映画のメモ帳+α

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L.A.コンフィデンシャル

L.A.コンフィデンシャル(1997 アメリカ)

L.A.コンフィデンシャル(1997)原題   L.A. CONFIDENTIAL
監督   カーティス・ハンソン
原作   ジェームズ・エルロイ
脚本   ブライアン・ヘルゲランド カーティス・ハンソン
撮影   ダンテ・スピノッティ
音楽   ジェリー・ゴールドスミス
出演   ラッセル・クロウ ガイ・ピアース ケヴィン・スペイシー
      ジェームズ・クロムウェル キム・ベイシンガー ダニー・デヴィート
      デヴィッド・ストラザーン ロン・リフキン マット・マッコイ
      ポール・ギルフォイル サイモン・ベイカー=デニー グレアム・ベッケル
      パオロ・セガンティ アンバー・スミス ブレンダ・バーキ

第70回(1997年)アカデミー賞助演女優(キム・ベイシンガー)、脚色賞受賞。作品、監督、編集、撮影、音楽(オリジナルドラマ)、美術、音響賞ノミネート

『タイタニック』さえなければ....おそらく、ジェームズ・エルロイ原作、カーティス・ハンソン監督の『L.A.コンフィデンシャル』はこの年のアカデミー作品賞を受賞していただろう。何しろ、1997年の映画賞レースにおいて作品賞をほぼ総ナメしていたからである。だが、満を持して年末に公開された『タイタニック』が記録的大ヒットとなり、本作の受賞は助演女優賞、脚色賞の2部門のみという地味な結果に終わった。ただ、面白いのはアメリカでの大絶賛をよそにヨーロッパでは比較的醒めた評価だったこと。アカデミー賞に先立ち、第50回(1997年)カンヌ国際映画祭にもコンペンション部門に選ばれていたのだが、たいして話題にもならず無冠に終わった。(この年のカンヌはお世辞にも豊作とは言えなかったのに...)作品評価に関してアメリカとヨーロッパの"温度"が微妙に違う。作品を見終われば、何となくその理由がわかる。そういう意味でも興味深い映画である。



物語
53年末、ロサンゼルス。ダウンタウンのコーヒーショップで元刑事を含む6人の男女が惨殺される。殺された刑事の相棒だったバド(ラッセル・クロウ)は、殺された女と一緒にいたリン(キム・ベイシンガー)に接触する。リンはハリウッド女優に似た女を集めた「白ユリの館」という店の高級娼婦だったが、2人はやがて恋に落ちる。出世のためなら手段を択ばないエド(ガイ・ピアース)もこの事件の捜査をすすめるがやがてバドと対立。エドはベテラン刑事のジャック(ケビン・スペイシー)に協力を求める。ジャックは『LAコンフィデンシャル』というタブロイド誌記者シド(ダニー・デヴィート)と結託して、刑事ドラマ『名誉のバッジ』のアドヴァイザーも務める狡猾な男だった。事件は街のボス逮捕後の縄張りをめくる利権争いがからんでおり、何と犯人はバドらの上司であるダドリー警部(ジェームズ・クロムウェル)だっが。ジャックはダドリーの自宅を尋ねるが、あっさり殺されてしまう

この映画が評価されている点は
★ 50年代のロサンゼルスが細部にいたるまでよく描かれている。
(ロサンゼルスは最も都市化が進んだ街で、それとともに凶悪犯罪も増加した。こんな時代では大戦から帰国した男たちは警官になるか、ギャングになるかしかなかった。チャンドラーの小説でたびたび描かれている)
★ ジェームズ・エルロイの原作を大胆に脚色。だが、エッセンスはしっかり残してある。
★ 俳優たちの見事なアンサンブル演技(賞レースでは主要3男優は票が分散したのか、ほとんどノミネートされておらず、紅一点的存在のキム・ベイシンガーに作品支持票が集中した)
★ ストーリーの面白さ、50年代の音楽をうまく使ったジェリー・ゴールドスミスのスコア

L.A. Confidential (1997) Theme


こんなところのようだ。興味深いのはハリウッド女優似の女を集めた「白ユリの館」という娼館。こういう場所が実在したのかはわからない。また、テレビの刑事ドラマ「名誉のバッチ」はTVシリーズ「ハイウェイ・パトロール」もしくは「ドラクネット」あたりがモデルらしい。

