映画のメモ帳+α

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スタア誕生 (1954)

スタア誕生 (1954 アメリカ)

スタア誕生(1954)原題   A STAR IS BORN
監督   ジョージ・キューカー
原作   ウィリアム・ウェルマン ロバート・カールソン
脚本   モス・ハート
撮影   サム・リーヴィット
作詞   アイラ・ガーシュウィン
作曲   ハロルド・アーレン
音楽   レイ・ハインドーフ
出演   ジュディ・ガーランド ジェームズ・メイソン
     ジャック・カーソン チャールズ・ビックフォード アマンダ・ブレイク

第27回(1954年)アカデミー賞主演男優(ジェームズ・メイソン)、主演女優(ジュディ・ガーランド)、ミュージカル映画音楽、歌曲("The Man That Got Away")、美術監督・装置(カラー)、衣装デザイン賞(カラー)ノミネート

ジュディ・ガーランド。この名前を聞いて最初に思い浮かぶのは『オズの魔法使』(1939)のドロシー役だろう。この映画の中で歌った「虹の彼方へ」はスタンダード・ナンバーとなる。彼女は『若草の頃』(1944)、『イースター・パレード』(1948)など多くのヒットを飛ばし、40年代を代表するミュージカル映画スターとして活躍する。だが、映画での華憐なイメージとうらはら、彼女には多くのトラブルがつきまった。映画スタジオMGMは彼女を酷使するため、撮影時間の合間に睡眠薬、撮影がはじまると中枢神経刺激剤アンフェタミンを与えたため、ジュディは10代から薬物中毒となる。体重増加は薬物依存に拍車をかけた。精神にも異常をきたし、撮影遅刻、出勤拒否を繰り返すようになる。『踊る海賊』(1948)の撮影後、サナトリウム長期入院。その後、自殺未遂事件を引き起こした。『ブロードウェイのバークレー夫妻』(1949)、『アニーよ銃をとれ』(1950)は役を降ろされ、『サマー・ストック』(1950)では、激太りのため撮影は大幅に遅れた。再び自殺未遂をおこし、(1945年に結婚した)ヴィンセント・ミネリ監督とも離婚。『恋愛準決勝戦 』(1951)の出演もかなわなくなり、MGMは彼女を解雇した。その後、ジュディはシドニー・ラフトと3度目の結婚。ハリウッドを離れ、ロンドンやニューヨークでのコンサートを成功させる。そして、ワーナー・ブラザーズのもと、ジュディ・ガーランド銀幕復帰作となったのが『スタア誕生』。彼女の本格的ミュージカル映画出演は本作が最後である。



物語 ネタばれ注意 結末まで記載されています
有名映画スター、ノーマン・メイン(ジェームズ・メイスン)は、ある日クラブで歌うエスター(ジュディ・ガーランド)を見出し、映画出演を勧める。エスターはヴィキー・レスターの名でミュージカル映画に出演、たちまち大人気となる。2人は結婚。エスターの人気がさらに高まる一方、ノーマンは酒浸りで不調続き、ついに映画会社から解雇されてしまう。エスターはついにアカデミー賞を受賞するまでになるが、ノーマンは酔って授賞式に現れ、エスターをビンタするという醜態を演じてしまう。ノーマンの酒浸りはますます悪化。エスターが女優を辞めて彼に尽くすと言っているのを聞いたノーマンはこれ以上彼女の足を引っ張らないように、入水自殺する。エスターはふさぎ込むが、友人に励まされ、ハリウッドのショーに出席。「私はノーマン・メイン夫人です」と挨拶し、喝采を浴びる。

本作は『スタア誕生』(1937)のリメイクである。だが、この1937年版にも実は元ネタがある。『栄光のハリウッド』(What Price Hollywood?)である。1920年代、サイレント時代に活躍した女優コリーン・ムーア、その夫でアルコール依存症だったプロデューサー、ジョン・マコーミック(ムーアとは離婚)、自殺した映画監督、俳優トム・フォーマンの実話に基づいた物語で監督はジョージ・キューカー。実は1937年版も当初、キューカーにオファーがあったが物語が『栄光〜』に酷似していたため断っている。(『栄光〜』は興行的に失敗している)
そしてこの1954年版、またしてもジョージ・キューカーに監督依頼があり、今度は引き受けたというわけ。なんでいつもキューカー?まあ、彼が女性映画に定評があるからでしょうね。その後、舞台をハリウッドから音楽業界に移行し、『スター誕生』(1976)、『アリー/スター誕生』(2018)とリメイクされたのは周知のとおり。何でこの物語がこんなに好まれるの?業界人好みの内幕ものであること、男女ともに感情移入しやすい、とってもわかりやすい物語であること、アカデミー賞が狙いやすい話(1937、1954年版は主演2人ともノミネートされている)だからといったところでそうか。

