映画のメモ帳+α

音楽映画、アカデミー賞関連の記事に力を入れています。
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エクス・マキナ

エクス・マキナ(2015 イギリス)

エクス・マキナ(2015)原題   EX MACHINA
監督   アレックス・ガーランド
脚本   アレックス・ガーランド
撮影   ロブ・ハーディ
音楽   ベン・ソーリズブリー ジェフ・バーロウ
出演   ドーナル・グリーソン アリシア・ヴィキャンデル
      オスカー・アイザック ソノヤ・ミズノ

第88回(2015年)アカデミー賞視覚効果賞受賞。脚本賞ノミネート

エクス・マキナ』は米タイム誌が"2015年の映画第10位"に選ぶなど内容が高い評価を受け、2015年の映画賞をにぎわせたSF映画。特に顕著だったのが米アカデミー賞。1500万ドルという低予算映画ながら、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』、『オデッセイ』、『レヴェナント:蘇えりし者』といった超大作映画を押しのけて視覚効果賞を受賞している。"Ex Machina" winning the Oscar® for Visual Effects ちなみに"エクス・マキナ"とはラテン語のデウス・エクス・マキナに由来し"機械仕掛けの神"という意味。映画『エクス・マキナ』は女性型アンドロイドAva(エヴァ)と若い青年ケイレブの"恋愛実験"を通して、AIはどこまで人間に近づくことができるか、あるいは人間を凌駕してしまうのかを問いかけている作品だ。



物語
世界最大手の検索エンジン"ブルーブック社のプログラマー、ケイリブ(ドーナル・グリーソン)は社内抽選の結果、社長ネイサン(オスカー・アイザック)の自宅を訪問する機会を得る。ネイリブはめったに人前に姿を見せず、人里離れた山荘にこもっていた。ケイリブは恐る恐る彼を訪ねると、女性型アンドロイドエヴァ(アリシア・ヴィキャンデル)に出くわした。ケイリブは、ネイサンが開発した人工知能(AI)の実用レベルのテストに協力するはめになった。ケイリブはエヴァと話をしていくうちにだんだん"彼女"に惹かれていく...

監督はアレックス・ガーランド。ガーランドはヒッチハイク体験をつづった小説『ザ・ビーチ』を出版。それが映画化されたことをきっかけに映画業界と関わりを持つようになり、『28日後…』(2002)、『サンシャイン2057』(2007)、『わたしを離さないで』(2010)などの脚本を手掛けている。プロデューサーのアンドリュー・マクドナルドから「自分にしか監督できない脚本を書いて、自分で監督してみろ」と言われ、本作では脚本だけでなく、監督も手掛けることになった。本作は"機械は知覚を持ちえないのか"という疑問からAIと知覚に関する本を読み漁ってつくりあげた。そのせいか、"娯楽としてのSF映画"とは一線を画し、近未来こういうこともありえるかもと真剣に考えさせられるつくりとなっている。
 参照 欧米でカルトヒットのAI映画『エクス・マキナ』の知っておきたい総ての事


※ 特に参考にしたのはこの本だそうです。


 以下の記事はネタバレしています。未見の方はご注意ください。

この映画の良い点はたくさんある。

まず、ネイサンが住む隠れ家とそのデザイン。
人里離れた山奥、のイメージに合うロケーション場所を欧米から探し続け、たどりついたのはノルウェー北西部のフィヨルド地域。家のデザインもノルウェー建築家によるものだという。このノルウェーのフィヨルドというのは...そう、あのメガヒット映画『アナと雪の女王』をつくるにあたって美術スタッフがリサーチに出掛けた場所でもあります。【ノルウェー】映画「アナと雪の女王」の舞台になった、幻想的な7つの絶景
ロボットのデザインも"どのSF映画とも重ならないようにした"だけあって個性的。人工美、機能美、どこか艶めかしくもあります。

音楽はベン・ソーリズブリーとジェフ・バーロウの手による。優れた映画は皆、そうなのだが作品全般に垂れ流されているわけではなく、適所にポロリ、控えめ。時には優しく、時には軽いノイズのように。作品の緊迫感をさりげなく盛り上げる。うん、やっぱり映画は総合芸術です。このbluebook社の公式ページを見ているだけで何かに捕らわれていくような感覚を覚えます。bluebook

映画の中でケイリブが聞いている曲は英国のシンセグループ、 Orchestral Manoeuvresの"Enola Gay"。エノラ・ゲイって...そうB-29の機名ですね。 映画の中で原爆を開発したロバート・オッペンハイマー博士の言葉が「私は死神となり、世界の破壊者となった」("I am become death, the destroyer of worlds")が引用され、何かが破壊されることをさりげなく暗示します。



ちょっとひっかかる描写もあります。
機密保持の文書にサインさせられ、戸惑うケイリブ君。この手のことは今の時代、ニッポンでも新しい仕事につけばフツーに書かされますが、ケイリブ君は「弁護士が必要だ」と必要以上にうろたえます。うーん、この場面、製作サイドは、終始FBIの監視下におかれたオッペンハイマー博士をイメージしていたのかな。単なる機密保持以上の内容でないと、やや違和感が残る描写であります。

あと、ネイサンが力説するポロックの絵のくだりも今いち説得力を感じなかった。無意識じゃないと書けない、のかね。これをAIにあてはめるとどうなるのか?人間には顕在意識と潜在意識があり、AIはこのふたつをどう区分して取り込むのだろう。コンピューターが理解できるのは顕在意識かなと思ったりするのですが、"否定形を理解しない"潜在意識のほうがコンピューターっぽいなと考えてみたり...。そもそも検索ワードや携帯電話などのハッキングだけで人間の知覚がすべてAIに組み込めるものだろうか?そう、潜在意識とやらも読み込めるのかな。ふと、そんなことをふと考えたりしました。うー、訳わかんなくなりそ。
強いAIと弱いAI

