映画のメモ帳+α

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ラ・ラ・ランド

ラ・ラ・ランド (2016 アメリカ)

ラ・ラ・ランド(2016)原題   LA LA LAND
監督   デイミアン・チャゼル
脚本   デイミアン・チャゼル
撮影   リヌス・サンドグレン
音楽   ジャスティン・ハーウィッツ
出演   ライアン・ゴズリング エマ・ストーン ジョン・レジェンド
     ローズマリー・デウィット ソノヤ・ミズノ J・K・シモンズ
     フィン・ウィットロック ジェシカ・ロース キャリー・ヘルナンデス
     トム・エヴェレット・スコット ミーガン・フェイ デイモン・ガプトン
     ジェイソン・フュークス ジョシュ・ペンス トレヴァー・リサウアー

第89回(2016年)アカデミー賞監督、主演女優(エマ・ストーン)、撮影、作曲、歌曲(“City of Stars”)、美術賞受賞。作品、主演男優(ライアン・ゴズリング)、脚本、歌曲(“Audition (The Fools Who Dream))、衣装デザイン、録音、音響編集賞ノミネート

うーん、少し困ったことになった。デイミアン・チャゼル監督の新作『ラ・ラ・ランド』がアカデミー作品賞の最有力候補と言われているというニュースを知った時にそう思った。何で困るかというと...実は筆者、デイミアン・チャゼル監督の前作『セッション』(2014)の記事の中で、"何とも荒っぽい力業の映画...この監督、一発屋のニオイがぷんぷんする。こんな力業はそう何度もできるものではない。”と書いてしまっていたからだ。一発屋どころか、アカデミー作品賞!?早めにゴメンナサイするべきか...複雑な思い?を抱えながら、本作を観た。幸か不幸か、印象は前作とほぼ同じ。力の量が大幅に増えていただけ。主体はドラマだが、音楽映画、そして要所にミュージカル場面を交え、すべてのイイトコドリをしようという魂胆。若さですね!エネルギーに満ち溢れてますね!そして今ドキの若者が作った映画らしく、少しあざといですね。

警告!
〜筆者、この映画は嫌いというほどではないのだが、本作に対するメディアの持ち上げ方があまりに気持ち悪いため、結果として悪口だらけの記事になってしまいました。出来の悪い映画とは思いませんが...うーん、個人的好みじゃないんですね、こーいうの。よって、この映画が好きな人、心震えた人、幸福感に満たされた人は以下の記事は読まないでください。前もって警告していますので、クレームは受け付けません(笑)。〜



立ち去るなら今のうち♪→googleトップページ


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 映画オリジナルのミュージカル映画!
本作『ラ・ラ・ランド』が評価されている一番の理由は、舞台の映画化ではなく、映画用のオリジナル作品であること。
物語だけでなく、楽曲も映画用に書き下ろされている。

昨今のミュージカル映画は、ブロードウェイで上演された舞台の映画化ばかりでオリジナルはほぼ絶滅状態。
四十二番街』(1933)なんて映画が好評だったから、舞台化されたんですけどね。遠い遠い昔の出来事。
まあ、オリジナルのミュージカル映画も全くないわけではない。大作系だと『ムーラン・ルージュ』(2001)とか『バーレスク』(2010)。あと曲者監督の作品だと、『世界中がアイ・ラヴ・ユー』(1996 ウディ・アレン監督)とか『恋するシャンソン』(1997 アラン・レネ監督)とか『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2000 ラース・フォン・トリアー監督)とか...。物語だけでなく、楽曲の大半が映画のための書き下ろしとなると『バーレスク』と『ダンサー・イン・ザ・ダーク』くらい。

"ミュージカル映画=ブロードウェイ舞台を原作とした映画"という固定観念が定着したのは『ウェストサイド物語』(1961)あたりから。『ウェスト〜』の大ヒットをきっかけに、ミュージカル映画は往年のノーテンキな恋物語は影をひそめ、ドラマ性を重視したスタイルに変わってきた。ベトナム戦争がはじまり、ノーテンキミュージカルが時流に合わなくなったのも大きかった。その結果、ミュージカル映画はつまらなくなり、衰退していく。

ミュージカル映画ほど好き嫌いがはっきり分かれるジャンルも珍しい。
嫌いな人の理由は
"突然、歌いだしたりするのが気持ち悪い"