実はジュディ・ガーランド、1942年、20歳のときに ラジオドラマ"Lux Radio Theatre"でエスターを演じている。ノーマン役はウォルター・ピジョン。LUX RADIO THEATER: A STAR IS BORN - JUDY GARLAND & WALTER PIDEON
これをきっかけに彼女はMGMへこの脚本に関心をもってもらうよう訴えていたようだ。皮肉なことに彼女がこの話に再度、興味をもったのはMGMを解雇された後であった。彼女の(当時の)夫、シドニー・ラフトがワーナーと交渉し、監督ジョージ・キューカー、音楽にはハロルド・アーレンとアイラ・ガーシュインに依頼することになった。ノーマン役はハンフリー・ボガート、マーロン・ブランド、ケイリー・グラント、レイ・ミランド、ローレンス・オリヴィエ、エロール・フリン、モンゴメリー・クリフト、ヘンリー・フォンダ、グレゴリー・ペック、タイロン・パワー、ジェームス・スチュワート、ロバート・テイラー、有名スター俳優にことごとく断られ、最終的にジェームズ・メイソンが引き受けた。ジュディはフランク・シナトラを熱望したが、彼は当時"box-office poison"(客が呼べないスター)とみなされていたため、実現しなかった。

ようやく映画本体の話に入ります。
といっても、この映画の見どころってジュディ・ガーランドのミュージカル場面のみなんです。(^^;
ドラマとしては、本物のオスカー俳優2人が主演を演じた安定感もあり、1937年版のほうが圧倒的に上。本作は従来のミュージカル映画と異なり、ミュージカル場面は散らさず集中して長丁場でやり、ラストでガーと盛り上げたりしないで高揚感ないまま終わってしまうんですね。この映画、当初上映時間181分で制作されたのですが、ワーナーが監督らの反対を押し切って30分カットして公開。1983年にスチール写真をつかった176分版が製作されたのですが...。そもそもこのシンプルなストーリーにこんな長時間必要?ドラマもミュージカル場面も冗長気味で映画としての出来は疑問が多い。本作が名作のような扱いを受けているのはジュディ・ガーランドが最後の輝きを見せた作品だから。

ミュージカル場面としては
 まず冒頭、ハリウッド映画基金募集パーティでジュディ・ガーランド演じるエスターは男性ダンサー2人と一緒にショーに出演。"Gotta Have Me Go with You"を歌い踊ります。そこに酔ったノーマン(ジェームズ・メイスン)が乱入。エスターはその場をうまく取り繕って何とかしのぎます。2人の出会いの場面です。

 続いて深夜のジャズクラブ。エスターは"Gotta Have Me Go with You"(去って行った彼)を歌います。その場に出くわしたノーマンに才能を認められるのですが、"去って行った彼"という曲で認められるのはその後を暗示していますね。ブルース調の曲で、作詞はジョージ・ガーシュウィン亡き後の兄アイラ・ガーシュウィン。作曲は「虹の彼方へ」のハロルド・アーレン。アカデミー歌曲賞にノミネート。この曲はジュディのショウにおいて「虹のかなたへ」に続く第2のテーマ曲として定着している。映画では深夜、曲の練習をしているという設定のせいか、失恋ソングなのに朗々と歌い上げる。でもこれが様になってしまうのがジュディ・ガーランドなんですね。ステージでこの曲を歌うときは、少しだけ(笑)悲しそうです。



 次も大きな見せ場です。ただし、ここはいったん撮影が終わってから追加された場面らしく、アイラ・ガーシュウィン&ハロルド・アーレンの曲ではない、スタンダードナンバーのメドレーとなっています。エスターの初出演映画の中の場面っぽいんですが、ただのステージライブに見える(笑)。決して必要とは思えない場面ですが、見ごたえはたっぷりです。

まずは"Born in a Trunk"(トランクの中で)でいう曲を軸に"I'll Get By"。あなたがそばにいれば何があっても生きていけるという内容で、20年代終わりのミリオンセラー。ミュージカルや映画で使われたわけではない。普通のヒット曲。I'll Get By (As Long as I Have You)

続いては"You Took Advantage of Me ”。ロレンツ・ハートとリチャード・ロジャースの曲。エスターが次々に売り込みをするが断られるというシチュエーションで昔のミュージカル風の映像が楽しい。



