映画のメモ帳+α

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マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー

マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー (2018 アメリカ)

マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー(2018)原題   MAMMA MIA! HERE WE GO AGAIN
監督   オル・パーカー
原案   リチャード・カーティス オル・パーカー キャサリン・ジョンソン
脚本   オル・パーカー
撮影   ロバート・イェーマン
音楽   アン・ダッドリー
楽曲   ABBA
出演   アマンダ・セイフライド ピアース・ブロスナン コリン・ファース ステラン・スカルスガルド
     クリスティーン・バランスキー ジュリー・ウォルターズ ドミニク・クーパー
     リリー・ジェームズ アレクサ・デイヴィーズ ジョシュ・ディラン ジェレミー・アーヴァイン
     ヒュー・スキナー ジェシカ・キーナン・ウィン アンディ・ガルシア
     シェール メリル・ストリープ

ABBAのヒット曲で構成されたブロードウェイ・ミュージカルの映画化『マンマ・ミーア』。2008年に公開されると全世界興行収入6億ドルを超えるメガヒットとなりすぐ続編の話は持ち上がったが、ABBAの楽曲を使用するというしばりもあり、話はスムーズに進まなかった。それから10年、オリジナルキャストが再結集して続編『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』がやっと完成。公開1か月半にして世界興収は3憶ドル突破し、ABBA人気は今なお健在であることを立証した。



『マンマ・ミーア』続編制作が正式に発表されたのは2017年5月19日。そのあとアマンダ・セイフライドをはじめとするオリジナル・キャストの続投が告知。ソフィーが妊娠し、それと同時に母ドナの若き日の3人の男との恋愛を振り返る内容であること、大御所歌手シェールの出演など詳細が徐々に明らかになってきた。

2017年12年、最初の予告編が公開されるや否や前作のファンから不満の声が沸き上がる。
"これ、もしかしてドナ(メリル・ストリープ)が死んでいるという設定?ありえない。10年待ったのに...”
筆者もこれはありえないと思いましたが...本当でした。前作のヒットはメリルの存在が大きかったのにね。

さて本作の肝は一にも二にもABBAの楽曲です。基本的には前作で使用しなかった楽曲を使うという方針。それはほとんど回想シーンで使われています。

今回、初登場の楽曲は

"When I Kissed the Teacher" (album 『Arrival』(1976)より)
"One Of Us"
"Why Did It Have to Be Me?"(album 『Arrival』(1976)より)
"Kisses of Fire" (album 『Voulez-Vous』(1979)より)
"Andante, Andante" (album 『Super Trouper』(1980)より)
The Name of the Game”(きらめきの序曲)
Knowing Me, Knowing You
"Angel Eyes" (album 『Voulez-Vous』(1979)より)
"I've Been Waiting for You" (シングル"So Long"B面、album 『ABBA』(1975)収録)
"Fernando"
"My Love, My Life" (album 『Arrival』(1976)より)

など。”The Name of the Game”は前作でもソフィの歌で録音され、サントラ盤には収録されているのですが、本編ではカットされていたため、今回初登場。うっ....”One Of Us"しか知らない(^^;。"Knowing Me, Knowing You"もあ、これ聞いたことあるなという程度。アルバム収録曲が多いのでしょうがないか。

それにしても作品の半数以上を占める若きドナの回想シーンはひどくつまらない。
若者のシーンなのに覇気がないし、ドナを演じたリリー・ジェームズをはじめ、全員があまり本人に似ていない。
そもそもドナ(メリル)の目は青なのに、リリーはブラウン...。リリー・ジェームズを若きドナとして見ることができず。話し方も歌い方もくどい。歌はお上手だけど、歌声はABBAの曲にミスマッチ。もっとさらっと歌ってほしかった。残りの男性3人、女性2人も全く魅力なし。歌も今いちで彼らが歌った曲はまったく印象に残らない(曲は粒ぞろいだが、使い方が上手くない)。まあ、いやな予感はしていたんですけどね。PR用に公開されていた"When I Kissed the Teacher"の映像を見たときから...。ダサい、ダサい、ダサい。ダサかっこよくないです。ひたすらダサいのみ。往年のミュージカル映画をほうふつさせるダサさですが、あれはアステアやジーン・ケリーといった芸達者がやるから許されるダサさで....。

"One Of Us"はソフィとスカイが離れて暮らすことを嘆く場面で歌われます。歌うのは実生活で破局したアマンダ・セイフライドとドミニク・クーパー。悪くはないけどひたすら気が滅入る歌い方。そういう曲だからといってしまえばそれまでだけどオリジナルの歌声はクリアだったからなあ...。