...ごもっともでございます(笑)。

ミュージカル映画好きの人でも、さらに2つに分かれるから性質が悪い。
”フレッド・アステア、ジーン・ケリーらが活躍している全盛期のミュージカル"が好きな人と
"『ウエストサイド物語』以降の、ドラマ(多くは悲劇)を主体としたミュージカル"が好きな人...。
今に至るまで後者がメインであることから、後者を支持する人が多いんでしょうね。
ハイ、ワタシはまごうことなく前者であります。
だって、ミュージカル映画って突然歌いだしたりする時点で、もう不自然かつリアリティがないものでしょ。
そこに深刻なドラマやリアリティを持ち込んでどーするの?と単純に思うわけです。
歌やダンス、華やかなセットを強調する場面が多くなると、どうしても映画的な流れが悪くなる。
でも、ミュージカル映画ってそーいうもんでいいんじゃない?
突然歌いだすアノ気持ち悪さに快感を覚えてこそ、はじめてミュージカル好きと名乗れると個人的に思うんですが、違う?

"好き嫌いがわかれる"宿命であるミュージカル映画は公開されると、大体賛否両論にわかれる。
かつ、権利関係、キャスティングなどの関係で、ミュージカル映画は通常の映画より製作に時間がかかることが多い。当然、製作費もかさむ。その割にはあたらない。一時期、ミュージカル映画が絶滅しかかっていたのは、そーいう"ハイリスク、ローリターン"が嫌われたからである。

そういう空気を一変させたのは『シカゴ』(2002)の大ヒット。
『シカゴ』はミュージカル嫌いの人に配慮して、歌が始まる前にまるで演歌の花道のごとく、前説を流すという暴挙に出た。それにより"突然歌いだすのが気持ち悪い"人も抵抗感が薄まり、大ヒットしたというわけさ。
『ラ・ラ・ランド』もミュージカル映画嫌いの人に配慮してドラマメインに作られた作品。だから大ヒット、大絶賛なんです。

本当にオリジナルのミュージカルがやりたかったのなら、もっと曲を増やすでしょう。主役2人以外にもパフォーマンスさせるでしょう。言い換えれば、本作はミュージカル映画嫌いの観客に媚びているんです。実はもっと大きなところに媚びているんですが....。

 『ラ・ラ・ランド』はドラマ主体の映画
そもそも『ラ・ラ・ランド』はミュージカル映画と言えるのか?
ミュージカル場面は冒頭、中盤、そしてラストに、ここが見せ場でございますと言わんばかりに唐突にほおりこむ。
ファーストシーンはダサダサ冗長不要。この高速道路の場面、とろさが目に付く。
あと、ミアと女友達の場面、なんか快活さにかける。
中盤、セブ(ライアン・ゴズリング)とミア(エマ・ストーン)は歌い踊りながら、星空へと飛び立つ。
まあ、何てロマンティックなの!?そのままお星様になっちゃえばいいのにと思ったのは自分だけ?
あと、ミアがオーディションで何かやってみて、と言われ
Audition (The Fools Who Dream)”を愚かな夢追い人と泣きながら歌う。
こんな気持ち悪いオンナ、僕なら落としますね(爆)。



この映画のメインはあくまで自分の店で好きなJAZZを演奏したいセブと女優を目指すミアとのうじうじした、夢追いドラマ。
ジャズを奏で音楽映画の魅力もまぶしたあと、(といってもあまりジャズっぽくない。フュージョンの出来損ないみたい)
冒頭、中盤、ラストにミュージカル場面を挿入!
どうだ、盛りだくさんだ、すごいだろ!新しいだろ!
...別に新しくはありません。欲張ってあれやこれや詰め込み過ぎなだけです。お疲れ様でした、はい。

ミュージカル映画で重要なのはあくまで歌とダンス!
主演のライアン・ゴズリングとエマ・ストーン、歌は今イチだけど演技は上手いです。本当にお上手。
でも、こんな繊細でウジウジした演技、ミュージカル映画で見せられてもね...。
ミュージカル映画の演技なんてテキトーに表情筋動かしとけばいいの!ああ、ファンから怒られそ(^^;



曲は一見よさげだけど、何となくあざといんだよね。ウケ狙いました、みたいなメロディライン。
“City of Stars”も“Audition (The Fools Who Dream)"も同じ曲に聞こえるし。

物語ディテールは『セッション』(2014)同様、もしくはそれ以上にツッコミどころ満載!

