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毛皮のエロス/ダイアン・アーバス 幻想のポートレイト

毛皮のエロス/ダイアン・アーバス 幻想のポートレイト(2006 アメリカ)

「毛皮のエロス/ダイアン・アーバス 幻想のポートレイト」公式サイトにリンク原題   FUR: AN IMAGINARY PORTRAIT OF DIANE ARBUS  
監督   スティーヴン・シャインバーグ   
原作   パトリシア・ボズワース  
脚色   エリン・クレシダ・ウィルソン       
撮影   ビル・ポープ                   
音楽   カーター・バーウェル               
出演   ニコール・キッドマン ロバート・ダウニー・Jr
      タイ・バーレル

芸術家の伝記映画は数多くあります。成功と挫折、創作上の苦しみ、浮気…芸術家の人生はハチャメチャなことが多いですが、あまりにも似たようなパターンが多く、食傷気味。(特に画家もの)映画『毛皮のエロス/ダイアン・アーバス 幻想のポートレイト』はそんなありがちな伝記映画の語り口を拒否し、ダイアン・アーバスが写真家の助手からアートに目覚め、にフリークスたちを被写体に据え、伝説の写真家ダイアン・アーバスに変わるまでの内面の変化に焦点を絞って描いた映画です。

〜物語〜
1958年のニューヨーク。ダイアン・アーバス(二コール・キッドマン)は夫のファッション・カメラマン、アラン(ダイ・バーレル)のアシスタントとして働きながらも自分の生活に居心地の悪さを感じていた。ある日、夏にもかかわらず全身をコートとマントで覆い、目だけをくりぬいたマスクを被った男ライオネル(ロバート・ダウニー・Jr)が隣に引っ越してくる。この男の異形に心奪われたダイアンはカメラを片手に彼の部屋のベルをならす….〜

「わたしが最初にたくさん撮ったのはフリークスだった」
ダイアン・アーバスの、ある写真集はこういう書き出しではじまるそうです。
ファーストシーン、ヌーディストカップルの家を訪れる場面はそのことを端的に表現しているのでしょう。
かなりふくよかな体形で、お世辞にも魅力的とはいいがたいお2人。
アートとは他人とは違うところに美を見出すことから始まるのですね!ファッション・カメラマンの夫のアシスタントとして、さんざん商業的な人工美を撮り続けてきた反動なのかもしれません。
「何故あなたは脱がないの」
同じセリフは、ライオネルからも言われます。
これは心の殻を打ち破るという意味でしょう。

淡いブルーがこの映画の基調色になっているようです。
ダイアンがライオネルに訊ねます。
「今、一番いきたいところは?」
ライオネルは海だ、と答えます。
ダイアンとライオネルが海で遊ぶ場面はそのまま沖までいってしまうのではという危うさがあります。アーバスは晩年、写真をノアの方舟になぞった"ファミリーアルバム"を編集していたそうですが、この場面はノアの方舟のイメージなのでしょうか?

「この映画では、ほんの少ししかアーバスの伝記には触れていないの。あくまで"幻想のポートレート"であって伝記ではないからよ。この映画のテーマは自分の中にあるアートと創造力を発見するということなの」主演のニコール・キッドマンは語ります。Source
この映画のプロデューサーには、ダイアン・アーバスの伝記『炎のごとく―写真家ダイアン・アーバス 』の著者パトリシア ボズワースも名を連ねています。にもかかわらず、従来の伝記映画の枠を超え、事実を追うのではなくフィクションを交えながらあくまでその内面の軌跡を追うという試みは注目に値します。映画に採用された事実は、両親が高級デパートのオーナーであること、写真家である夫の助手兼スタイリストだったこと、そして、自らの勇気を試すために寝室の窓の外側に立ったりしたこと、等々。それらを基にしてスティーヴン・シャインバーグと脚本のエリン・クレシダ・ウィルソン はルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」をモチーフに、ダイアンが異形の写真家へとスイッチして行かざるを得なかった内面の変化を創造しました。多毛男ライオネルは、“フリークス(変わった人々)”と題された写真集からシャインバーグが見つけ出した実在の人物をモデルにしている、そうです。撮影は、「スパイダーマン3」や「マトリックス リローデッド 」などで知られるビル・ホープ。編集には日本の出口景子さんも携わっています。

