果として全米興行収入3億ドル、世界興行収入10憶ドルを超えるメガヒット。ワーナーはケチったおかげで儲けが大幅に減るという失態をおかしました。本作の命綱は一にも二にも主演のホアキン。彼が説得力のあるジョーカーを演じることができるかどうかが成功の鍵。ジョーカー役は過去、ジャック・ニコルソン、ヒース・レジャー(アカデミー賞受賞)らが演じた役で彼らと比較されるのも必須。そんな中、彼は期待にこたえ映画会社も予期しなかった?メガヒットに導いた。ホアキンの受賞に異論のある人はいないだろう。

作品賞のプレゼンターに登場したジェーン・フォンダ様が自分の運動に参加してくれたホアキンを守ってくれたのです。
ジェーン・フォンダ ホアキン・フェニックス

 参考 第77回ゴールデン・グローブ賞授賞式でのリッキー・ジャーヴェイスのトーク「今夜受賞したら政治的スピーチは勘弁してくれ。あなたたちは人に説教できる立場にいないんですよ。現実世界のことなんて何にも知らない。君たちのほとんどは学校で勉強した時間はグレタ・トゥンベリより少ないんだから。だから、名前をよばれたら、このたいしたことない賞をもらって、エージェントと神に感謝してとっとと退場してください」Ricky Gervais uses Golden Globes monologue to roast all-things Hollywood

 作品賞監督賞
・前哨戦において作品、監督賞は『1917 命をかけた伝令』、『パラサイト 半地下の家族』、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』の三つ巴の争いだったが、アカデミー賞と投票母体が重なる全米製作者組合賞、全米監督組合賞、英国アカデミー賞を『1917 命をかけた伝令』が制し、本命に躍り出た。『1917 命をかけた伝令』はワン・ショット風の撮影が話題となった戦争映画。有名スター不在にもかかわらず、授賞式当日の段階で全米1憶ドルを突破しておりまだまだ伸びそうな気配。"投票日現在、ヒット中の作品"でありタイミングとしても申し分なし。

特筆すべきは大本命『1917 命をかけた伝令』に弱点がなかったこと。作品賞の行方を占ううえで最重要指標である編集賞で候補漏れしていたが、これはワン・ショット風の撮影が編集していないように見えたのであれば納得。同じくワン・ショット風の撮影が評価された『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014)が受賞をはたした前例から考えても、編集賞候補漏れは『1917〜』に限っては弱点とはいえなかった。(実は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』も編集賞候補漏れしており、こちらは致命的)しいて言えば5年前ワン・ショット風の撮影作品に受賞させたばかりでまた同じような...というのはあったかもしれない。また、監督賞においてサム・メンデスは既に受賞済みであった。だが、これらは弱点と呼ぶほどではなかった。

『パラサイト 半地下の家族』を対抗馬としてあげる声も少なからずあったが、外国語映画という大きな壁があるため声は弱かった。外国語映画は過去一度も作品賞を受賞したことがない。アカデミー賞は世界一のエンタメ賞であるが、根本的にはハリウッド業界内部の賞、つまりアメリカの一映画賞にすぎず、カンヌやベルリンのような"国際映画祭"ではない。よって非英語圏映画に門戸を閉ざしてきた、という批判はもしかしたら的はずれかもしれない。

そのような状況にもかかわらず、作品賞は『パラサイト 半地下の家族』、監督賞も『パラサイト〜』のポン・ジュノの手にわたった。外国語映画がアカデミー作品賞を受賞したのは史上初。歴史が塗り替えられた瞬間だった。『パラサイト 半地下の家族』は作品、監督、国際長編映画賞、脚本賞の4部門を受賞。監督のポン・ジュノは4度ステージにあがることになった。彼のスピーチで一番印象的だったのは監督賞受賞時。「映画を勉強していたとき、「個人的なことを描くことが最もクリエイティブ」という言葉に出会いました。その言葉の主はマーティン・スコセッシ。私はあなたの映画を観て勉強しました。一緒にノミネートされただけで光栄です」。スコセッシは涙ぐみながら満面の笑顔でポン・ジュノに拍手を送った。また、「私の映画がアメリカでほとんど知られていないころから、クエンティンは私の作品をお気に入りリストに入れてくれた」。タランティーノは照れ臭そうにピースサインで返した。