・女優志望のミアはオーディションに落ちまくる。仕方なく自分で脚本を書き、ひとり芝居を上演することにする
....カフェのバイトってひとり芝居の舞台使用料が払えるくらいもうかるの?
・そのミアのひとり芝居、酷評されミアは女優の夢をあきらめ田舎に帰った。
ところが、そのひとり芝居がハリウッドのプロデューサーの目にとまり、大作の主演に抜擢される。
その映画の条件は撮影期間3カ月、脚本なし...監督はマイク・リーですか?
ハリウッドの大作で脚本なし...その映画がヒットしてミアはスター女優の仲間入り!
この展開、ワタシには理解不能であります。ありえる?こんなこと。
・金のために魂を売ったはずのセブがいつの間にかセレブの結婚式でピアノを弾くバイトをし、そのあげくに自分の店を持っている。そのあいだ、彼に何があったの?この展開もいきなりすぎて理解ムズカシイネ。

『ラ・ラ・ランド』はドラマを主体とした作りなのに、大事なところを大胆にワープして描く。
ミアはあっさり結婚しているし。WINTERだの季節を示す表示があるが、これ何年にわたる物語なのか?

そもそもこの物語、時代設定はいつなのか?

冒頭、cinemascopeなんて文字が出てくるのをみると50〜60年代ごろかな、とも思えるし
フュージョン全盛期を思わせる場面が出てくるのを見ると、60年後半から70年代ごろかなとも思えるし
a-ha の"Take On Me”(1985)なんて曲が歌われるのを見ると、80年代後半とも思えるし
映画『恋におちたシェイクスピア』(1998)の話もあったなあ....

一体、この映画はいつの時代の物語なんでしょう?
デイミアン・チャゼル監督って物語のディテールはあまり気にしない人なんでしょうね。ノーテンキなミュージカル風味ならま、いいかと思うんだけど、シリアスドラマ仕立てだとね、こういうの、いかがなもんでせふ?意図的かもしれないが、時間感覚がおかしすぎる。"ハリウッドの魔法"なんて褒め言葉をよく見かけたけど、この時間感覚のおかしさは魔法としかいいようがありません。

物語自体もね...
当初、男が成功し女が取り残される。意外と珍しいパターンかと思いきや
その逆のようなシチュエーションが続く。
そして男の妄想(セブがミアと結ばれ、幸せに暮らす)をひととおり描いたあと
2人はそれぞれ夢をかなえたが、結ばれることはなかった....。

どんでん返しもどきを試みたのかもしれないが、この辺りは"え、まだ続くの?ええ加減に終われや!”って感じ。
過去の場面のリプライズもどきが何度も出てくるのは狙いが見えすぎて興ざめ。
ミュージカル映画は物語スッキリ、90分で終わるのが理想と個人的に思っているので
ラストの展開はもううざいのなんのって!

それと...この映画一体誰を意識して作っているのでしょうか?
舞台はハリウッド。セットではなくハリウッドでロケを行っている。
成功のために夢を捻じ曲げる男。
なかなかチャンスがつかめず、自分は才能がないとあきらめかけていた女。
ハリウッドで生きる人なら誰しも一度は経験した感情かもしれない。
そう、これはハリウッドに向けて作った映画なのです。
ハリウッド同志の諸君!わかるでしょ、この気持ち。
だからこの映画を好きになって♪

あと、これも気になりましたね。ジャズなのに黒人が後ろに追いやられている。(アカデミー賞授賞式でも司会のジミー・ケンメルが"素晴らしいことだ。白人がジャズを救った"と皮肉めいて語った)
要はハリウッドの白人に媚びた映画なんです。"過去のミュージカル映画へオマージュを捧げた映画愛にあふれた作品"なんて評を観たけど、"オマージュ=映画愛"なんて発想が短絡的すぎません?本作が愛を捧げたのは映画ではなくハリウッドの人たちにです。ハリウッド万歳!アカデミー賞ちょうだい!

『ラ・ラ・ランド』は「野心的で、しかし白人に媚びたミュージカル」(『WIRED』UK版レヴュー)

『ラ・ラ・ランド』に関してこういう指摘はもっとあってしかるべきだし、
ミュージカル映画らしく?賛否両論となるはずの作品だと思うんだけど
なぜ、大絶賛の嵐?それが一番気持ち悪い。