青を基調にした映像、抑制のきいた音楽。あまりにも瞼を重くする要素に満ち溢れていて....。
はい、この映画寝ました(^^; 起きてはzzz、這い上がってはzzz....。
REM睡眠とnon-REM睡眠が短時間で交差するとっても苦しい2時間。
他人のアートの目覚めを見つめることは、こんなにも睡魔を誘発するものなのでしょうか?
エンディング・クレジットで流れていた音楽もなんとも心地よくまた寝そうになりました(笑)
物語よりも、各瞬間の1ショットごとにおもむきをおいたような作り。
アートへの心の疼きを強く感じた瞬間がある人であれば共感できる映画でしょう。
ただ、ダイアン・アーバスやその作品に精通している人でなければ、この映画からイマジネーションの翼を広げることはかなり厳しい。製作サイドの自己満足に終始している感があります。

ダイアン・アーバスは1959年に夫のアランと離婚、彼とともに築いた広告、ファッション写真のキャリアをリセットします。「Esquire」や「The New York Times Magazine」などに作品を発表。倒錯者、同性愛者、ヌーディスト、小人、巨人などを対象とした写真を撮り続けました。「フリークスたちは生まれたときから精神的外傷(トラウマ)を抱えている。大半の人が人生を重ねるにつれ経験していくトラウマをすでに乗り越えている。彼らは貴族だ」と発言しています。
1967年ニューヨーク近代美術館(MoMA)で開催されたNew Document Showに出品。アーバスは1960年代のサブ・カルチャーを代表する写真家となりました。
1971年7月26日、大量のバルビツール酸塩を服用した上で、手首を切って自殺。
アーバスは自分の自殺場面を写真に収めているという噂がかけめぐりましたが、警察の現場検証からはそのような写真は発見されなかったようです。自殺の翌年、ニューヨーク近代美術館は回顧展を開催。その後、アーバスは世界的に評価されるようになりました。
現在でも、世界有数の高値写真といわれる『Identical Twins, Roselle, New Jersey, 1967 』は特に有名ですね。スタンリー・キューブリックの『シャイニング』でもこの写真は取り上げられました。



芸術家を描いた映画なら、たとえどんな描き方をしたとしてもそのアーティストが遺した作品への関心を観客にかきたてるものであってほしい。その観点でみると、今回の『毛皮のエロス/ダイアン・アーバス 幻想のポートレイト』の野心的な試みは空ぶりに終わったといわざるをえません。ダイアン・アーバスの生涯であれば、従来の伝記映画の手法を用いても十分興味深い作品が作れたはず。

写真は静止画像であるがゆえ、イマジネーションを掻き立てられるもの。
その魅力を映画という"動く絵"の中で伝えられるのか?
写真と映画とは案外、相容れない表現手段なのかもしれませんね。
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2007.06.01 Friday | 03:25 | 映画 | comments(2) | trackbacks(12) |

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2019.09.05 Thursday | 03:25 | - | - | - |

コメント

こんにちは♪

TBコメントありがとうございます★
んー、寝ちゃう気持ちもわかる気もします、
わたしはこの不思議な世界とニコールの美しさに釘付けでした♪
ただ単に、伝記ものじゃなくてほんと良かったです、その人物に興味ないと楽しめないと思うので、、、(笑)
2007/06/01 2:21 PM by mig
migさん、こんばんわ!

この映画、音楽がとってもいいんですよね。
不思議な世界と合い重なって寝てくださいといわんばかりの作り。
もうね、この映画に瞼を開けられるヤツだけがアートを理解できる!
と言わんばかりで、観客への挑戦を感じました(爆)

>ただ単に、伝記ものじゃなくてほんと良かったです、その人物に興味ないと楽しめないと思うので、、、(笑)

あ、それは伝記ものの一番の問題点ですね。
ファンを満足させようとするばかりにマニアックに走るとそれ以外の人は途方にくれるという...。
どちらも満足させることができるような伝記映画を作るってかなり難しいんでしょうね。

ところでこの記事、スパムがやたら多いんです(大泣)
まあ、タイトルがアレだけに覚悟はしてましたが...。
第一、この映画全然エロくないし、毛皮というよりただの毛!
変なタイトルつけんな!!!
あ、こういうコメントがさらにスパムを増やすんですね(墓穴)
2007/06/01 6:21 PM by moviepad

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