映画のメモ帳+α

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I Love You,答えてくれ / 中島みゆき

第一印象は、”ロックンローラー・中島みゆき”。

中島みゆきの新作のタイトルは『I Love You,答えてくれ
何とストレートなタイトル。
それにしても、すんごいジャケットですね。
題字は『夜会 VOL.13 24時着 0時発』で共演した三代目魚武濱田成夫
気合が伝わりすぎてこのCD買うのちょっと恥ずかしかった。(笑)

地上の星』の大ヒットでおじさんのアイドルとなって以来、中島みゆきの曲が「癒し系」に傾きつつあった。個人的には"御乱心時代”と呼ばれた頃の、ロック色の強い中島みゆきが好きだったので、少し寂しい思いをしていました。今回は久しぶりに、ガツガツコテコテの中島みゆきが詰まっているーそんな感じのアルバムでした。中島みゆきいわく、新作は
「全曲、見たまま、聴いたまま」
「今回のアルバムは裏もないし、文学部系でもないかも
だそうです。うー、まわりくどい表現の解釈に七転八倒するあの苦しみが好きだったのに(爆)
評価:
中島みゆき,瀬尾一三,中村哲,小林信吾
ヤマハミュージックコミュニケーションズ
¥ 2,460
(2007-10-03)
Amazonランキング: 5669位
Amazonおすすめ度:


イメージ的には、『LOVE OR NOTHING』に近い。
実は『Love〜』は中島みゆきのオリジナル作品で個人的に一番苦手な作品であります。
何故かというとこのアルバムはタイトル通り「100か0か、みたいなアルバム」。中島みゆき作品の中ではかなりストレートなアルバムで、そのメッセージに「ちょっとこれは違うな」と思うことが多かったからであります。『Love〜』で中島みゆき熱がすっかり醒めてしまい、その後も新作が発表されるたびにちゃんと買って聞いていましたが購入後何回か聞くだけでヘビー・ローテーションすることも少なくなっていました。今回、あの時のトラウマよ、もう一度かと思ったのですが、そんなことはありませんでした。
久しぶりにロックなみゆきが聞けた喜びのほうが大きかったので。

最近の中島みゆきは、"シンプルな表現を用いてその言葉の裏側にはりつく重いもの”をリスナーに求めている感があります。若かりし頃は、文学的表現にしびれ、あまりにもストレートな表現に違和感を覚えたりするものですが、それなりに年を重ねていくとむしろストレートでシンプルな表現のほうが胸に突き刺さる。『ララバイsinger 〜人は自ら歌びとになる〜』の記事でも同じことを書きましたが...。

年をとると単にごちゃごちゃした表現が面倒くさくうっとーしい。
そういうことではない。
シンプルな表現の中に、自分の体験等を重ね、イメージを膨らませることができるからだ。
でもその重ね合わせの作業は結構つらい。
難しいことばに酔ってあいまいな空想世界に漂っていたほうが心地よかったりします。
あー、わたくし本日、未熟者♪(笑)

さてそろそろ内容に入りましょう。
1曲目『本日、未熟者』は『宙船(そらふね)』に続いてtokioに提供した曲。

野望はあるか 義はあるか 情(なさけ)はあるか 恥はあるか
あいにく本日、未熟者 わたくし本日、未熟者

悟りを開く、いわゆる”大人”にならなければ
敵は増え、寄辺(よるべ)は消える。

要領よく悟ることができる人、できない人。
世の中にはこの2種類しかないような気がしなくもない。
そして、悟ることのできない”未熟者”たちは
“道なき道をおろおろと探しているんです”
自分のテーマソングにしたいような歌。このアルバムの中で一番好きですね。

2曲目 『顔のない街の中で
アレンジが全体的にJ-WALKの『何も言えなくて・・・夏 』 に似ているのが気になったが、

顔のない街、国、世界の中で
見知らぬ人の命を見知れ

と歌う。
ちなみに同封されている英語詩ではこの”見知らぬ 〜”の部分は

Until you fully realize the value of his life

となっています。

6曲目の『Nobody Is Right
中島みゆき曲にしては珍しく英語のリフレインで始まる、ゴスペルタッチの曲。

正しい人などいないんじゃないか
正しさは道具じゃない

という言葉が強く印象に残る。
この歌の歌詞で「一生」は「1生」と記されている。
誤植ではないと思うが、どういう意味合いだろう?
この2曲はイラク戦争とその後絶え間なく続く紛争をいやでも連想させますね。

4曲目はTV番組『世界ウルルン滞在記”ルネサンス”』のテーマソングになっている『一期一会
2番の”人間好きになりたいために 旅を続けていくのでしょう”という歌詞にどきり。
誰でも(自分自身を含めた)人間不信に陥ることがある。それでも信じられるのは人間だけ。
“見たこともない”ものを求めて、人は旅を続ける=生きていく。
最初聞いたときには、いきなりサビに飛んでいくようなメロディラインに違和感を覚えましたが
聞けば聞くほど言葉とそこから拡がる未知の世界がにじみ出てくるような、スルメ曲です。
もう2度と会うことはないであろう人の顔が次々に思い浮かんでしまう困った曲でもあります。