最初のほうで述べたとおり、筆者は決してこの映画が嫌いなわけではない。あざとさが鼻につき、ディテールに疑問は多々あれど、そこそこ楽しめたのは事実だし。でもメディアの尋常ならざる持ち上げぶりをみればみるほど、心の奥底におさめておくべき黒い感情がわきあがってきて...。メディアの映画評なんて今や映画会社広報の末端機関だし仕方ないか。ああ、淀川長治氏が生きていたら"イヤラシイ、イヤラシイ映画でしたね"と言ってくれただろうに(笑)。『ラ・ラ・ランド』は映画そのものよりも、メディアの過剰な持ち上げぶりが印象に残ってしまった作品。今はこんな映画を持ち上げる時代なんだ....で、この映画の物語設定っていつ?
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2017.09.24 Sunday | 00:00 | - | - | - |

コメント

午前中観てきました。あまりの欲求不満に、帰宅途中レンタルショップに立ち寄りそうになりました(笑)
そして、今、moviepad様の記事を読み、だいぶすっきりしたところです。

ミュージカル映画というには歌に満足できないし、音楽にも…「Take On Me」って必要でした?
高速道路のシーンは青春テレビドラマのパロディかと…
物語は夢を感じられず、中途半端にリアリティかと思うと最後は妄想シーン…
主役の二人の組み合わせもいまいち、インテリアもファッションもパッとしない…エマ・ストーンは高すぎるヒールを履くと姿勢が悪くなって踊りが残念に…

ものすごく嫌いな映画でもないのですが、観終わってもやもや感がすごいです。
なぜ世間では高評価なのか…わかりませんでした(涙)
2017/03/03 2:22 PM by パール
この映画を持ち上げたくなる気持ちってわからなくもないんですよ〜。
ほぼ絶滅しかかっているオリジナルのミュージカル、曲も書き下ろしメイン!
自分は逆に、今、オリジナルのミュージカル映画を作るとこんなものしか作れないのかと軽く失望しました。。

繊細な雰囲気を漂わせていますがよ〜くみるとかなり雑。
歌も音楽もみんな同じに聞こえる。
「シェルブールの雨傘」、「雨に唄えば」、「巴里のアメリカ人」などを引き合いに出す人がいますが、冗談はやめて...(以下省略)

ドラマも音楽映画もミュージカルもやりたい
それぞれのオイシイところを全部ぶちこみたい!
欲張りすぎて全部あざとくみえる。
ただ、積極的に嫌うほどのインパクトもないんですよね〜。

ミュージカルってこだわればこだわるほどマニア寄りになる、賛否両論になるのが当たり前のジャンル。一般受けしすぎたミュージカル映画は概ねつまらない、というのが個人的偏見であります(笑)。
2017/03/03 10:26 PM by moviepad
世間の評価がとても高いのに…なんだかすべてが中途半端に感じられました。

この声でよくミュージカルに出た…とか、踊りも…とか
女は結婚するオチなのね…とか
色々思うことはありますが(笑)…
全部にあざとさを感じてしまう所が、多分一番苦手な所だと思います。
ライアン・ゴズリングから感じるドヤ感も苦手です(>_<)

この映画が(評論家の皆さんも含め)とても高評価なので、自分がなんだかダメ出しされたような気持ちになっている週末でした(涙)。

>往年のノーテンキな恋物語
を観て、しあわせな気持ちになりたい!
2017/03/06 9:29 PM by パール
映画ファンは"過去の名作へのオマージュ"が大好き。
オマージュとか映画愛とかそういうのをうたえば、
同業者も批評家も映画ファンも簡単にイチコロ(笑)

例をあげると
ラスト、映画愛をうたいあげた「ニュー・シネマ・パラダイス」(1988)は大絶賛されましたが
その後、ジュゼッペ・トルナトーレ監督は「明日を夢見て 」 (1995)で「ニュー・シネマ〜」と同じようなオチを使ったのを観て唖然!

その時気づきました。
映画愛とかオマージュとかを前面に出した作品は
同業者、批評家、映画ファンともに確実にウケるテーマを
意図的に狙っただけなんだな、と。

それ以来、過去の名作へのオマージュとか映画愛とか
その類のものをとる若い監督は信用しないよーにしています。

「ニュー・シネマ〜」公開当時、ジュゼッペ・トルナトーレ監督は今のデイミアン・チャゼル監督と同じくらいの年です。

「ラ・ラ・ランド」は一本の映画として冷静に観た場合、こんなに絶賛されるクオリティを兼ね備えているとはとても思えない。
今頃「ラ・ラ・ランド」製作陣は
"狙った通りに事が運んだ。同業者もメディアも映画ファンもちょろい、ちょろい"と高笑いしているでしょう。
2017/03/06 11:27 PM by moviepad

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