韓国映画『パラサイト〜』が外国語映画初の作品賞に輝いたことで、"ついにアカデミー賞が新しい扉を開いた"という報道を目にする。ノミネート発表時点で"ここ数年で最低の多様性"(演技賞は黒人1人、スペイン人1人、女性監督なし。有力とみなされた非白人候補者はことごとくノミネートもれ...)と批判されたことを考慮したという見方もある。だが、個人的にはそのあたりを考慮して『パラサイト 半地下の家族』が作品賞に選ばれたとは思えない。いわば"特例"に近い印象を持っている。(何せ、去年の作品賞が『グリーンブック』という最悪の選択。アカデミー賞の歴史に残るミスジャッジ。1年でそうそう変わるもんですかね)

『パラサイト 半地下の家族』が作品賞を受賞できた理由は"作品のもつパワーが桁外れに強かった"、これに尽きる。格差社会を描いた社会性、サスペンス、ホラー、アクション、半地下に住むという設定が生み出す独創性、映画におけるありとあらゆるジャンル特性を見事に融合して自然に消化した。この作品なら、娯楽映画好きも社会派映画好きも芸術映画好きもみなとりこめる。『パラサイト 半地下の家族』にはどのジャンル映画を偏愛する人をも巻き込む魔力があった。10年に1本レベルの作品であり、作品力が"外国語映画"という91年間立ちふさがってきた壁をぶち壊すくらい強かったのだ。『1917 命をかけた伝令』も例年なら余裕で受賞したであろう作品。ここ数年の作品賞受賞作にも負けないクオリティゆえ運が悪かったとしかいいようがない。(それにしても『パラサイト〜』でも『1917〜』でもなく『ワンス・アポン〜』を作品賞に選んでいるブロードキャスト映画批評家協会賞などの批評家さんたちはタランティーノへのパラサイト(寄生虫)というか、頭に"映画オタクウイルス"つきの蛆虫がわいているとしか思えない...)

パラサイト アカデミー授賞式



何はともあれ、非英語圏映画がアカデミー作品賞を受賞したという前例を作った意義はとてつもなく大きい。ただ、アカデミー賞が保守性を打ち破ったといえるかは、本年の結果だけでは判断できない。"特例だった"と言われないことを祈るばかりである。本来、"クオリティ"だけで選出されていると信じられるのであれば、英語とか外国語とか男性とか女性とか白人、黒人、多様性...そういう一連のレッテルで語る意味はなく、外国語映画初の受賞は特別なニュースとして扱う必要もない。投票する際、投票者の頭の中に何らかの偏見がよぎりそれが結果に影響する、大部分の人がそう信じているのが今の(おそらくこれからも)現状である。

個人的にも『パラサイト 半地下の家族』の作品、監督賞受賞は極めて真っ当な結果だと思う。非英語圏映画が受賞した歴史的意義というよりは、受賞に最もふさわしい作品がきちんと選ばれたことを素直に喜びたい。

↓この動画、ちょっと変だと思いませんか。途中でブーイング


ブーイングの理由は『パラサイト 半地下の家族』の受賞に対してではなく、スピーチの途中でTV局がマイクのスイッチをオフにして、カメラのスイッチをプレゼンターのジェーン・フォンダに切り替え、TV放送を終わらせようとしたことによるもの。客席にいたトム・ハンクスやシャーリーズ・セロンらが"気にせずしゃべれ"といわんばかりに"アップ、アップ"と手をあげて盛り立てて、話を続けさせた。

 2020/2/20日追記。トランプ米大統領はコロラド州で開いた政治集会において「今年のアカデミー賞はひどかった。韓国とは貿易問題をかかえている。それなのにその韓国映画に最高賞を与えるなんて」と語った。そして「そんなに良かったのか?」と自身は映画を未見であることをのべ、「『風と共に去りぬ』(1939)や『サンセット大通り』(1950)のような作品が受賞すべき。『風と共に去りぬ』を復活させてくれ」と語った。受賞スピーチでトランプの弾劾裁判を支持する発言をしたブラッド・ピットにたいしても「小さくてこざっかしい奴」と罵った。『パラサイト 半地下の家族』の配給会社ネオン(Neon)はツイッターにて「Understandable, he can't read.(彼が作品を嫌いなのは)理解できる。(彼は字幕を)読めないからね」と皮肉った。NEON @neonrated <大統領の立場にある人がこういう発言すると逆に作品の宣伝となるのにね〜。ちなみに日本でも最近、字幕を読めない人(若者)が増えているという話。吹替が多くなってきているのはそういう事情らしい。