また、エヴァ以前、つまり発展途中のアンドロイドが、ネイサンによる監禁を苦にして自壊する場面が出てきましたが、こういうことはAIの知覚発展の際、起こりうるのかな?首をかしげたくなる描写でしたが、識者からはかんたんに論破されそ。

とはいっても全体的に見れば脚本は練り込まれている。
特に効果的なのは時折起こる停電。
これはネイサンも"原因不明"としており、この停電はエヴァが自発的に起こしている。停電時に起こった出来事はネイサンも把握していない。はたしてこれは本当か?特にネイサンが把握していないというのは...。
また、エヴァの知覚がどの程度まで発達しているのか?ケイリブに本当に恋しているのか?それとも自分が施設を脱出するためケイリブを利用しようとしているだけなのか?AIの知覚はどこまで発達しているのか?これを分析しそこなうとその過程で痛い目にあう

ちなみにこのページでエヴァと会話することができます。
私は怖くなって途中でやめましたが(^^;。AVA v5.9

ケイリブはネイサンによってチューリング・テストの素材として選ばれます。チューリング・テストとは、ある機械が知的かどうか(人工知能であるかどうか)を判定するためのテストのことで考案者は『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(2014)で描かれたアラン・チューニング。「イミテーション・ゲーム〜」には「あなた(=チューリング)が普通じゃなかったから世界は良くなっているのよ」という名台詞が出てきますが、チューリング・テストの結果、AIが世の中に進出してきたら世界は良くなるのでしょうか?

予備知識なしで観ると、"チューリング・テスト"なんて映画のための造語じゃね"なんて思ってしまいそうになりますが、とんでもない!2014年6月7日、スーパーコンピューターの「知能」をめぐるテストが行われ、「13歳の少年」の設定で参加したロシアのスーパーコンピューターが30%以上の確率で審査員らに人間と間違われ、史上初めての「合格者」となったと報道されました。参照 露スパコンに「知性」、史上初のチューリングテスト合格

つい最近でもこんな報道がありました。
映像から音を予測--MITの人工知能が「音のチューリングテスト」に合格
チューリング・テストは、SF娯楽映画の絵空事ではなく、現実に行われていることなのです!

物語としては、機械は恋愛感情をもつことができるのか、人間は機械に恋することができるのか、みたいなテーマのように見受けられます。でもそれは商業的なことを考えた表向きの顔。『エクス・マキナ』はあの『her/世界でひとつの彼女』のような、つまんねえ恋愛ウジウジ話に終始したりしません。

AIは人間の知覚を持てるのか?人間を凌駕する能力を持つことができるのか?
ぶっちげた話、製作サイドは"AIは人間を凌駕する"という視点にたっている。

AIが人間の能力を凌駕する、その分岐点はどの辺なのか?
その分岐点において、AIと人間との関係はどうなるのか?
その分岐点において、人間はAIをまだ制御できるのか?
AIが人間の能力を凌駕してしまった場合、
AIは人間にとって味方なのか、それとも脅威なのか?
AIにとって創造主である人間は神なのか、それとも...。
いわゆるシンギュラリティと言われる問題。
これが映画『エクス・マキナ』の真のテーマだと思う。

これまでAIを描いた映画は数多くありますが、それは"AIが創作者である人間から独立した"後を描いている。
"AIが人間を凌駕する瞬間"にスポットをあてた点で『エクス・マキナ』は画期的だ。

絵空事だと思っているアナタ。↓コレをみてもそう思う?

怖いよ〜、本物のAIでっせ。「人間を破滅させるわ」だって。

実際、科学者の間では2045年問題が真剣に議論されている。
 参照 ・『人工知能』が支配する近未来。 2045年問題。シンギュラリティ(技術的特異点) の危険性
2045年問題 コンピューター・人工知能が人類を越えるとき


 2045年問題を扱っている映画としてはジョニー・デップ主演『トランセンデンス』(2014)がありますが、あまりにも評判が悪いのでまだ観ていません。

映画『エクス・マキナ』は、日本の映画ファンの間でも長らく公開が待たれていた作品、だそうです。
確かに輸入盤DVDがamazonでよく売れていたみたいですね。待ちきれない人たちが買い求めた。
でも...実際、映画館に運ぶと観客の入りはそこそこ、(若者が好みそうな題材なのに)年齢層はかなり高い。
しかも、退屈なのかジャンク・フードを食べる音がちらほら。この静謐な映画で...。

昨今、日本では"泣いた"、"笑った"、"感動した"、"怒った"...SNSでシンプルに感想がかける映画ばかりがもてはやされている。
こんな状況下では、日本人の映画観客の知覚がAIに凌駕される日は時間の問題かもしれませんWWW。

とりとめもなく、だらだらと書いてしまいました。
映画『エクス・マキナ』はアート映画風味の作りですが、多くの問題定義を含み、かつ無限のインスピレーションをくれる、未来社会派映画とでも呼びたくなる映画。(カルト映画ではありません!)SF映画史に残る、というだけでなく、今後AIに関するニュースが飛び込むたびに引き合いに出される映画となっていくでしょう。(それこそ、副腎白質ジトロフィーを語る際、今でも引き合いに出される『ロレンツォのオイル/命の詩』(1992)のように)。絶対に映画館で観ておいたほうがいい作品。"空間感覚"が重要なのでDVDだとねえ...。公開規模も小さいので、『エキス・マキナ』を公開時に劇場で見たことは、のちのち自慢できますよ〜(笑)。それくらい有意義な作品だと思います。必見!
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2016.07.02 Saturday | 20:03 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0) |

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2017.03.12 Sunday | 20:03 | - | - | - |

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