Abba - One Of Us


前半、とくに回想場面がひどく退屈でげんなりしてきたころ、ターニャ(クリスティーン・バランスキー)とロージー(ジュリー・ウォルターズ)が"Angel Eyes"を歌いだすと妙にほっとします。そして"ダンシング・クイーン"のメロディにのせてビル、ハリーなどがやってくる。この場面まできてはじめて今自分が『マンマ・ミーア! 』の続編を見ていたことに気づきます。

まあ、大ヒット曲を惜しげもなく使えた前作と本作を比べるのは条件的に酷かもしれません。"Gimme! Gimme! Gimme!"や”Voulez-Vou"のような賑やかし系の曲がないのもダレる原因のひとつ。ここで派手な爆弾をしかける必要があります。起爆剤に選ばれたのがイロモノ超大物歌手シェール!シェール様にご出演いただくのに、マイナーな曲など歌わすわけにはいきませぬ。そこで用意されたのが「悲しきフェルナンド(Fernando)」。ABBAのシングル中、最も売れた曲のひとつで1976年だけで600万枚、現在にいたるまで1000万枚以上売れたといわれています。そんなメガヒット曲がなぜ前作に起用されなかったか?答えは単純明快。歌詞の内容が物語にそぐわなかったからです。

”The roar of guns and cannons almost made me cry"(銃や大砲が鳴り響き、私は泣き叫びそうだった)
"Now we're old and grey Fernando
And since many years I haven't seen a rifle in your hand"
(今や私たちも年老いて白髪交じりとなった。長いことあなたがライフルを手にするのを見たことがない)
”Do you still recall the fateful night we cross”ed the Rio Grande?"
(リオ・グランデ川を渡ったあの運命をかけた夜をまた思い出しているのかい?)
"For liberty, Fernando
Though I never thought that we could lose
There's no regret
If I had to do the same again
I would, my friend, Fernando"
(自由のために戦った。私たちが負けるとは思っていなかったけど、後悔はしていない。また同じ状況に置かれたら、また戦うよ、私の友、フェルナルドよ)

これらの歌詞から米墨戦争(1846〜48)について歌ったものだといわれています。
もともとはアンニ=フリッド・リングスタッドのソロアルバムに収録されており、ABBAのために作られた曲ではなかった。なんでこのような曲をABBAが作ったのかは不明ですが、トランプがメキシコとの国境に壁をつくるなどとのたまう今のご時世に不思議とマッチしてしまいます。まあ、それは偶然でしょう。



シェールが演じたソフィの祖母(つまりドナの母、シェールはメリルより3歳年上なだけですが...)はこの曲を映画に挿入するために作られたキャラクター。シェールが演じることを前提としてた、いわゆる宛てがきだそうです。ちなみにシェールの相手役、つまりフェルナルド役のアンディ・ガルシアはシェール様のご指名によるものだとか!階段をおりながら"Fernando”を歌うシェールの姿は貫禄にあふれています。曲も”deep contralto”と称される彼女の声質にぴったりマッチ。本映画の大きな見せ所となっています。ただ唐突な印象もぬぐえず、映画の中で思ったほど効果をあげていない。はっきりいうとオル・パーカー監督ってミュージカル映画をてがける才能はあまりなさそう。アラン・パーカーが手掛ければよかったのに。

『マンマ・ミーア』続編にシェール出演と聞いたとき、てっきり『バーレスク』(2010)の汚名を返上したいシェールが旧知のメリルを通して頼み込んで出演させてもらったと勝手に思っていました。大御所歌手シェール様がそんなはしたないことするわけありませんね。それどころか...シェールは前作でもターニャ役でオファーを受けたが、整形女の役だったからコンサートツアーを理由に断っていたそうです。今回はシェールの元エージェントで現在、ユニバーサルの社長であるロン・メイヤーがシェールに電話をかけてきて「君はこの役をやるんだ」と言い放って、彼女の返事を聞かずに電話をぶち切ってしまったため、断るに断れなかったとか。

シェールとメリル・ストリープは『シルクウッド』(1983)以来34年ぶり!の共演。かたやハリウッドで数少ない、整形をほとんどしていないと信じられている大女優、かたやお直ししていない箇所はないといわれ、本人も平然と整形を公言しているイノモノ歌手...水と油ほど異なるイメージの2人ですが、意外にも?仲良しのよう。疑う方はこれを見ればわかります。
Cher winning Best Actress for "Moonstruck
シェールの受賞をメリルは飛び上がって喜び、シェールは「最初の映画で私と共演してくれたメアリー・ルイーズ・ストリープに感謝します」と本名で謝辞をささげた。最近の様子はこれ。演技かもしれませんが(笑)。
Meryl Streep Jumps Into Cher's Interview Like The Legend She Is
ちなみに、メリルは「シェールとの共演はこれが最後ということはない」と語っています。何か企画が進んでいるのでしょうか?