 『アナと雪の女王2』から歌曲賞にノミネートされていた"Into the Unknown"。授賞式のパフォーマンスでは1コーラスを本家のイディナ・メンゼルが歌ったあと、2コーラスめを世界各国でエルサの声をつとめた声優たちが登場。それぞれ1フレーズずつ歌った。日本からは松たか子が参加。2番の最初を「どうしてよびつづけてるの」と日本語で歌った。日本人がアカデミー賞授賞式で歌声を披露したのははじめて。着物で歌ってほしかった!?日本人歌手が受賞したことはあるんだけど(ジャズ歌手のミヨシ梅木が「サヨナラ」の演技で第30回(1957年)アカデミー助演女優賞)



その歌曲賞において歴代の受賞曲を中心としたフッテージが流され、その最後に第75回(2002年)歌曲賞を受賞したエミネムがサプライズで登場。受賞曲"lose yourself"を歌い、会場をわかせた。完全なシークレットで事前に情報漏れしたら出演はキャンセルする予定だったという。エミネムは受賞時、会場にいなかった。その後、エミネムは「ここにたどり着くまで、18年もかかってしまった。ごめんよ」とツイートしている。



 Netflixは大躍進。全24ノミネートを獲得し、ディズニーの23、ソニーの20を抑えてスタジオ別ノミネート数トップへ。去年のアカデミー賞記事で"今にノミネート作品はNetflixだらけになる"という趣旨のことを書きましたが、翌年に早くも実現してしまうとは。作品賞(『アイリッシュマン』『マリッジ・ストーリー』)長編アニメ賞(『失くした体』『クロース』、長編ドキュメンタリー映画賞(『アメリカン・ファクトリー』『ブラジル 消えゆく民主主義』)にそれぞれ2本づつ、短編ドキュメンタリー賞(実写)に『眠りに生きる子供たち』、主演男優賞他2部門(『2人のローマ教皇』)の計8作品を候補に送り込んだ。だが受賞は助演女優賞と長編ドキュメンタリー賞の2つのみ。まだまだ壁は厚い?話はそれますが、マーティン・スコセッシ監督『アイリッシュマン』は9部門10ノミネートで受賞ゼロ。スコセッシにとって第75回(2002年)『ギャング・オブ・ニューヨーク』で10部門ノミネート受賞なしに続く悪夢再来となりました。「マーベル作品は映画でない」発言が嫌われた?

 長編アニメ賞において『アナと雪の女王2』がノミネート漏れする波乱があれど、本命は同じディズニーの『トイ・ストーリー4』。前哨戦は総ナメに近く、受賞確実とみなされた。ところが直前に発表されたアニー賞でNetflix配信の『クロース』が7部門、『失くした体』が4部門受賞、『トイ・ストーリー4』受賞なしという衝撃の結果。続く英国アカデミー賞でも『クロース』が受賞をはたし、Netflix配信アニメがディズニーを打ち負かす可能性がささやかれた。結局、アカデミー賞では本命の『トイ・ストーリー4』が受賞。下剋上ははたせなかった。(まあ、『クロース』の監督セルジオ・パブロスはディズニー出身なんですけどね)『クロース』は2DアニメにCGでないライティングを施すという画期的な試みを行った作品。数年前までは技術的に実現不可能だったという。その挑戦的な姿勢に賛同した世界20か国以上のアニメーターがスペインのスタジオに集結して作り上げた作品。当初、企画は映画スタジオに持ち込まれたが"あまりにもリスキー"として却下。Netflixに拾い上げられた経緯がある。これが『トイ・ストーリー4』に勝ったら大事件だったんだけど...。アカデミー賞ノミネート、アニー賞はアニメ映画関係者だけの投票だが、アカデミー賞の本番は全会員による投票。"アニメのプロ"以外の者が投票者の大部分を占めるとなるとメジャー作品が選ばれるのは仕方ないことか。

