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街のあかり

街のあかり(フィンランド・ドイツ・フランス)

「街のあかり」公式サイトにリンク原題   LAITAKAUPUNGIN VALOT  
監督   アキ・カウリスマキ   
脚本   アキ・カウリスマキ     
撮影   ティモ・サルミネン                  
音楽   メルローズ               
出演   ヤンネ・フーティアイネン マリア・ヤンヴェンヘルミ
      マリア・ヘイスカネン イルッカ・コイヴラ
      カティ・オウティネン

映画『街のあかり』は監督のアキ・カウリスマキ自ら『浮き雲』(1996)『過去のない男』(2002)に続く敗者3部作のトリを飾ると位置づけている作品です。フィンランドの深刻な経済危機を背景として撮影された『浮き雲』は日本では97年キネマ旬報外国映画ベスト・テン第3位にランクされるほど高い評価を受けました。最近ようやくビデオで見たのですが、あの夫婦のビミョーな距離感がよかったですね。『過去のない男』の銀行強盗シーンは最高でした。『街のあかり』はその名のとおりチャップリンの『街の灯』(1931)へのオマージュもこめられている作品でもあります。



〜物語〜
警備会社で夜警として勤務するコイスティネン(ヤンネ・フーティアイネン)は、仕事を終え、帰りにソーセージ屋に立ち寄って帰るという単調な日々をすごしていた。そんな彼に売店の女性アイラ(マリア・ヘイスカネン)は密かな想いを抱く。"孤独で寡黙な警備員"に目をつけたマフィアは、彼のもとに自分の情婦ミルヤ(マリア・ヤンヴェンヘルミ)を送り込み誘惑させる。ミルヤとの出会いがきっかけでコイスティネンは宝石強盗の濡れ衣をきせられることになってしまう...。

どんなに濡れ衣をきせられようと、チクリもせず言い訳もしない。
またこの男をあたたかく見守るアイラという女性。
いいですね、こーいうの。まさに日本人好みの設定でございます。
小津安二郎監督を敬愛し、お寿司が大好きだというカウリスマキならではのキャラクター設定なのかもしれません。アメリカとかだったらLoser!のひとことで切り捨てられそうなオトコなのに。アキ・カウリスマキ監督は『過去のない男』で第75回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたとき当時、イラク攻撃間近といわれていたアメリカに抗議して授賞式出席を拒否しています。
「我々は、人類の歴史の中でもっとも素晴らしい時を生きているのではないんだ。アメリカ政府が、経済的利益のために非人道的な犯罪を準備している、まさに同じ時期に開催されるオスカーには、私も、私の製作会社の誰も、参加するつもりはない」という手紙をアカデミー協会に書いたとか。

この主人公が唯一笑顔を見せるのが刑務所の中の場面です。
いつか星新一さんのエッセイか何かで読んだことを思い出しました。
「犯罪者の再犯率が高いのは、刑務所ですっかり更生し、出所したとたん、あまりに汚らしい現実に嫌気がさし、刑務所が恋しくなってまた犯罪を犯してしまうのではないか?」
この映画の主人公コイスティネンも刑務所のほうが快適だったんじゃないかと邪推してしまいましたね。

どんな出来事も、当事者が必要以上に騒ぎ立てるからドラマティックに見えるだけだといわんばかりにたんたんとした描写が特徴のカウリスマキ作品。『浮き雲』も『過去のない男』も主人公がどんなに不幸であっても、あまりにもひょうひょうとしているため、それほど悲壮感が漂わずむしろユーモアを醸し出していた。今回の『街のあかり』はちと勝手が違います。孤独な主人公1人の場面が多いため、いやがおうにも画面は重くなる。

『浮き雲』や『過去もない男』も控えめなハッピーエンドが好印象な作品でした。この映画『街のあかり』もほのかな希望を醸し出して終わります。ただし、前2作ほどすがすがしいものではなく、主人公コイスティネンにはこれからも苦難の途が待っていることが容易に想像できてしまいます。ヨーロッパ映画らしい厳しさです。そもそもアキ・カウリスマキ監督の敗者3部作ははじめてのことではなく、かつて、「パラダイスの夕暮れ」「真夜中の虹」「マッチ工場の少女」でやっている。それらの作品群では逆境に追いやられた主人公たちは夢見つつも、それがかなえられることはないという内容だそうです。こちらの3部作は未見なのではっきりしたことは言えないのですが、何か新・敗者3部作最終章にして旧3部作のテイストに戻ってしまったのでしょうか?コイスティネンも希望だけはいつも捨てていません。そこがいいところでもあり、切ない部分でもあります。

僕は、映画ファンを強引にタイプ区分するなら次の2パターンであると思っている。
「ハリウッド映画に代表される浮世離れしたハッピーエンドの映画が好きなヒト」
「↑のような映画をリアリティがないと感じ、やや厳しいエンディングを好むヒト」
不肖ワタクシメは一応後者に属する人間でございます(^^;