「サリヴァンの旅」(1941)や「奥様は魔女」(1942)などで知られるヴェロニカ・レイク似の高級娼婦を演じたキム・ベイシンガーはまさにハマリ役。美貌、存在感、ゴージャスさはこの役にぴったりだ。カーティン・ハンソンは「この役はキム・ベイシンガーを想定して書いた。そのため、原作では29歳だったリンの年齢を引き上げた」男だらけの物語だけに彼女が出てくるだけで"強烈な華"をまき散らす。

似てる!?
ヴェロニカ・レイク  キム・ベイシンガー

オファーがあったとき、ベイシンガーは育児休暇中だった。"セクシー女優"のイメージをどうしても脱却したかった彼女は当初、「娼婦の役なんて絶対やらない!」と拒否していたという。エージェントから「ちゃんと脚本を読め」と説得され、ようやく受諾。その結果、アカデミー賞助演女優賞を受賞。娼婦の役はアカデミー賞をとりやすいってベイシンガーは知らなかったのかな(笑)。カーティン・ハンソンは「キム・ベイシンガーがアカデミー賞をとったことが生涯最高の出来事」とご満悦。単なるファンか?のち、「8mile」で主演のエミネムから「自分の母親役にはちゃんとした女優を使ってほしい」とリクエストされ、カーティスはベイシンガーをキャスティング。見事なダメ母で、オスカー女優が演じるような役ではないのだが、ベイシンガーも"オスカーをくれた恩人"の依頼は断れなかったか...。

 以下の記事はネタバレしています。未見の方はご注意ください。

物語は、粗野だが女性に暴力をふるうことを許さないバド(ラッセル・クロウ)と出世欲だけで生きているようなエド(ガイ・ピアーズ)の2人を対照的に描くことで進んでいく。その性格形成にはともに父親の強い影響がみられる。

バドは12歳のとき、父親が母親にすさまじい暴力をふるうのを見たことがトラウマとなり、女性に暴力をふるう男が許せない。
エドはエリート刑事の父親を持ち、父を超えることを目標とする。「君にできるかな」と言われるのを無視し、刑事課を希望。
「父やあなた(ジェームズ・クロムウェル演じるダドリー)とは違うタイプの刑事を目指します」と意気込み、エリートで殉職した父を強く意識する。

バドとエドはまさに水と油。お互い反発しあう。それは相手が"自分には絶対にないもの"を持っているから反発するのであり、
逆に言えば、深層意識のなかで相手を認めてしまっている。
それゆえ、バドが事件の鍵をにぎるリンと関係しているとしったエドは、対抗意識ゆえ彼女を犯すのである。

不正をおかしたダドリーを殺し、"キャリアを棒にふった"はずのエドだったが、警察が不正を隠すため、ダドリーを"名誉の殉職"に祀りあげようとすると"自分も祀りあげて処理せよ"という。悪運の強い男というのはどこの社会にもいるもの。一連の出来事でエドはある意味、改心したようにも思えたが本質は変わらない。

エドとバドの別れは、まさにラブシーンのようだ。
一連の出来事は、お互い父親によって形成された脅迫概念のようなものを、ほんの少し和らげた。
それゆえ、(本人たちは絶対に認めないだろうが)、彼らの意識の中でお互いが"愛しい存在"になっているのだ。

原作には他にいろいろな人物が登場するが、かなり大胆にカットしている。
また、ケヴィン・スペイシー演じるジャック刑事、原作では生き延びているのだが本作では"名誉の殉死"扱い。
これらのカット具合からみても、映画ではエドとバドの人間関係を軸に物語を紡いていったことがわかる。

そしてこの2人を見透かしているリンが原作以上のキーパーソンとなっている。
ラスト、リンがエドに向かって言う。「また、出世に利用したのね」(原作にない台詞)
このときのリンのうっすらニヤけた口元がなっともいえない。
そして「世界を手に入れる人もいれば、元娼婦を手に入れてアリゾナに行く人もいる」
原作ではさらに「あなたは前者のほう。でもあなたをうらやましいとは思わない。あなたの良心には血がついているもの」
と続くのだが、映画ではここをカットしている。
こういう、結論めいた台詞を言わせなかったことが映画の余韻を深めている。

ピンチすら出世に利用したエドと、リンを手に入れてアリゾナに向かうバド。どちらが正しくてどちらが幸せなのか。
正解はない。個人の価値観の違いにすぎないことを滲ませる。

『L.A.コンフィデンシャル』は何ともほろ苦い男のドラマ。エドとバドの中間のような人はいないものか。
いても中途半端に埋もれてしまうだけなのか。
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2016.06.20 Monday | 00:06 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0) |

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2017.12.12 Tuesday | 00:06 | - | - | - |

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