 有名ブロードウェイ・ミュージカルの映画化で 2019年12月20日に全米で劇場公開された『キャッツ』は、近年稀にみるほど撲滅的な酷評をあびた。"未知の世界のポルノ。FBI介入が必要なほど反社会的"、"ゴキブリの集団。恐怖と忍耐のテスト"、"世代にわたって語り継がれるトラウマ体験"、"脳みそが寄生虫におかされたようだ"、"犬の生誕以降、猫にとって最悪の事件"、"劇場の出口の光をみて幸せって何かを思い出した"ete...。映画をみるより酷評を読んでいるほうが楽しいW。猫が着ぐるみではなく、人の肌に毛皮を合成する「デジタル・ファー・テクノロジー(Digital Fur Technology)」と呼ばれるVFX技術を用いて、本物の猫のようなモフモフ感を表現しようとしたらしいのですが...それが気持ち悪いというのが酷評の主な原因。アメリカでは劇場公開後に一部のVFXを改良し、差し替えが行われる異例事態となった。(日本公開時は最初から改良版)

この『キャッツ』の出演者ジェームズ・コーデンとレベル・ウィルソンが視覚効果賞のプレゼンターとして登場。「私たちほど視覚効果の重要性を理解している人たちはいません」と強烈なコメントを出して会場を爆笑させた。


これに対して視覚効果協会(The Visual Effects Society)が公式サイトで「映画『キャッツ』の酷さが視覚効果のせいだと言わんばかりだ。視覚効果は芸術である。アカデミーが視覚効果をジョークのネタにしたことに失望した。」と抗議声明を出している。
Visual Effects Society Releases Statement About 2020 Oscars

日本では考えられないけど、この種の類、アカデミー賞授賞式ではよくあることでネ。たとえば第51回(1978年)、サミー・デイヴィスとスティーヴ・ローレンスがアカデミー賞歌曲賞にノミネートされなかった有名曲を集めて「ノミネートなんかされなくても」と題したメドレーを歌ったり...(この時もアカデミー音楽部会から苦情がきてます)この程度のことで、アカデミーが視覚効果協会にお詫びする必要はない。人間に幸せホルモン(セロトニン)の分泌を促すといわれる、可愛い可愛い猫チャンをグロステクな怪物として描いた罪の重さに比べたら屁みたいなもの。
『キャッツ』製作陣は世界中の猫に土下座して謝れ!

 メイクアップ&ヘアスタイリング賞カズ・ヒロ(旧辻一弘)さんが4度目の候補入り。『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』(2017)で受賞したばかりですが、今回も『スキャンダル』でシャーリーズ・セロンを別人に化けさせ連続受賞をはたした。カズ・ヒロ氏は2019年3月、改名し日本国籍を捨てている。決めてとなったのは日本の人間関係。「ウィンストン〜」で受賞をした際、「日本を代表して」とか「日本人として初の」というような言われ方をされるのが心地よくないと語っていた。
「日本人は、日本人ということにこだわりすぎて、個人のアイデンティティが確立していないと思うんですよ。だからなかなか進歩しない。そこから抜け出せない。一番大事なのは、個人としてどんな存在なのか、何をやっているのかということ。その理由もあって、日本国籍を捨てるのがいいかなと思ったんですよね。(自分が)やりたいことがあるなら、それをやる上で何かに拘束される理由はないんですよ。その意味でも、切り離すというか。そういう理由です」と語っている(猿渡由紀氏によるインタビュー記事より引用)
人気blogランキングこの記事が参考になりましたら左のバナーにクリックお願いします!

第92回(2019年)アカデミー賞ノミネート一覧

※ ★マークは受賞作品。リンクは当サイト記事もしくはamazon

作品賞
  「パラサイト 半地下の家族
   「フォードvsフェラーリ」
   「アイリッシュマン
   「ジョジョ・ラビット
   「ジョーカー
   「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」
   「1917 命をかけた伝令
   「マリッジ・ストーリー
   「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」   

主演男優賞
  ホアキン・フェニックス  「ジョーカー」   
   アントニオ・バンデラス  「Pain and Glory」
   レオナルド・ディカプリオ  「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」
   アダム・ドライヴァー  「マリッジ・ストーリー」
   ジョナサン・プライス  「2人のローマ教皇