シェールといえば奇抜な衣装や発言でついイロモノ扱いしたくなりますが、エンタメ現場での彼女の評価は(当然ですが)異なる模様。何せ半世紀にわたって第一線で活躍し続けているんですからね。それに音楽で成功をおさめ、映画でもアカデミー賞を受賞した人はシェール以外だと、ビング・クロスビー、フランク・シナトラ、バーブラ・ストライザンドくらいか。大御所中の大御所で、レコーディング現場だと若いミュージシャンは彼女を目の前にすると固まらんばかりに緊張しているとか。(シェールが皆を"坊や"扱いしているためという説もありますが)。今回、あのコリン・ファースですら「シェールと初めて会うときはかなり緊張したが、気さくな人だったからよかった」と語っているほど。
ちなみにシェールは本作撮影終了後、ABBAのカバーアルバムの制作を決意。2018年9月28日の発売が決定しています。まあ商魂たくましいこと、伊達に半世紀芸能界で生き残ってるわけじゃない(笑)。

 音源が2曲公開されています。
Cher - GIMME! GIMME! GIMME! (A Man After Midnight) [Official HD Audio]
Cher - SOS [Official HD Audio]
ちなみにアルバムのタイトルは”Dancing Queen"。seventeen〜♪.....怖いよお。でも買ってしまいそ(^^;



映画の話に戻ります。
最後、真打メリル・ストリープ様が亡霊として登場。
歌うは"My Love, My Life"。これが上手いんだな〜。
メリルが歌えることなんて知ってるよと訝しがる人もいるでしょうけど
個人的にはメリルの歌....彼女は”演技として"歌っているから少し臭く感じてた。
今回はさらっと歌っているのでストレートに上手い。こんなに上手いと思わなかった!(失礼)
メリルが演技を志す前はオペラ歌手を目指していたということを思い出させてくれる、美しく優しい歌声でした。

結局、この『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』、上映時間は108分あれど、ラスト、カメオレベルの出演時間で1曲づつ歌ったシェールとメリルの2人が全部持っていっちゃってます。前半が異常につまらなかったのは、この2人を引き立てるための意図的演出だったのでせふか。共演者たちは心の中で舌打ちしてそ(笑)。

本作を見る前も、見終わってからもモヤモヤとした疑問が残りました。
10年ぶりの続編で主要キャストがすべて揃うのは奇跡的なこと。かつキャストの年齢を考えても次はないと思ったほうがよい。なのに彼らの出番が少なく、若者パートをメインにしたのか。こんなの誰が望んだ?前作の支持層ってABBAをリアルタイムで知っている世代より、『マンマ・ミーア』でABBAをはじめて知った若者層のほうが多かったのかな?いろいろ考えてみても結論はひとつ。"ABBAの楽曲のみを使用する"という制約があったから

ドナとサムはその後どうやって暮らしたのか?ドナはなぜ死んだのか?ソフィとスカイの関係は?祖母ルビーとソフィの関係は?物語的には説明されていない疑問がたくさんあります。にもかかわらずそれらを描かなかったのは、あてはめることができるABBAの曲がなかったからでしょう。ABBAの曲を使うとなるとどうしても若者を主役に据えざるをえなくなる。『マンマ・ミーア』にとって何より大事なのは、物語でもキャストでもなくABBAの曲を効果的に使うこと。だからメリルですらカメオ出演にできるのです。

既にある曲、まして多くの人が知っているヒット曲を物語にあてはめる。これがどんなに難しいかはビートルズの曲をミュージカルにした『アクロス・ザ・ユニバース』(2007)をみるとよくわかる。本来、大ヒットして当然の題材なのに興行的にも批評的にも失敗した。それを考えると『マンマ・ミーア』は(いろいろ不満はあれど)うまくやっていると思います。本物のABBA2人(ベニー・アンダーソン、ビョルン・ウルヴァース)が製作総指揮で名を連ねていたことが大きいかもしれませんね。そしてスターを起用するならオーラあふれる超大物に限る。ラストにちょろっと出てもらうだけで、それまでの百難を帳消しにしてくれます。
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2018.09.16 Sunday | 01:26 | - | - | - |

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