映画館で働いていた人から聞いた話です。
おばちゃんと推定されるお客さんから時折こんな電話がかかってくるそうです。
ねえ、今やってる映画ってハッピーエンドなの?ハッピーエンドじゃなきゃワタシ見ないわよ
.....フツーに映画好きなヒトは圧倒的に前者が多いようであります、ハイ(笑)。

この手の作品には珍しく男性1人客が多かったですね。この映画の主人公が置かれた状況を、全くの他人事であると見下せる人もいるかもしれません。まあ、そういう人はまずこの映画観ないでしょうけど(笑)。ただ、そんな"一見幸せな人"はいざ困難にぶつかるとハリウッド映画さながら必要以上にわめき散らしたあげく、雪崩のごとく一気に壊れていく可能性も高いと思います。自分の中の孤独感といかに向き合い、つきあっていくかというのは一生つきまとうテーマであり、ある日突然降りかかってくる性質の問題ではないはずですからね。

映画『街のあかり』はこの世は闇といわんばかりの絶望の中に、ほんの小さな灯りをともしてくれた。
こういう控えめなpossitiveエネルギーのほうが長い目で見ると強い力をもつ。そう信じたいですね!

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街のあかり@映画生活


2007.07.14 Saturday | 21:06 | 映画 | comments(8) | trackbacks(19) |

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2020.08.03 Monday | 21:06 | - | - | - |

コメント

アカデミー賞授賞式出席拒否のエピソードは知りませんでした。
そのコメントの素晴らしさとともにカウリスマキを見直しました。
TBありがとうございました。
2007/07/14 10:09 PM by えい
えいさん、こんばんわ。
いつもTB張り逃げばかりですいません m(_ _)m

このエピソードひとつとってもカウリスマキ監督という人は実直な人なんだなと思います。
こういう人だから、ああいう嘘っぽさを極力排除したような演出になるんでしょうね。
ちと今回は厳しすぎたかも、です(笑)
2007/07/14 10:17 PM by moviepad
こんばんは〜、初めまして。ランキングいつも近いところなのでお名前は存じておりました(笑)


>「ハリウッド映画に代表される浮世離れしたハッピーエンドの映画が好きなヒト」
>「↑のような映画をリアリティがないと感じ、やや厳しいエンディングを好むヒト」

私も後者寄りですが・・どっちも好きです!(笑)というわけで「両方好きな特殊型」も加えてくださいw

この作品、カウリスマキ節はばっちりで楽しめたのですが、ラストがちょっと物足りなかったです。この三部作ではやっぱり「浮き雲」が好きです。
2007/07/15 12:21 AM by baoh
baohさん、こんばんわ

>ランキングいつも近いところなのでお名前は存じておりました(笑)

ははは、目障りなあのブログとして覚えていただいてましたか(爆)
最近は結構まじめに更新しているのですが、もうすぐマイペース更新に戻りますので当方は大幅ランクダウンを余儀なくされるでしょう。
せっかくお近づきになれましたが、はるか彼方引き離されるのはもう時間の問題でございます(笑)

「両方好きな特殊型」ですか!浮世離れも徹底的にやってくれれば僕も好きですけどね(笑)

ラストはね、ちと厳しかったですね。
「浮き雲」のひょうひょうとした味は捨てがたい。ラスト、ハッピーエンドであってもそれまでと全然変わってないように見えましたから(笑)今後もよろしくお願いしますm(_ _)m
2007/07/15 12:55 AM by moviepad
こんにちは、私はハッピーエンドは何故か記憶に残りにくい・・・と言う後者ですね。
寡黙な映画に好感が持てました。この監督のは初めてだったんですが、もっと観てみたいと思います。
2007/07/20 5:07 AM by カオリ
moviepad さん、こんにちはー。
おお、アメリカに抗議してのアカデミー賞授賞式欠席だったんでしたっけ。
酔っ払いだけど、カッコいいカウリスマキ♪
映画は観れば観るほどに、安直に楽観的なだけのハッピーエンドには興味なくなりますねぇ。
2007/07/20 1:06 PM by かえる
カオリさん、こんばんわ!

>私はハッピーエンドは何故か記憶に残りにくい・・・と言う後者ですね

コメディとかSF映画ならまだいいんですが、普通のドラマで強引にハッピーエンドにもってこられると説得力に欠けることが多いため、僕もその手の映画の内容はすぐ忘れます(笑)"あー作り話を見た"という苦い感覚だけが残りがちです。

僕もカウリスマキ作品は3作目なんですが、いつか全作観てみたい監督のひとりです。ユーロスペースで全作上映するらしいですが、フトコロがさみしいので...(泣)
2007/07/20 8:13 PM by moviepad
かえるさん、こんばんわ!

>酔っ払いだけど、カッコいいカウリスマキ

ヤツは酔っ払いなんですか!そんな感じしますけどね(笑)

>映画は観れば観るほどに、安直に楽観的なだけのハッピーエンドには興味なくなりますねぇ。

浮世離れしたハッピーエンド作品を見た後、映画館を出たときの「現実に引き戻され、すっかり我にかえってしまう感触」が僕は苦手です(笑)
2007/07/20 8:31 PM by moviepad

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