主演女優賞
  レニー・ゼルウィガー  「ジュディ 虹の彼方に」
   シンシア・エリヴォ 「ハリエット」
   スカーレット・ヨハンソン  「マリッジ・ストーリー」
   シアーシャ・ローナン  「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」
   シャーリズ・セロン  「スキャンダル」   

助演男優賞
  ブラッド・ピット  「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」
   トム・ハンクス  「A Beautiful Day in the Neighborhood」
   アンソニー・ホプキンス 「2人のローマ教皇」
   アル・パチーノ  「アイリッシュマン」
   ジョー・ペシ  「アイリッシュマン」   

助演女優賞
  ローラ・ダーン  「マリッジ・ストーリー」
   キャシー・ベイツ  「リチャード・ジュエル」   
   スカーレット・ヨハンソン  「ジョジョ・ラビット」
   フローレンス・ピュー  「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」
   マーゴット・ロビー  「スキャンダル」

監督賞
  ポン・ジュノ  「パラサイト 半地下の家族」
   マーティン・スコセッシ  「アイリッシュマン」
   トッド・フィリップス 「ジョーカー」
   サム・メンデス  「1917 命をかけた伝令」
   クエンティン・タランティーノ  「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」   

オリジナル脚本賞
  「パラサイト 半地下の家族」
   「ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密」
   「マリッジ・ストーリー」
   「1917 命をかけた伝令」
   「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」

"Parasite" wins Best Original Screenplay
   
脚色賞
  「ジョジョ・ラビット」
   「アイリッシュマン」   
   「ジョーカー」
   「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」
   「2人のローマ教皇」

"Jojo Rabbit" wins Best Adapted Screenplay

撮影賞
  「1917 命をかけた伝令」
   「アイリッシュマン」
   「ジョーカー」
   「The Lighthouse」   
   「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」

・"1917" wins Best Cinematography

美術賞
  「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」
   「アイリッシュマン」
   「ジョジョ・ラビット」
   「1917 命をかけた伝令」   
   「パラサイト 半地下の家族」

"Once Upon a Time...in Hollywood" wins Best Production Design

音響賞(録音賞)
  「1917 命をかけた伝令」
   「アド・アストラ」
   「フォードvsフェラーリ」
   「ジョーカー」   
   「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」

"1917" wins Best Sound Mixing

編集賞
  「フォードvsフェラーリ」
   「アイリッシュマン」
   「ジョジョ・ラビット」
   「ジョーカー」
   「パラサイト 半地下の家族」

"Ford v Ferrari" wins Best Film Editing

作曲賞
  「ジョーカー」   
   「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」
   「マリッジ・ストーリー」
   「1917 命をかけた伝令」
   「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け

"Joker" wins Best Original Score

歌曲賞
  "(I'm Gonna) Love Me Again" (ロケットマン
   "I Can't Let You Throw Yourself Away" (トイ・ストーリー4)  
   "I'm Standing With You" (Breakthrough)
   "Into the Unknown" (アナと雪の女王2
   "Stand Up" (ハリエット)

“(I’m Gonna) Love Me Again” from "Rocketman" wins Best Original Song

衣装デザイン賞
  「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」
   「アイリッシュマン」
   「ジョジョ・ラビット」
   「ジョーカー」   
   「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」

"Little Women" wins Best Costume Design

メイクアップ&ヘアスタイリング賞
  「スキャンダル」
   「ジョーカー」
   「ジュディ 虹の彼方に」
   「マレフィセント2」
   「1917 命をかけた伝令」

"Bombshell" wins Best Makeup and Hairstyling

視覚効果賞
  「1917 命をかけた伝令」
   「アベンジャーズ エンドゲーム」
   「アイリッシュマン」
   「ライオン・キング」   
   「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」

音響編集賞
  「フォードvsフェラーリ」
   「ジョーカー」
   「1917 命をかけた伝令」
   「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」
   「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」

"Ford v Ferrari" wins Best Sound Editing

短編賞
<アニメ>
  「Hair Love」
   「Dcera (Daughter)」
   「Kitbull」
   「Memorable」
   「Sister」

