リトル・チルドレン(2006 アメリカ)
原題 LITTLE CHILDREN
監督 トッド・フィールド
原作 トム・ペロッタ 『Little Children
』
脚色 トッド・フィールド トム・ペロッタ
撮影 アントニオ・カルヴァッシュ
音楽 トーマス・ニューマン
出演 ケイト・ウィンスレット パトリック・ウィルソン
ジェニファー・コネリー ジャッキー・アール・ヘイリー
第79回(2006年)アカデミー賞主演女優(ケイト・ウィンスレット)、助演男優(ジャッキー・アール・ヘイリー)、脚色賞ノミネート。
俳優出身のトッド・フィールド
の映画初監督作品『イン・ザ・ベッドルーム』(2001)は全編にわたって緊迫感がみなぎる傑作だった。第74回(2001年)のアカデミー賞でも作品賞など5部門にノミネート。主演シシー・スペイセク
の演技は特に絶賛された。そのトッド・フィールドの5年ぶりの監督作品が、この映画『リトル・チルドレン』。トム・ペロッタ
のベストセラー小説の映画化で、作者自身脚色に参加している。『イン・ザ〜』では中年夫婦の危機を描いたが、この『リトル・チルドレン』は"まだ人生のやり直しがきく"年齢である2人の男女を中心に、自分の居場所を探し続ける人々の心模様を綴っていく。
原題 LITTLE CHILDREN 監督 トッド・フィールド
原作 トム・ペロッタ 『Little Children
脚色 トッド・フィールド トム・ペロッタ
撮影 アントニオ・カルヴァッシュ
音楽 トーマス・ニューマン
出演 ケイト・ウィンスレット パトリック・ウィルソン
ジェニファー・コネリー ジャッキー・アール・ヘイリー
第79回(2006年)アカデミー賞主演女優(ケイト・ウィンスレット)、助演男優(ジャッキー・アール・ヘイリー)、脚色賞ノミネート。
俳優出身のトッド・フィールド
〜物語〜
アメリカのボストン郊外の住宅街ウッドワード・コート。サラ・ピアース(ケイト・ウィンスレット)は、企業ブランディングの会社で成功した夫のリチャード(グレッグ・エデルマン)と3歳の娘ルーシー(セイディー・ゴールドスタイン)とともに引っ越してきた。娘を連れて「公園デビュー」に挑むが、”郊外の典型的主婦集団”となかなか打ち解けることができない。彼女たちの関心はひそかに"プロム・キング" (高校の卒業パーティーであるプロムのキングに選ばれそうな男性)と呼ぶ若い男性。彼はブラッド(パトリック・ウィルソン)といい、司法試験合格を目指して勉強中。家計はドキュメンタリー映像作家キャシー(ジェニファー・コネリー)にまかせっきりで主夫状態だった。サラは”典型的主婦集団”を驚かすため、公園に現れたブラッドとハグをしてキスを交わす。そのことがきっかけで、2人はお互いの存在が気になるようになる。そんな中、性犯罪で服役していたロニー(ジャッキー・アール・ヘイリー)の釈放され、街の話題を独占する。ブラッドの友人である元警官ラリー(ノア・エメリッヒ)は子どもたちを守るためにロニーを糾弾するビラを街中に撒いていた。〜
映画の中で有閑マダムたちがフローベールの名作『ボヴァリー夫人
専業主婦と主夫の不倫 − 一歩間違えれば、昼メロワールド一直線のストーリー。その危機を救っているのは主演2人の確かな演技である。
ケイト・ウィンスレット
この作品でのケイトはほとんど笑顔を見せないのだが、それでも今までのどの出演作より美しい。外面的なものではなく、まさに内面からこみ上げてくる美しさだ。日本では『オペラ座の怪人
この2人の役は極端な話、カットしたとしても、物語は昼メロ御用達不倫ドラマとして十分に成り立つ。不必要な役をあえて盛り込んだのはこの2人の役が映画の本当のテーマを内包しているからだ。
"過去は変えられない。未来は変えられる"
映画ラストのモノローグはそう語る。このラストはややご都合主義のキライもあるが、結局は誰も未来を変え切れていない。過去に引きづられずに未来を変えることは口にするよりはるかに難しいのだ。若い2人と違って、ロニーとラリーはちょっとやそっとじゃ封じ込められない過去を抱えて生きている。ロニーは釈放後、幼児たちでいっぱいのプールに飛び込む。"元性犯罪者"の存在に気づいた親たちはあわてて子供をプールから外に抱えだす。ロニーだけがプールで泳ぎ続けている。やがて、ロニーは警察に呼ばれ、プールから追い出される。
「ただ涼みたかっただけなんだ!」
ロニーは叫ぶ。確かに彼は泳いでいただけ。他に何もしていない。"元性犯罪者"ロニーの、真の社会復帰への道のりがはてしなく遠いことを残酷なまでに暗示する。
その彼を必要以上に糾弾し続けるのが、元警察官のラリー。彼を追放することを訴えるビラを街中にばらまき、ロニーの自宅にはまるで高校生のように「EVIL(悪魔)」とスプレーで落書きまでする。映画が進むにつれてラリーの行動は自分の消しがたい過去の過ちの反動であったことがわかってくる。サリーとブラッドの不倫なら、ひとときの過ちとして片付けてしまうことも可能だろう。だが、ラリーやロニーにとって、過去はもちろん未来を変えることはもっと難しい。この"簡単に未来を変えることができない"人々の苦しみを描くことが、この映画の本当のテーマではないかと個人的には思う。「EVIL」と書かれた落書きを必死で消すロニーの母メイ(フィリス・サマーヴィル)の姿が心を打つ。たとえ自分の子供が性犯罪者のレッテルを貼られようが、大スターになろうが、親にとってはただの"自分の子"にすぎないのだ。
この映画の最大の話題はかつての子役スター、ジャッキー・アール・ヘイリー
映画『リトル・チルドレン』は見終わった後、もやもやとした、すっきりしない余韻を観客に残す。それはまさに自分の心の奥底にひそむ「別の人生への渇望」に気づかされたからに他ならない。これを「大人になりきれない」と称するのは、少し違和感を覚える。「別の人生への渇望」は、死ぬまで抱え続ける感情であるはずだから。
・リトル・チルドレン@映画生活