次は生活のためにラインダンスをする場面で"The Black Bottom"。ちなみにblack bottomとは1920年代に流行したダンスのこと。こんな感じです。Black Bottom 1926, and The Black Bottom Dance

 次は高級クラブでおハイソな客を相手に歌う曲という設定で"The Peanut Vendor(南京豆売り)”。ザ・ピーナッツがテーマ曲としていたため、聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?ザ・ピーナッツ The Peanuts - The Peanut Vendor

 高級クラブのおっさんからのリクエストで"My Melancholy Baby"を。悲しそうな君...。
ジュディにしては珍しく、とってもお上品。こんなところで歌いたくない?



 メドレーの締めは(最初にも出てきましたが)"Swanee”。ジョージ・ガーシュインが世に出た曲。(作詞はアーヴィング・シーザー)スワニー (ガーシュウィン) 最初はヒットしなかったが、アル・ジョンソンの目にとまり彼が歌ったことで大ヒットした。アル・ジョンスンは映画『アメリカ交響楽』(1945)や『ジョルスン物語』(1946)の中でもこの曲を歌っている。この曲は"女ジョススン"と言われたジュディの持ち歌でもある。

この堂々たる歌いぶりよ!


 このあとは、Arlen and Gershwinによる本映画オリジナル曲が続きます。

レコーディング場面での"Here's What I'm Here For "、ノーマンと2人でラジオを聴いていて、「ヒットチャートNo.1はヴィキー・レスター」と流れてくるが、ノーマンがラジオを消し、「僕は生で聞く権利がある」とせがんだあと歌う"It's a New World "、今日撮影した曲として家の中、ノーマンの前で歌う"Someone at Last "(この場面、ひたすら長くて退屈、華やかなセットを組んで撮ればよかったのに!予算の関係?)、映画撮影場面の中でのコミカルな"Lose That Long Face"と続く。

これら4曲、怖いくらい印象が薄い。"Gotta Have Me Go with You"とメドレーのインパクトが強すぎた!この映画は前半で終わっています(笑)。DVDでは字幕もついていないし(^^;

ジュディ・ガーランドは"劇的な復活"と絶賛され、この年のアカデミー主演女優賞最有力候補とみなされる。ジュディは授賞式に出席する予定だったが、その前日に出産。彼女が受賞したときに備えて病院にはTVカメラが入っており、受賞したらジュディが病室から司会のボブ・ホープに話しかける段取りとなっていた。ところが、オスカーは『喝采』のグレース・ケリーにわたった。グレース・ケリーはこの年5本の主演映画が封切られ、いずれもヒット。MGMと制作会社パラマウントの両方から支援を受けるという好状況。一方、ジュディは本作の撮影期間中、遅刻、欠勤などを繰り返したため、製作費は膨れ上がり、撮影期間は10か月近くに及んだ。ワーナーは怒りをあらわにし、アカデミー賞受賞前に「彼女とは2度と映画を撮らない」と断言。支援どころかネガティブ・キャンペーンに近い態度をとった。かつワーナーそのものが当時、アカデミーと対立していた。メディアでの下馬評は圧倒的にジュディ優勢だったが、裏事情をみるとどうみても彼女は不利。負けるべきして負けた結果だった。ジュディは「もらえないことはわかっていた。もらってもいいはずなのに」と落胆。生まれたばかりの子を見て「この子が私のオスカーね」とつぶやいたという。ジュディはこの時の絶望から立ち直ることができないまま、47歳の若さでこの世を去った。

『スタア誕生』(1954)は映画として冗長気味であまり楽しい作品ではない。ジュディ・ガーランドといえば、スクリーン上では撮影現場や私生活でのゴタゴタを感じさせない、明るく快活な演技をする人ですが、本作ではさすがにゴタゴタがにじみ出ています。年齢的なものもありますが、物語そのものが彼女自身の人生を彷彿させる内容だから。といっても彼女の役ではなく、ノーマン役ジェームズ・メイソンを通して連想させるというややこしさ。

ミュージカル映画全盛期は多くのミュージカル映画スターが活躍しましたが、その頂点はフレッド・アステア、ジーン・ケリー、そしてジュディ・ガーランドであることに誰も異論はないはず。『スタア誕生』(1954)はミュージカル映画スター、ジュディ・ガーランドの最後の輝きを刻んだ作品としてこれからも親しまれていくのでしょう。
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2019.01.16 Wednesday | 00:47 | - | - | - |

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