7曲目の『アイス・フィッシュ
心に壁をつくることの愚かさを問う曲

我を守り、我をかばい、鎧(よろ)うほどの物が中にあるのか

ありません、はっきりいってワタクシには。
この問いかけが他の曲のストレートな歌詞に繋がっているのですね...。
まったく、心に痛く響く歌詞です。

8曲目 『ボディ・トーク
言葉に人1000倍くらいこだわりをもつ中島みゆきが”言葉なんて迫力がない”と歌う...。
戸惑いを覚える人もいるかもしるかもしれない。
もちろんこれは100%そう思って歌っているわけではない。
みゆきサンもインタビューで
「あの歌詞のあとには、(チキショー!)みたいな叫びがあるわけで。(諦めました)じゃなくて。」
"言葉によって伝える挑戦”をひたすら続けているのが中島みゆきである。

11曲めはタイトル曲『I Love You, 答えてくれ
歌いだしが吉田拓郎している(笑)
中島みゆきが一貫して歌う”見返りを求めない愛”を実にわかりやすく表現している曲。

I Love You, 答えてくれ

受けとったと答えてほしいだけさ

うーん自分は受けとったと答えてくれるだけじゃ嫌だな。はい、わたくし明日も未熟者(笑)

今回はボーカルがとてもよい。
最近の中島みゆきの作品はどれもそうなのだが、歌と演奏の一体感が強くまるでライブを聞いているような躍動感がある。「パラダイス・カフェ」という作品で、当時の打ち込み全盛のサウンドに反発して?バンドとの同時録音でレコーディング。公言していないので正確なところはわからないのだが、おそらくそれ以降ずっとそのパターンでレコーディングしているのでは?

最近の曲はアレンジまで出来上がっていて最後に詩をつけるなんてことも多いらしい。
そのためかメロディと歌詞のイメージが著しく異なり、戸惑いを覚えることも少なくない。

中島みゆきは、依頼されたものを除いては歌詞と曲はほぼ同時に作っているようです。
中島みゆき全歌集 」の発売のとき、中島みゆきは全詩ではなく全歌とすることに強くこだわったと聞いたことがあります。
糸井重里氏との対談で、
「言ってみればみゆきさんの歌は、言葉にメロディが内包されているというか….」
という糸井の問いかけに対し、
「言ってみれば百人一首ですよ。言葉だけツルっと読むより、ある種の抑揚をつけたほうが響きもよくなるという点ではね」
と答えています。歌詞が浮かんだ時点でその言葉を的確に表現するメロディは同時に思い浮かぶのでしょう。『I Love You,答えてくれ』は言葉もサウンドもボーカルもすべてひっくるめてロック。見せかけではじまり、見せかけだけで終わっている"ロック”が当たり前のように流れている昨今、この"古いロック”が逆に新鮮に聞こえてくるから不思議です。みゆきさん自身は「どうやって曲を作るんですか?」と質問されるたびに戸惑うようです。「私は、誰がどうやって詞や曲を書いたなんてことには興味がないのね。みなさんはそれを知ってどうするのかなと」

中島みゆきは、新作アルバムを発表するためにわざわざ曲を書き下ろすという作業をおそらくしていない。『I Love You 答えてくれ』の楽曲はすべて前作『ララバイsinger』の製作時点ですでに出来上がっていた曲のようです。アルバムのコンセプトにあわせて2枚のアルバムに振り分けた...。今回のアルバムに根性入ってそうな曲が集まったのはあくまで結果だそうです。

歌唱力があると思う歌手は?などというアンケートが行われたとき、中島みゆきの名前を見かけることがある。えっ?と思ったりします。もちろん下手とは思わませんが、いわゆる”歌唱力がある”という表現とはちょっと違う感じを受ける。
中島みゆきの真骨頂はあくまで歌の表現力。
これは現存する歌手の中では群を抜いているといっていい。

中島みゆきはレコーディングのとき、「さてこの曲はどんな歌い方をしようか」などとはおそらく考えない。作曲の時点でボーカルスタイルまで出来ていると思われる。
どんなに”歌唱力のある”歌手に楽曲を提供したとしても、”みゆきの曲はみゆき本人が歌うのが一番”と評されるのはこの楽曲創作時の"一体感”にあるのではないか、と勝手に思ったりします。
もう死語なのかもしれませんが、中島みゆきは究極の"シンガーソングライター"といえるでしょう。

前述の糸井重里氏との対談で印象的な返答があったので少し長いが引用してみます。
(黄字強調はmoviepad)
「これからの時代はこれが流行する、これが求められると、いろいろ情報を集めて解析し、一歩先んじることは向いていない。それができないのなら私には何ができるのかと思ったとき、速さより遅さだと思い当たったんです。先を急ぐ人たちは、たいてい何かを落としてしまうものだから。笊(ざる)を持って、それを拾っていこうかなと。それを磨こうかなと。」
Web2.0時代、ひたすら情報化社会がすすむ今、中島みゆきの存在はアンチテーゼのようなものなのか?

中島みゆきの新作『I Love You 答えてくれ』は歌詞、メロディ、サウンド、そしてボーカルの一体感にあふれた"古いロック"。“先を急ぐ人たちが落としていったもの”を拾い上げた、中島みゆきの言葉はひたすら重い。

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※ 当記事は『ダ・ヴィンチ 2007年 10月号』の中の、”中島みゆきロング・インタビュー”、と”スペシャル対談 中島みゆき×糸井重里”を主に参照して書きました。なお、この対談の完全版が「ほぼ日刊イトイ新聞」に掲載されています!


2007.10.04 Thursday | 01:19 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0) |

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2017.03.26 Sunday | 01:19 | - | - | - |

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