Hair Love | Oscar®-Winning Short Film (Full) | Sony Pictures Animation


"Hair Love" wins Best Animated Short Film

<実写>
  「The Neighbors' Window」
   「Brotherhood」
   「Nefta Football Club」   
   「Saria」
   「A Sister」

The Neighbors' Window" wins Best Live Action Short Film

ドキュメンタリー映画賞
<短編>
  「Learning to Skateboard in a Warzone (If You're a Girl)」 
   「In the Absence」   
   「眠りに生きる子供たち」
   「St. Louis Superman」
   「Walk Run Cha-Cha」

"Learning to Skateboard in a Warzone (If You're a Girl)" wins Best Documentary Short Subject

<長編>
  「アメリカン・ファクトリー」
   「The Cave」
   「ブラジル 消えゆく民主主義」
   「娘は戦場で生まれた」
   「Honeyland」

"American Factory" wins Best Documentary Feature

国際長編映画賞
  「パラサイト 半地下の家族」 (韓国)
   「Corpus Christi」 (ポーランド)
   「Honeyland」 (北マケドニア)
   「レ・ミゼラブル」 (フランス)
   「Pain and Glory」 (スペイン)  

"Parasite" wins Best International Feature Film 

長編アニメ賞
  「トイ・ストーリー4」
   「ヒックとドラゴン 聖地への冒険」
   「失くした体
   「クロース
   「Missing Link」 

Toy Story 4" wins Best Animated Feature  

名誉賞
  デビッド・リンチ
  ウェス・ステューディ
  リナ・ウェルトミューラー

David Lynch receives an Honorary Award at the 2019 Governors Awards
Wes Studi receives an Honorary Award at the 2019 Governors Awards
Lina Wertmuller receives an Honorary Award at the 2019 Governors Awards
2020.02.12 Wednesday | 19:00 | アカデミー賞の軌跡 | comments(2) | - |

スポンサーサイト


2020.04.21 Tuesday | 19:00 | - | - | - |

コメント

こんにちは。アカデミー賞の季節ですね。
映画館にはあまり行くことが出来ません(スター・ウォーズすら観ていない(涙))。
体調が良くないので、長時間の映画は難しいのです(最近の映画、長くないですか?)
こちらに楽しくおじゃまさせていただいて映画を観た気分を味わっております。

久しぶりの映画鑑賞なので、いきなり「パラサイト」を観る勇気はなく、(途中リタイヤ覚悟で)リチャード・ジュエルを観てきました。
ずいぶん古めかしい映画だなと感じました。女性の描かれ方も含めて。

これからも、更新を楽しみにしております。
2020/01/17 5:01 PM by パール
パールさん、お久しぶりです!

>スター・ウォーズすら観ていない(涙)
SWの最新作は××。DVDで十分です。

>体調が良くないので、長時間の映画は難しいのです(最近の映画、長くないですか?)

そういうことではないかとひそかに心配しておりました。お大事になさってください。

本当に最近の映画は無駄に長すぎてうんざり。
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」なんて
物語はシンプルなのに2時間40分。
タランティーノは基本的に好きなんですが、
今回は全く好みに合わず地獄のような時間でした。

>リチャード・ジュエルを観てきました。
ずいぶん古めかしい映画だなと感じました。女性の描かれ方も含めて。

「リチャード・ジョエル」はそのような指摘が多いですね。
女性記者がFBI職員に"枕営業"をしようとする場面は事実と異なるとクレームがつき、
アメリカでは炎上中のようです。
題材的には興味深いですし、キャシー・ベイツの演技が見たいので
もしかしたら鑑賞するかも。

今年は作品賞の予想がやや難しいです。
「パラサイト 半地下の家族」
(退屈している暇はありません。体調の良いときにぜひ!)
がふさわしいと個人的には思いますが無理かな。
外国語映画が作品賞をとったことは過去ないし。

自分も最近はあまり映画館に行かなくなりました。
体調がすぐれないのであれば無理に映画館へいかなくてもストリーミングサービスもありますからね。
netflix(最初の1か月は無料。期間内に解約もできる)は便利ですよ。
当サイトで紹介した 「マリッジ・ストーリー」「2人のローマ教皇」「ルディ・レイ・ムーア」はおすすめ。
「アイリッシュマン」もちろん良かったけど3時間29分(^^;
2020/01/17 7:53 PM by moviepad

コメントする









▲top